第20話 息子、ゼウスヘパイトス


 ヘパイトスこと、山中 充は…CIAのスパイ…一応、である朝宮と話す事が多くなった。

 朝宮が、良く顔を見せるので、無下に追い出す事も出来ない。

 なにより女性であり、年下である彼女に、嫌な態度が出来ないのは山中にある男の性である。

 まあ、男だったら、凄く鋭く冷たいけどね。


 玄関にて、朝宮が適当な世間話をする。

「と、まあ…アメリカでは、日本が兵器を買わなくなって、軍産が焦る事態になっていますね」


 山中がお茶を出しながら

「どうしてだ? 日本に軍事兵器を売る程度なんて大したじゃあないだろう」


 朝宮は肩を竦めて

「以外と、良い収益だったんですよ。それに…米軍との軍需品のリサイクルを売る相手としても丁度良かったので…」


 山中は顎を擦りながら

「ああ…そういえば、アメリカの何処かの北部の砂漠には、ロートルの兵器が、リサイクルとして砂漠に並んでいる風景のGoogleサンがあったなぁ…」


 朝宮はお茶を貰い

「溶かして、作り直すより、部品として流用した方が安く済みますからね」


 山中がフッと笑み

「だが、ナノマシンエンジニアが多い日本では、ナノマシン加工機で作り直すか、材料として組み替える方が安くなってきたなぁ…」


 朝宮は肯き

「ええ…ですから。どうしても…日本にあるナノマシン加工機を世界に…広めて欲しいのです。本当に何でも再利用、再創造、今まで理論でしかなかった産物が、可能となるのです。言って貰えませんか?」

 

 山中は頭を掻き

「言ってもなぁ…難しいだろう。正直、ソラリスはアメリカといった先進諸国を信用していないからなぁ…」


 朝宮がじっと山中を見つめて

「どうすれば…信用を…」

 

 山中が渋い顔をして顎を触り

「もし、オレが言う事をしても百年くらいは掛かるぞ」


 ガクッと朝宮は項垂れ

「その間に、ソラリスとの差は開いてしまいますよ」


 山中は頭を傾げ

「仕方ないよ。ソラリスとそちらの考えとは、かなりの剥離があるからな…」


 朝宮は頭を上げ

「あの…もしかして…山中さんは…。ソラリスが提供するナノマシン加工機を…作れたり…」


 山中が僅かに視線を横にする。

「そうだな…どうだろう」


 朝宮はその反応で察した。出来る。ソラリスの技術融合体一号である山中(ヘパイトス)にはその力があると分かり

「あの…もし、提供していただけるなら…。それ相応の額を提示します」


 山中は引き攣った顔をして

「いや、作って提供してもソラリスが…」


 朝宮は押す。

「絶対にご迷惑は掛けません」


 山中は引き気味に

 いや、絶対に迷惑がかかるだろう。

 それが分かるので、うんと言えない。


 そこへインターフォンが鳴って

「あ、ごめん」

と、朝宮の手をほどき、玄関を開ける。


「やあ、どうも…」

と、東城が来た。


「ああ…アンタか…」

と、山中は玄関を開けて、そこに朝宮がいるのを東城が見て

「ん…君は…」


 東城が戸惑う様子に、山中は察して

「この子は、CIAのね。朝宮って子だ」

 要するに、自分が行った国々の夜戦の仲介者であるのは、政治関係者である東城は知っている筈だ。

 更に東城は戸惑いを

「え? 朝宮? え?」


 その反応は、名前を聞いて戸惑っている。

 普通なら、納得するような声を出すはずが…戸惑いを出した。


 朝宮は何かを察して

「一応、任務上、朝宮 葵と…」


 東城は「ああ…うん。そうか」と戸惑いつつ同意した。


 山中は、少し朝宮を疑いの眼で見る。

 本名じゃあないのは分かっている。何か、東城としては、引っかかる人物なのか?

