第14話 女性与党


 ソラリス日本地区の国民議会の選挙が始まった。

 この選挙にはとある制約がある。

 まず、投票率が60%を超える事。

 議員定数は600名で、候補者は700名以上。

 政党比例選挙は無し。投票の獲得数が多い人物が当選。


 47都道府県で同時に始まった選挙は、一斉に開票される。

 事前投票もこの日に開票。ニュースが出口調査をすると、何とか…投票率は60%を超えそうだ。


 国民の中には、このままソラリスの統治の方が上手く行くと思っている者達が多い。故に、投票に行くのを止めて、投票率が60%以下ならソラリスの統治続行で、良し…と。

 まあ、それ程、日本の政治家が劣っていたという証拠であり、自業自得でもある。


 街頭では、必死に候補者が呼び掛けても、誰も集まらない現状に、候補者は絶望さえ感じていた。

 まさに、政治が前時代で劣っているという証明であるように、国民は無関心で、ソラリスを望んでいた。

 今までなら、企業のトップや、財団のトップ達の援助があって、何となったが…。

 ソラリスはそれを禁止にした。

 一部の権力を握る者達によって、国政を運営させるのは、民主主義ではない…と。

 一応、選挙費用は、ソラリスが持ってくれる。

 日本の民主主義は、大きな組織によって影響されていた。

 それが、全く通用しない。

 だが、冷静に考えれば、それが普通だ。

 そこの力がある組織が全てを握るではない。

 その地に生きる人々の選択によってその地を運営する。

 今までの水戸黄門の印籠のような状態が異常だった。


 では…ソラリスも同じだろ…と、巨大な力を持つ組織で、全てが天帝のトップダウンで決まると、批判が起こるも…。

 ソラリスが構築したダウンアップの政府システム、国民の不満を解消するというシステムが、その批判を小さくした。

 ソラリスのやり方は基本的なルール、憲法から法へ、条例にてと、ルールを持って公平に行い。その公平に不都合が生じると、新たな公平のルールを構築、付け加える。

 多くの日本人は、常識を破れ、と常識を破らないと常識が変わらないと思っているが。

 そうではない。前の常識があるから、新たな常識が出来る。

 前の常識に新たな常識を合わせて共存、そして…前の常識が意味を成さないと、形骸化して消える。

 考えれば、それが常識、世の常の知識なのだ。

 ソラリスの方が余程、政治家より日本の事を、日本に生きる人々の気質を理解していた。


 だから、このまま国民議会が成されずに終わると思われたが…。

 

 天帝アレスジェネシスが、日本の通信に呼び掛けた。

「我々、ソラリスとて完璧でない。故に、国民の中から代表者を出して、協議する事で良き未来を築いて行きたい」

 そのニュースが日本中に広まり、ソラリスの総代がそれを望んでいるというなら…と日本国民は、投票に行ってくれた。


 確実に、日本はソラリスと融合を始めている。


 その投票率を、事務所のテレビで見つめる阿部元総理と、その秘書に支援者達。

 その人数は…十数名とか細い。

 ソラリスが来る前だったら多くの人々がごった返し、百人は優に超えていた筈。

 だが…今は…全くの少数だ。


 無論、阿部元総理も立候補している。

 政党比例繰り上げ当選がない、この選挙では、獲得票によって当選が決まる。

 


 その場に東城もいた。

 事務所のテレビで開票の結果を見つめる。

 都道府県別に開票され、そして…当選の発表が行われ、結果は…何とか、阿部元総理は当選した。

 安堵して、喜ぶ事務所の者達。

 東城の隣には、同僚の赤田がいて

「良かったな、東城」

と、喜んでいるが、東城は渋い顔をしている。

 阿部元総理が

「東城くん。何とか難局を乗り切ったね」

 東城は頭を振り

「阿部先生…まだ、困難は始まったばかりです…」

 阿部元総理は微笑み

「勝って兜の緒を締めよ、だね」

 東城は首を横に振り

「いいえ、当選した男女の議席を見てください」

 阿部元総理は、ニュースに流れる当選の数を見て

「これは…」

と、驚きを向ける。

 東城は鋭い目で

「日本は、嘗て無い新たな政治をしなければならない事態になりました」



 ◇◆◇◆◇◆◇


 アレスジェネシスは、ソラリスの王座にて、当選者達を見て笑む。

 アレスジェネシスの両脇、右にはレーナ(女性型アイオーン)のミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルがいる。

