第16話 天暴


 ソラリスの王座では、アレスジェネシスの前に、アークエンジェル七名と、ネルフェシェル、各部門を支えるアイオーンのドミニオンズ達を前に話し合いが行われる。

 進行は、レミエルが行う。

「では、今後の我々の活動について話し合いを行いましょう」

 ミカエルが挙手して

「現時点で、我々の活動は、半分も完了しています」

 補佐するようにガブリエルが

「日本での統治はおおむね良好で、数年後には、我々のナノマシンエンジニアが、生産人口の四割を占めるのは確実です」

 ラファエルが

「今後、予測される不安要素は、北朝鮮の拉致問題でしょう。北朝鮮には、数十年前に拉致された国民がいます」

 ウリエルが

「アタシ達が~広げた~。ネットワークデバイスによって~北朝鮮の~状況は~大体~掴めています~~」

 ミカエルが

「これが北朝鮮の現状です」


 全員の眼前に立体映像の資料が出る。


 アレスジェネシスは右腕の一つで顎を擦り

「ほう…人口は約1500万程度か…」

 サラカエルが

「南の隣国、韓国と比べるとその人口は半分以下です」

 ラグエルが別のデータの立体映像を見せて

「もし、韓国と北朝鮮が戦争になった場合の、戦局状況予測です」

 アレスジェネシスは眉間を寄せる。

「まさか…僅かに北朝鮮に押されて拮抗するとは…」

 ラグエルが

「80%の確率で、韓国は北朝鮮を取る事は不可能です。まずは、韓国の軍隊練度が低いのがあります」

 ラファエルが

「男児に、二十歳の頃になる徴兵制度があるのに?」

 ラグエルは腕を組み渋い顔で

「徴兵制度なんて、20世紀前の時代遅れなシステムです。ただ、武器をもって突撃する中世や、日本の戦国時代から変わらない戦争のやり方なら、頭数を招集できる徴兵制度は役立ちますが…。戦車や、弾頭、地雷、航空機、戦闘機が飛び交う現代の技術を用いた戦争では、より強力な戦術兵器を持った方が勝ちます。だから、北朝鮮は核兵器の開発を急いだ」