 考えるも…。

 まあ、いいか

 こういう時に悩んでも意味はない。無駄な徒労に終わるだけだ。

 流して

「で、何の用?」


 東城が一枚の書類を出して

「君が所属を決める国々夜戦をやったろう。それを自衛隊でも挑戦したいと…」


 山中は書面を手にして読みながら

「ちょっと待て、それってソラリスが承知しているのか?」


 東城が眼を細めて

「していない。これは…君と我々との…契約で済ませたい」


 山中は渋い顔で

「却下だ。自衛隊はこの国の者だ。ソラリスが、絶対にそんな事をさせないぞ」


 東城が真剣な顔で

「だが…君との個人契約なら、その意思をソラリスは尊重する筈だ」


 山中は首を横に振り

「綱渡りすぎる。ダメだ」


 東城が

「では、何故、他国とはそういう事をした?」


 山中が渋い顔で

「ソラリスの管轄外だからだよ。第一に、諦めてもらう為にやったんだよ」


 東城が渋い顔で

「他国は、君の情報を世界に公開して、世界中で争奪戦を繰り広げようとした」


 山中が

「だが、なっていない。その理由は、ソラリスだろう」


 東城は俯き加減で

「ソラリスの情報システムにおけるパワーは凄まじい。この世界全てのネットワークシステムに、根を張っている。おそらく、全ての情報を握っていると言っても過言ではない。君の情報を公開した瞬間、全て削除された」


「ああ…」と山中は唸ってしまった。

 

 東城が鋭い目で

「それくらい、君は重要な存在という事だ」


 山中は頭を掻き

「とにかく、やるつもりはない」


 その後、東城と朝宮は、同時に時間であるとして帰り、玄関を閉める山中は背後を横見して

「何時まで隠れて見ているつもりだ?」

 山中が、朝宮と話して玄関の奥から、AOフィールドを解除したラグエルが出てくる。


 山中はラグエルを見つめて

「監視にしては、大胆じゃあないのか?」


 ラグエルは腕を組んで笑み

「ヘパイトスであるお前以外に、我らのAOフィールドを知覚出来る者がいなかった。十分、配慮はしているつもりだ」


 山中は腰に手を置き

「何のつもりで監視している? 朝宮が来る日に限って来るだろう」


 ラグエルは鋭い顔で

「あのCIAの朝宮 葵の本名は、ノア・ロックフェラーだ。それを言えば分かるだろう」


 山中が同じく鋭い顔で

「アメリカのロックフェラー財団の…」


 ラグエルは鋭い目で

「財団に罪はないが、それに付属している連中は、我々が最も警戒すべき者達だ。お金というシステムには罪がないが、お金は人間を残酷な獣に変える事がある。ハンマーで人殺しをしてもハンマーに罪は問われないと同じだ。どうしてもその性質上、もっとも残酷になれる者の傍にお金は集まる」


 山中が嫌そうな顔で

「あまり、つき合うなって事か?」


 ラグエルは冷たい眼で

「距離を持って接しよ…という事だ。それに、天帝にとってもCIAの女というのは…因縁があるからなぁ…」


「そうか…」と山中はラグエルの横を通り過ぎると

「天帝が、明日…来るようにと…」

 それを告げ終わると、ラグエルは再び自身をAOフィールドに包み、絶対客観領域の作用で物理存在との関連性が希薄になり、幽霊の如く飛び上がって天井をすり抜けて空へ、ソラリスへ戻って行った。


 山中は、去った後の廊下で

「あの夜戦の事か…。いや…他にも…」

 そう、何の予感がしていた。


 

 ◇◆◇◆◇◆◇



 ヘパイトスこと山中は、ソラリスに来ていた。

 もう、ソラリスへ行くのに、静岡県沖にある百キロの巨大要塞アンカーからの軌道エレベーターから来る事は無い。

 デウスマギウスになって、脚部から背面に掛けて結晶の多翼を伸ばし、空間を書き換えて飛翔するだけ。


 ソラリスは巨大だ。全長15万キロ、その幅500キロの巨大な釘の形状だ。

 全長だけで月から地球までの距離の半分に相当する。


 デウスマギウス、ヘパイトスになった山中は、亜光速で、ソラリスの表面を滑り飛び、最上部にあるソラリスの王座がある区画に到着する。


 山中が門というより、巨大な陥没穴になっているそこを降りると重力が働き、床に着地する。

 