 左には、トーム(男性型アイオーン)のラグエル、サラカエル、レミエルがいる。

 ラファエルが腕を組み

「天帝の言った通りになりましたね」

 アレスジェネシスは肯き

「そうだな…」

 

 選挙の結果は、男性議員が280名、女性議員が320名。

 そう、立候補した女性議員全員が当選した。

 つまり、日本の歴史始まって以来の、女性の団体が政治を握った瞬間だった。


 ガブリエルが

「上手く行くでしょうか…」

 少し不安げだ。

 ラグエルが首を傾げ

「どうしてだ? 何が問題なんだ?」

 ガブリエルが

「この日本では、今まで女性が政治を握って良かった歴史がなかった筈…」

 レミエルが

「たった、二つの事例、北条政子と、日野富子だろう」

 ガブリエルが

「他にも多数あるわよ」

 サラカエルが

「どこが? 全ての歴史に置いて、冷静に分析すればおかしい部分がある」

 アレスジェネシスが

「歴史とは、常に勝者が書き換えてきた。だが、所詮は無意味…。書き換えをしなければ己の手腕悪さが出て足下が崩壊する。それは、自業自得、分不相応なのだ」

 ガブリエルが

「では…天帝の手腕が逆回りして、終焉にしなければならない場合は…?」

 ガブリエルの不安が混じった問いに

「その時は、潔く身を引こう。賢者こそ、引き際を見誤らない」

 自信をもってアレスジェネシスは告げた。

 ガブリエルは「はぁ…」と溜息を漏らして小声で

「その諦めの良さが、後で災いを起こしていたのですけどね…」

 その小声は、勿論、アレスジェネシスの耳に入っている。

 他のアークエンジェル(大天使)達も聞こえている。

 それにアレスジェネシスも含めて皆、苦笑いをする。

「んん!」とサラカエルが咳払いして

「では…明日、女性与党が誕生したので挨拶に参りましょう。天帝」

 アレスジェネシスは肯き

「無論だ」



 翌日、日本で世界初の女性だけの与党が誕生した。

 早速、元国会議事堂は、新たな国民議会の議事堂になるで、そこで顔合わせとなったが…実は、アレスジェネシスの三メータ半の巨体では、奥まで入れない。

 事実、国会議事堂に来た時には、アレスジェネシスの巨体が入れるようにするに、入口を破壊した。

 破壊して何とか入った後、ネルフェシェルが、フィールドナノマシンによって、天帝が出入り出来る自動大扉に改造してくれた。

 だが、しかし…国会議事堂のドアは全て標準人サイズだ。

 その2.2倍もあるアレスジェネシスには小さすぎる。よって、入れる大きな入口にての接見である。


 アレスジェネシスの両脇にアークエンジェル達七人が並び、その前に日本、いや…世界初の女性与党の党首が挨拶する。

 五十代の女性、桜井 恵津子だ。桜井の周囲には同じく当選した女性議員が多数いる。

「どうも、初めまして」

と、桜井はお辞儀するとアレスジェネシスも頭を下げ

「こちらこそ。今日は、良い日だ。初の女性与党が誕生した」

 桜井は微笑み

「お互いに手を取り合って、この国を良くして行きましょう」

 アレスジェネシスは三対ある大きな機械の右腕の一つを伸ばし

「今まで、この国では男性の権威がおかしい程に強かった。人間として社会として、男女は平等であり、生態的な男女の差は僅かなのに、それを全てと拡大解釈して、男女の関係が歪んできた。太古の遺物のような方法が全てと勘違いして、時計の針が前に進んでいるのを見ていない、クズのようなクソ野郎が政権を握っていた」