 サラカエルが

「だが…我々が来た事で、核弾頭は何の役にも立たなくなった。たかが…超音速程度で飛行する物体なぞ、鈍間な亀に等しい」

 ミカエルが

「まあ確かに、光速の99%もの速度が出せるアイオーン達や、アインゴーレム、ギガンティスでは…簡単に捉えて破壊出来ますからね」

 アレスジェネシスが

「今、北朝鮮は、何をしている?」

 ネルフェシェルが

「現在、アメリカの規制によって動かせない資金を何とか動かそうと、様々な手段を行っていますね」

 アレスジェネシスは渋い顔をして

「その資金を動かそうとする動きは……達成できないだろうなぁ…」

 ネルフェシェルがフッと笑み

「ええ…ムリです。世界中のネットワークシステムと繋がっていないので、完全にね」

 アレスジェネシスは、皮肉な顔で

「じゃあ、スパイ活動で…」

 ネルフェシェルが同じ皮肉な顔で

「そんなにスパイ活動が上手いなら、そんな事をしようとは思いませんよ」

「だな」とアレスジェネシスは納得する。


 レミエルが

「では、残り半分である事案は…」


 ミカエルが腕を組み

「ヘパイトスが動きてくれるのを前提にありますので…」


 全員が黙る。その肝心のヘパイトスこと、この時代のアレスジェネシス、山中 充は沈黙を保ったままだ。


 ネルフェシェルが

「その、もう実力的には、メタトロンや、アーベル型ナノマシンの原子サイズナノマシン加工機を作れる程の実力を持っていますが…」


 アレスジェネシスが

「己の心に訴えかける動機が無い限り、動く事はない」


 ガブリエルが

「なら、説得しましょう」


 レミエルが

「説得できるのか? 年齢は違えど、天帝と同じだぞ」


 ガブリエルが

「だからこそです。天帝だって話し合えば通じます」


 全員が王座に座る天帝、アレスジェネシスを見る。

 アレスジェネシスは渋い顔をして

「その…そんなに見つめられても困る」


 ネルフェシェルが呆れ顔で腕組み

「色々と教えた仲だから、言えるが…ヘパイトスは、天帝と同じ、頭が相当に切れるタイプだ。そんなタイプが、我々の煽りを受けても重い腰を動かすとは思えない」


 サラカエルが

「神輿に担ぎ上げて、簡単に担がれてくれるなら、ここまで困ってはいない」


 ラグエルが

「正直、担がれた神輿を気に入らないとして、破壊するかもしれんぞ」


 ラファエルが天帝を見て

「確かに…天帝には、その前科がありますから…」


 アレスジェネシスは痛いところを突かれて「う…」と唸る。


 ガブリエルが

「やっぱり説得しかないでしょう」


 ラグエルが

「どうやって説得する? 世界を救って欲しいから、天帝と同じ事をしてくれって? 余計に拒否されるような気がするぞ…」


 天帝は腕の一つ組んで考える。

 昔の自分だ。何を基準に考えていたのだろうか…? いや、大して今の自分と変わってはいないはずだ。そういう部分は…。

 理不尽に命が奪われる事に対する怒りが最も強い。

 とくに、女性や幼子が無残に殺され死んでいくのが最も許せない。


 そうか…そうするしか…ないか…。


「みんな、聞いてくれ」

 アレスジェネシスはとある事を告げる。


 全員がそれを聞いて驚きを向ける。

 サラカエルが

「確かに、それを理由に動ける事は出来ますが…。よろしいのですか? ソラリスの印象が…」

 ミカエルは挙手して

「反対です。無闇に力を振るうのは混乱を招きます」

 ガブリエルも肯き

「私も反対です。ソラリスと今の日本地区の事を優先するだけで良いはずです」

 ラファエルも同意の肯きをして

「わたくしも反対です。ただでさえ、中国の事で周囲が敏感になっています。これでは…ソラリスの立場が危うくなる」

 ウリエルも挙手して

「ウリエルも~反対~。無益な殺生は~ダメで~す」

 他のレーナ(女性型)のアイオーン達も反対する。


 だが、ラグエルが

「オレは賛成だ。後々の問題を片付けられる」

 ネルフェシェルが

「自分も賛成だ。ラグエルと同じく、これは後々に問題となる。なら…早めに芽を取った方がいい」

「はぁ?」とミカエルが怒りの顔を向ける。

 ラグエルが引いて

「そんな顔をしたって意見は変えないぞ」

 他のドミニオンズのトーム(男性型)アイオーンが

「わたくしは、その問題を抱えている親に接触しました。どうか、力を貸して欲しいと…頼まれましたので…」

 ガブリエルが

「じゃあ、ソラリスに大量虐殺をした汚名を被せよと!」

「いえ…それは…」

と、言葉にしたトームのアイオーンは引く。

 ネルフェシェルが

「だったら、軍人の男性だけに限定すればいいだろう。特に指揮系統の、少尉から上なら数千人程度で済むはずだ」

 ガブリエルが怒り気味に

「それでも数千人ですよ! 命をなんだと思っているんですか!」

 ネルフェシェルが

「生体的な価値なら、男より女の方が価値が高いだろう」

 ガブリエルはその場で荒く足を踏み締め

「そういう事ではないの! 命の価値は、男女共に平等なのよ!」

 ネルフェシェルが

「殺し合いをする軍属にいるんだから、何時でも殺される覚悟はあるだろう。それに殺し合いをする組織に属する以上、命の価値は下がる。そうしないと、戦争なんて出来ない。殺し合いなんて出来ないからなぁ…。それは、自分達が来た時空の世界だって同じだった筈だ」