 そこへ、トーマとレーナのアイオーン達が左右に分かれて道を作る。


 今までにない対応だ。

 山中は漆黒の人型デウスマギウスのまま、その道を歩み進む。

 今まで何度も王座には来た事がある。ナビゲーションもあるので迷わない。

 それでもアイオーン達は並び、山中を奥の王座へ導く花道を作っている。


 山中は、王座に間に到着する。

 足下も天井も天空の映像が映るドームの中心には、三メータ半の巨体をアイン・ゴーレムの王座に腰掛けるアレスジェネシスと、その目の前、左右に左に最も近いアークエンジェルのレーナであるミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルが、右にはトーマのアークエンジェルであるラグエル、レミエル、サラカエル、ネルフェシェルが対称に並ぶ。


 山中はヘパイトスのまま近づき

「今日は、何の用だ?」


 アレスジェネシスが三対ある両手を組み

「どうだ? お前は…動く事をしないのか?」


 ヘパイトスは眼を渋め

「どうでもいいだろう」


 アレスジェネシスはニヤリと笑み

「お前は、自分の今、あるその力の全てを知らない。まるで、自分の力を知らないマイナス思考の愚か者だ」


「はぁ?」とヘパイトスは苛立った顔をする。


 アレスジェネシスが王座から立ち上がり

「故に、お前の全力を分からせてやる!」

 アレスジェネシスが、一瞬で加速、強烈な一撃の巨拳をヘパイトスにぶつけた。


 それに、えええええええ!という顔をする女性型レーナのアークエンジェル達。

 男性型トーマのアークエンジェルは、どこか分かっていたような笑みをしている。


 ガブリエルが

「どういう事なの!」

と、最年長のレミエルを見る頃には、アレスジェネシスがヘパイトスを殴り連れて加速、装甲を突き破って宇宙へ飛び出した。

 空いてしまった穴を前にレミエルが

「いや、天帝も男だからね」


『はぁ!』と、レーナのアークエンジェル達は、意味が分からないという顔だ。

 まあ、これが男女差である。




 宇宙空間に出たアレスジェネシスとヘパイトス。

 アレスジェネシスが、各部位の固定具を外して、エネルギーを唸らせる。

 ヘパイトスはチョット切れた口を拭い同じように全力を出す。


 ヘパイトスは、人型のデウスマギウスだ。元の人型に漆黒の装甲が被さっているだけの異形ではない。

 だが、アレスジェネシスが放つエネルギーの本気度に、全力が必要だと判断、背面から、装甲が噴出する。

 幾つもの棘の装甲が噴出、それは巨大な肩部になり、その肩部に人が握り潰せる程の装甲腕が三つ伸び、脚部には、尖ったヒールのような装甲が伸びて足と組み合わさる。

 

 アレスジェネシスの巨体の形状は、どこか戦車のようである。近い形としてはガンダムのディープストライカーのようだ。


 ヘパイトスの全力の巨体形状は、輸送飛空艇のようだ。近い形としてガンダムのエクシアにGNアーマーを装備させたようだ。


 本気形態のヘパイトスを前に、アレスジェネシスはどこか暖かい慈愛を感じていた。

 それは、まるで、ここまで成長した息子を見るような感覚に近い。


 だから、息子であるヘパイトスに、全力でデウスマギウスの力を教える。


 アレスジェネシスは、胸部と背面から無数の光線を発射、それを全力デウスマギウスのヘパイトスが回避しながら、アレスジェネシスに攻撃する。

 その攻撃の応酬は、地球の空に広がる。

 

 巨大な爆発が、遙か下にある地上からでも確認出来る。


 アレスジェネシスとヘパイトスの攻撃の応酬は、飛翔しながら螺旋に動き、日本からアメリカ、ヨーロッパへ移動する。

 遙か高度で繰り広げられている攻撃の応酬に、地上の人々は困惑する。

 国々の政府関係者は、地上の観測所によって、アレスジェネシスとヘパイトスが戦っている様子が見えていた。


 最初は、仲違いしたと思ったが、戦っている二人の顔が笑っているのが分かった。


 アレスジェネシスは、別時空の己と戦いながら、微笑んでしまう。

 きっと、息子という存在がいたのなら…こんな気持ちになったのだろうなぁ…。

 今まで、一度だけ結婚はしたが…。血は繋がっていないが娘がいた。

 ちと、複雑な事情だが…。

 後は、甥っ子や姪っ子という弟や妹の子達や、援助していた孤児達。

 その全てに愛は確かにあったが…息子のような愛情は本当に始めてだった。


 それをヘパイトスは分かっている。

 別時空の先の未来の自分が、別時空である若い時の自分を、息子のように思うなんて…変な気分だが…。

 最も自分を理解してくれていると思うと嬉しかった。


 二人の攻撃が、地球の宇宙の空を照らす。

 無数の襲撃する光線、空間を曲げたエネルギー光線、超質量を発生させぶつけ合う。果ては、陽電子崩壊による粒子光線、空間相転移砲インドラをお互いにぶつけ合う。


 そうして、全力をもってお互いの、アレスジェネシス(父)がヘパイトス(息子)へ力の使い方を教える。


 最後の仕上げ。


 二人は、地球から遙か上に離れる。

 そして、背面に天の門を開く。

 アレスジェネシスは、背面に石版型のゾディファール・セフィールを召喚。

 ヘパイトスは、同じく背面に自身の十字架型のゾディファール・セフィールを召喚。

 お互いの持つ、ゾディファール・セフィールから、遙か上に門の線が昇る。

 そして、それが開き、お互いの超位存在、ドラクエルリオン(天照大神超龍神機)を出現させる。

 太陽級の超巨大な二対。


 アレスジェネシスは黄金の鎧に包まれる龍の鎧阿修羅武者菩薩。


 ヘパイトスは、白銀だ。背面に巨大な鎧龍を背負う両手を合わせる鎧武者の不動明王。その鎧龍が、七対の巨大な龍腕を伸ばす。現すなら、白銀の龍多腕を持つ鎧武者不動明王。



 アレスジェネシスとヘパイトスのドラクエルリオンが、その攻撃の拳を振り上げ衝突させた瞬間、空間が歪み爆発、そこから膨大な質量をエネルギーが噴出、それが宇宙を混じり合い、星系の誕生を起こした。