 ラファエルは

「貴方達、トームは、最終戦争の時に女性以外の戦いを挑んできた男性達を殺していたからそうでしょうが…。私達。レーナは命を奪わないように戦いました」

 ネルフェシェルが苛立った顔で

「はぁ! 自分の事は棚に上げてそういう話を持ち出すのかよ!」

 ラファエルが

「棚になんて上げてません!」

 ネルフェシェルとラファエルが険悪になりそうになると、サラカエルが入り

「ちょっと、ラファエル…」

「黙ってくださいサラカエル」

と、ラファエルはネルフェシェルに近付き、声を荒げる。

「そもそも、貴方は!」とたくし上げるように言葉にするラファエル。

 面倒クサそうにネルフェシェルは顔を背けて黙っている。

 これ以上、何か言うとウルサいから、黙って怒りが収まるのを待つ。

 そうなれば、ラファエルはスッキリして落ち着く、どういう訳かこれがレーナの特徴だ。

 感情のままに言われたトームであるネルフェシェルには苛立ちが残る。


 アレスジェネシスはそれを見て微妙な顔をする。

 人類とは違うも、男女という性差があると、どうしてもこうなる。

 知性体で、男女がある事に対しての、産物なのだろうなぁ…。


 男性同士で、感情をぶつけ合えば、絶交状態になるが。

 どういう訳か、女性同士は感情をぶつけ合うと、上手く行く事がある。

 社会的な事や仕事に関しては男女差はない。だが、男女という生体的な事になると、どうしても男女差は際立つ。

 そこが何とも言えないほど、ややこしいのは世の常なのだろう。

 今、目の前で、レーナの感情噴火に耐えているトームは、正にその縮図だ。


 感情が収まったラファエルが

「では、別の案を考えましょう」

 あっという間に冷静に戻り、さっきの事がウソのようだ。


 ネルフェシェルは、この…と怒りで額に青筋が浮かぶ。

 傍にいるラグエルとサラカエルに、他のトームのアイオーン達が渋い顔をする。

 サラカエルが

「ネルフェシェル、後で聞いてやるから…」

 フン!とネルフェシェルは鼻息を荒げる。


 ミカエルが

「天帝、新たな代案を考えましょう」


 アレスジェネシスは

「ミカエル、ラファエル、他の者達よ。これは、我々が国連に入る為のお膳立てでもあるし、後々の優位性を保つ理由にもなる。そして、アメリカに対する対価でもある。自衛隊の中には、在日米軍と手を切る必要は無かったと考えている者達もいる」

 サラカエルが額を掻きながら

「日本は、商業的には諸外国と繋がっている。だが…政治や軍事、諜報としては繋がりがない。それを欲している者達もいます。この計画はその理由にもなる」

 レミエルが

「今の所、諸外国に我々は、日本の維持だけを考えているだけになっている。だが、ここで何らかの理由さえあれば、諸外国に介入するという事を示せば、交渉にも使える」

 ラグエルが

「所詮は外の国々は男の世界だ。力を示さないと舐めてかかる。中国のようにな」

 ガブリエルが

「たった片手だけの数の国を示されても何の理由にもなりません」

 アレスジェネシスは王座から立ち上がり

「分かった。アイオーンであるお前達は、何もするな。私はネオデウス(神機)を使って私一人で行う。全ての責任は私一人で背負う。それでいいな」

 ラグエルが

「オレも付いていきます」

 ネルフェシェルも

「自分も同じです」

 サラカエル、レミエルも「私も」「わたくしも」と同行を願い出ると、他のトームのドミニオンズ達がその周囲に集まる。

 アレスジェネシスの作戦に加わるつもりなのだ。


 それを見たミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルに他のレーナのドミニオンズ達は苦しい顔だった。

 ガブリエルが

「私達は手伝いません。ですが…事後処理だけは、やります…」

 アレスジェネシスは微笑み

「すまんな。娘達よ…」




 ◇◆◇◆◇◆◇


 北朝鮮が、夜の闇に紛れて日本へ秘密裏に上陸を開始する。それは潜水艦で行われる。

 場所は日本海側、新潟湾の外れだ。

 だが、これをアレスジェネシス達ソラリスは察知していた。

 そして、ワザと自衛隊に連絡していない。

 北朝鮮の旧式の潜水艦が、人里いない海岸を前にして、ゴムボートに数名の工作員を乗せて、日本上陸しようと進む。

 明かりも灯さない工作員のゴムボートが、海岸に到着。上陸をした瞬間、潜水艦に撤退の合図である発煙筒を向けた。

 潜水艦が引き上げようとした瞬間、その上にトームのアイオーン達が降臨、潜水艦の上空に佇み、空間波動砲で、潜水艦のスクリューと操舵を破壊、空間波動砲を応用した無重力フィールドで潜水艦を包み込み、海から上げる。

 

 それを見た工作員は急いで、逃れようとしたが、周囲をAOフィールドに包んで隠れていたアインゴーレムに囲まれた。

 そして、その前にはネルフェシェルがいて、フィールド型ナノマシンを散布、北朝鮮の工作員達を囚人の時のように、脳内操作ナノマシンで拘束した。

 工作員達は、呆然として案山子のようだ。

 脳内の活動を低下させられたので、思考が回らないのだ。


 ネルフェシェルが通信する。

「こちら、予定通りに…」


『よろしい…』とアレスジェネシスが答える。


 次の日の緊急政府発表が、ネットとテレビを走る。

 無断で上陸しようとした北朝鮮の工作員と潜水艦を確保、それを警察庁公安と内閣情報調査室へ引き渡したと…。


 国会は大荒れだった。

 急いで桜井総理は、阿部内閣情報調査室の大臣に問う。

「どういう事ですか?」

 阿部大臣は、厳しい顔をして

「報告の通りです」

「ソラリスは何と…」

「行動を開始する…と」

 桜井総理と、阿部大臣は驚愕の顔を顕わにした。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 宇宙にあるソラリスの格納庫に収まっているネオデウスが起動する。起動したのは一機だけ。

 白銀の巨大な機械体は、城のようだ。その背には幾つも結晶の翼を広げ、顔は人のような意匠がある。

 動く白銀の巨神人城であるネオデウスは、アンカーを外され、ソラリスから出発する。

 その目の前には、アレスジェネシスがいる。


 アレスジェネシスは、ネオデウスを連れて北朝鮮に降下しつつ

「サラカエル。拉致被害者の輸送具合は?」


『問題ありません。順調です』


「そうか、レミエル。アメリカには?」


『報告を終えています。直ぐにでも韓国に待機している艦隊を向けるそうです』


「そうか…では、まずは…ロシアと中国を押さえようか」

と、アレスジェネシスが右手の一つをあげた次に、巨大な城のネオデウスの肩と腕部に背面が開き、光線の水晶群が出現する。

「威嚇フェイズ、開始」


 ネオデウスの開口した光線の水晶群から無数の光が噴出する。

 その光達が、ロシアと中国の全域を包む程の閃光の天蓋を作り出す。

 巨大な閃光の天蓋を潜って、アレスジェネシスはネオデウスと共に北朝鮮に来た。


 北朝鮮では、トームのアイオーン達が、サラカエルと共に行動していた。

 それは、北朝鮮にいる拉致被害者を確保する為だ。

 中国を経由して広めたネットワークデバイスが、北朝鮮の全域に広がっている。

 そのデータ収拾のお陰で、拉致被害者に所在が判明していた。


 隠語や、その他の暗号でやり取りしていたが…無意味である。


 そして、拉致被害者達にも、そのデバイスが渡っていたのだから…。

 彼らが検索している事で、大凡の事が分かっていた。

 更にネルフェシェルが、中国や北朝鮮に極秘に渡っていたのを功を奏してもいた。



 アレスジェネシスは、背後にいる200メートルのネオデウスに命令を送る。

「この国の全ての兵器を破壊せよ」

 ネオデウスは唸る。そして、背面と胸部、多翼を広げ、そこから光の槍群を発射する。

 光速で、コンマの誤差で、北朝鮮にある全ての兵器を破壊する。

 移動兵器、航空機、戦艦、弾薬庫、その全てが爆発する。


 北朝鮮の所々で、爆炎が昇る。

 

 アレスジェネシスとネオデウスの上より、ソラリスの宇宙戦艦達が降臨、サラカエル達が確保した拉致被害者達を回収する。その数、家族を合わせて500名程だ。


 ラグエルは、ネルフェシェルと合流、北朝鮮を飛翔しながら、他のオームのドミニオンズ達と合流。そして、データとして収集した軍人で、少尉以上の男達を飛翔しながら空間波動砲で攻撃する。

 アイオーン達が通過した場所では、空間波動砲で内臓を破壊された指揮系統の軍属達が死んでいった。


 北朝鮮の上空、都市部や軍事基地の上を飛翔していくアイオーン達。

 その下では、指揮官達が死んでいく。

 通信不能、指揮系統の喪失、北朝鮮は全くの対処不能に陥る。


 そして、アレスジェネシスはネオデウスと共に、北朝鮮の支配者がいる建物の上に来ると、アレスジェネシスは急降下、天井を突き破って、支配者、最高指導者がいる部屋に突入する。