 太陽系の上で新たな星系の誕生が始まった。


 その爆発が終わった後、アレスジェネシスは満足し、ヘパイトスも動きを止めた。


 二人は、お互いのドラクエルリオンを戻し、地球へソラリスへ戻る。


 その間、会話はないけど、お互いに満足している気持ちだけは伝わる。


 二人が、ソラリスへ到着、最上部に着地した瞬間

「おかえりなさい…」

と、声を掛ける女性の声がした。


 ヘパイトスとアレスジェネシスは、同じく正面を見ると腕を組み、もの凄いお怒り顔のレーナのアイオーン達がいた。

『あ…』とアレスジェネシスとヘパイトスはお互いに顔を引き攣らせる。

 ガブリエルを先頭に怒っているレーナのアイオーン達が、アレスジェネシスとヘパイトスを囲み。

「ちょっとお話しをしましょうか…!」

と、ガブリエルの口調に怒りがある。


 アレスジェネシスとヘパイトスに二人は、ソラリスに戻ると、正座させられてレーナ達のお怒りのお言葉を浴びせられた。


「話し合いをするって! 言っていたでしょう!」


 そこから堰を切ったように、凄い言葉を浴びせるレーナのアイオーン達。

 それを他のトーマ、男性型のアイオーンが止めようとしても、殺気を向けられて怯み下がった。


 アレスジェネシスとヘパイトスは、説教を聞きながら『はい、はい、すいませんでした』と連呼した。


 むちゃくちゃ、女性型であるレーナのアイオーン達が怖かった。

 ここでも女に逆らえない状況は変わらない。




 ◇◆◇◆◇◆◇


 翌日、家に戻ったヘパイトスこと山中の前に、朝宮と東城が来た。

 昨日の事態の説明を聞きに来ると、朝宮が

「なんで、そんなバカ事をするんですか!」

 山中は、朝宮から説教を受けそうな事態になる。


「ま、待ちなさい」と東城が止めようとしても、朝宮がヒートアップして説教を始めた。


 それを正座して黙って聞いている山中は、内心で

 どうして、自分は黙って聞いているんだろう…。

 そう思いつつ、朝宮の感情の爆発が止まるまで待った。


 スッキリした朝宮は

「本当に止めてくださいね」

と、言って終わった。


 そして、朝宮が帰り、残る東城が

「まあ、要するに…力を付けた事に対する儀式だった訳か」


「はい」と山中は頷く。


 東城が

「まあ、元服みたいな事だったから…何か、変わった事は?」


 山中は笑み

「ヘパイトスっていう名称を、ゼウスヘパイトスにしましたさ」


 東城は笑み

「全能の雷霆神であり創造神か…」


 山中は含み笑みで肯き

「ええ…まあ、そんな所だ」


「分かった」と東城が告げ

「君のコードネームが、ゼウスヘパイトスになりそうだね」


「ですね」と山中ことゼウスヘパイトスは同意した。



 それから一週間後の事だった。

 ゼウスヘパイトスになっても何も変わった事はない。

 ただ、朝宮が足繁く通い説得するので、何となく…行ってみてもいいかなぁ…と思うようにはなった。

 でも、行動には出ない。

 そんな日、漫画雑誌を買いに、書店に行き、そばの百均ショップへ入り、出た瞬間、十歳前後くらいの小さな女の子が目の前に止まった。

 顔立ちは、中東系で、服装はこの辺りで有り触れた女の子の格好だ。

 その幼女が山中を見上げている。

「ん? どうしたんだい?」

 

 中東系の幼女が

「ナーシィフォン」


「ん?」

 山中は戸惑い聞いた事のない言語に戸惑う。

 発音の感じからして、アラビア語

「ちょっと待ってね」

と、端末を取り出して翻訳機能を作動させようとする。

 今の日本の端末は、眼鏡に掛けるスマートグラスタイプか、腕に装着する極薄の膜型スマホのどちらかだ。

 山中は、スマートグラスタイプを掛けようとしたが、あ…自分はデウスマギウスじゃんと思い出し、頭部の耳だけのデウスマギウスのシステムを装備しようと、幼女から目を離した瞬間、幼女が手を引っ張り、山中はそのまま膝を付いた瞬間、何か細いモノを袖から出して首筋に当てた。

「え?」

と、山中が思った瞬間、バチンとスタンガンの電流が走り

 

 ええええええ!

と、山中は思いつつ気絶する寸前、幼女の袖にあったのは小型のスタンガンだと分かった。

 そして幼女が

「انا اسف عم」

 耳にあったデウスマギウスが翻訳する。

”ごめんなさい。おじさん”

 そのまま山中は気絶した。


 そして、そこへ、幼女と同じ中東系の乙女と、中国系の女性が来て、山中を二人して担ぎ上げて何処かへ運んでいった。


 山中ことゼウスヘパイトスは、拉致された。


 それを、AOフィールドに身を包み隠れて見ているネルフェシェルがいた。

 そして、ネルフェシェルがコメカミを押さえて

「天帝、例の彼女達が…接触しました」


『そうか…分かった』

と、ネルフェシェルの通信にアレスジェネシスの返事が来た。


 ゼウスヘパイトスの山中は、そのまま中国系の女性が運転するワゴン車に乗せられ、港へ向かう。

 その間、中東系の乙女と幼女が

「イリディア姉さん」

と、姉の名前を告げる。

 姉の乙女が妹の幼女を抱いて

「大丈夫よ。ライラ」


 運転する中国系の女性が

「大丈夫よ。イリディア、ライラ。必ず協力してくれるから」


 インディアが

「ありがとう、玲蘭」


 中国系の女性、多分、中央部に多い系統の彼女、王 玲蘭は微笑み

「いいのよ」

と、告げた。



 彼女達が移動する車を、AOフィールドに包み隠れるラグエル達、トーマのアイオーンが飛翔して追跡していた。


 そして、車は一隻のアラビア系統の貨物船に入り、そのまま何処かへ出港した。

 ゼウスヘパイトスを乗せて…。

 ゼウスヘパイトス…山中 充にとんでもない事が舞い込んだ。

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