 最高指導者である三十代の男の前に突如、現れたアレスジェネシスに、最高指導者の男は混乱する。

 アレスジェネシスが翻訳機を通して喋る。

「なぜ、私が来たか…理由は分かっている筈だ」

「知らん」

と、最高指導者の男は告げた瞬間、アレスジェネシスは左腕の一つで、男と掴み上げ床に叩き付けた。

「贅肉がある体で助かったなぁ…」

 叩き付けられた衝撃で、男は悶えていると、再びアレスジェネシスは左手の一つで男を掴む。片足だけを握って。

 巨大な手は、十分に男を掴めるが、ワザと吊し上げるようにする。

「あ、ああ、あ…」

 嘔吐いている最高指導者の男。


 そこへ、兵士達が銃を構えてアレスジェネシスを狙うも、アレスジェネシスは冷徹に右腕の中で最も大きな腕で、兵士達を薙ぎ払う。兵士達は吹き飛ばされ壁に叩き付けられ、爆ぜた。

「フン」とアレスジェネシスは鼻息を荒げる。


 吊された最高指導者の男が

「何が目的だ…」

 アレスジェネシスは仮面の奥にある冷徹な三ツ目で

「今すぐ拉致被害者を全員、返せ。それで今回のキサマ等の無断での事は、流してやる」

「ふざけ」

と、言う前にアレスジェネシスは再び床に叩き付けた。

 最高指導者の男は意識を失った。


「くだらん、この程度か…」

と、アレスジェネシスは嘲笑う。

 そして、通信でレミエルが

『天帝、アメリカ軍が到着しました』

「そうか…では、この男を渡して、後はアメリカに任せるか…」


 再び、ドアに誰かが来た。

 それは女性と、三人の子供達だった。

 赤子を抱える女性、8才と5才の女の子達。

 アレスジェネシスは「チィ」と舌打ちする。

 この今、握り上げている男の子供達と妻だ。


 アレスジェネシスに釣り上げられている父親を見て、八才の女の子が

「お父さんを離して」

と、アレスジェネシスに近付こうとすると、母親が止めさせる。

 母親は、子供達を守ろうと必死だ。


 そこへ、ミカエルとガブリエルが降り立ち母親達の前に来て

「大丈夫です。貴女達は私達が保護します」

と、ガブリエルが呼び掛ける。

 ミカエルが

「よろしいですよね。天帝…」


 アレスジェネシスは背を向けて

「お前達の好きにするといい」

と、告げて飛翔した。


 向かう先は、北朝鮮の港に着いたアメリカの空母と駆逐艦達の艦隊だ。


 その後、アレスジェネシスは、北朝鮮の支配者だった男を、アメリカに渡し、アメリカの上陸に応戦しようとした北朝鮮の軍を、ネオデウスの光の攻撃で叩き潰した。


 ロシアと中国は、アレスジェネシスが命じたネオデウスの威嚇の攻撃と、今回の事に口を出すなと、伝えてたので、何も出来なかった。

 ロシアは中国の二の舞を恐れ、中国はアレスジェネシス達に破壊された兵力が回復出来ていなかった。


 僅か一日にして、北朝鮮という国は消えた。


 拉致被害者は日本に戻り、北朝鮮に国連の多国籍部隊が入り込んだ。

 北朝鮮の抵抗は…小さかった。国力が酷く損耗していた事、支配者の統治の失敗で国民の気持ちは、始めから離れていた。

 故に、軍部という暴力によって何とか保っていたが…。

 それを上回るソラリスの暴力によって終わった。


 最高指導者だった男の妻と子供達は、密かにソラリスに匿われた。レーナのアイオーン達に守られ、それをトームのアイオーン達も黙認した。



 それから三日後、天皇が天帝アレスジェネシスと面会して

「どういう事ですか? アレスジェネシス氏よ」

 アレスジェネシスは、三メータ半の巨体から天皇を見下ろし

「どうもこうもない。侵略行為に対して対抗したまでだ」

「国を滅ぼす事が必要だったのですか?」

「どうせ、先がない国だ。それで…」

「貴方はもっと理性的な方だと思っていました」

「理性だとも、人の性を十分に理解しての行動だ。現実を見ろ、所詮、我々、男は獣だ。獣性と理性を併せ持つのが男だ」

「他に方法が…」

「無かった。これは私の責任で行った。それだけだ」

「数千人が死亡したと…」

「全員、軍に属し、指令系統のトップ達だ。弱い貴殿達と違って選んで始末した」

 アレスジェネシスは仮面の奥にある三ツ目を鋭くさせ

「天皇陛下、私は…聖人ではない。邪悪と善を持つ一個人だ」

 その威圧に押されて天皇は黙ってしまった。

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