 ミカエルが、アレスジェネシスの右隣に来て、コンとアレスジェネシスのスラスターの右足を殴り

「天帝、後半は言い過ぎです」

 アレスジェネシスは背をビクビクさせ

「す、すまん。調子に乗りすぎた」

 女性議員達は、従えているアイオーンに注意されるアレスジェネシスを見て、ちょっと驚いていた。強権的な独裁者だと思っていたから。

 レミエルが腕を組み

「天帝、チャンとしっかりした事を言ってくださいね。ラグエルみたいにシニカルな言葉は要りませんから」

「は、はい…」

と、天帝は素直に頷いた。

 桜井が微笑みながら

「独裁者だと思っていましたが…」

 アレスジェネシスは巨体の肩を竦め

「皆、良い子達なので、しっかりないと怒られますから…」

と、言いつつ、桜井とアレスジェネシスは握手した。



 アレスジェネシス一行は、女性与党の自由民主党…自民党の桜井達との挨拶を終えて、国会議事堂から出ると、そこには…自民党の男性達を取り纏める阿部元総理達がいた。

 彼らは当選したが…その数は…50名と僅かである。

 一応は、自民党という名前は残ったが…250名の中でその数は…五分の一だ。


 阿部議員が一団から出て、アレスジェネシスの前に

「これも…アナタの望み通りですか」

 アレスジェネシスは、仮面の奥にある目を非対称に曲げて

「いや、別に何も望んでいない。その現実がその通りなら、その通りで合わせるだけだ」

 アレスジェネシスの右後ろにいるラファエルが

「我々、ソラリスの予測では、男性が多数を占める筈でしたが…」

 ラグエルがシニカルな顔で

「お前達が無能だった。それだけだ」

 ガブリエルが

「ラグエル!」

と、怒った口調で注意する。

 ラグエルは、顔を横にそむけて「フン」と鼻で笑った。


 阿部議員とその一団、男性議員は渋い顔をする。


 レミエルが

「まあ…とにかく、こうなったのは国民の意思、それを肝に銘じてやって行きましょう。お互いにね…」

と、仲裁のように告げる。

 男性議員の一団にいた東城が前に出て

「アレスジェネシス氏。貴方の目的はなんだ?」

 アレスジェネシスは、高い身長から東城を見下ろし、笑みに目を細め

「なんだと思う?」

 それはまるで試す様だ。

 東城は厳しい顔をして

「もう、この日本は貴方の国だ。お互いに腹を割って話し合いましょう。貴方の目的が征服ではないと分かっている。なら」

「バカか!」とラグエルが「腹を割って話さないのは、お前達が無能だから、意味がないと思っているんだよ」

 シニカルというか嘲笑うようなラグエルの言葉に、ミカエルとガブリエルは額を抱え

「ちょっと、ラグエル」

と、ガブリエルとミカエルが、ラグエルの両腕を抱き掴んで

「来なさい」

と、ミカエルが、ガブリエルと共にラグエルを飛翔して持っていく。行き先はソラリスである。つまり…二人してのお説教だ。

 ラグエルとミカエルにガブリエルがいなくなった後、サラカエルが

「まあ…とにかく、貴方達に我々が、協力が欲しくなるようになれば…」

「そういう事だ」とアレスジェネシスは告げて歩みを進めると、男性議員達は割けて道を作り、アレスジェネシスに続いてアークエンジェル達も進んでいった。


 東城はアレスジェネシス達の多翼が見える背中を見つめて

「協力が欲しくなるような事態か…」

と、サラカエルの言葉を噛み締める。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 アメリカ、ホワイトハウスではドランド大統領が額を抱えていた。

 大統領執務室では、多くの部下である長官達が大統領と共に日本の選挙結果を見て愕然としている。

 長官の一人が

「まさか…封建的思想が残る日本で、世界初の女性政権が誕生するなんて…」

 同じ同僚のイヴァンが

「あら、それは男性だけが政治を握るのが相応しいという考えですか?」

 どこか棘がある。

 それを言った長官が焦りつつ

「いや、その…そういう世界初は我が国の方が上手く行くと思ってね」

 どこか、繕うような言い訳だ。

 イヴァンが

「これじゃあ、まだまだ、アメリカも女性大統領が出るのは先ね」

 テッドが

「イヴァン、正直なのは素晴らしいが、相手の事も考えてくれると、もっと良いと思う」

「はいはい」とイヴァンが呆れ気味に告げる。

 ドランド大統領が

「とにかくだ。これはマズイ事態だ。我々の予測では…今まであった政党が残るとあったが…それを覆された。何とか…接触を試みないと…」

 イヴァンが

「私とテッドの知り合いであるシュウイチ・トウジョウに、女性議員のトップであるサクライ氏との面会をお願いしています」

 別の長官が

「女性の大統領や首相は珍しくないが…女性が圧倒的多数を占める政党は…世界初だ。どのように接すれば…」

 イヴァンが

「簡単です。相手を尊重して、セクハラやパワハラをしない。それだけで十分です。それとも皆様は、女性と友人として話すのは苦手なのですか?」

 長官達は微妙な顔をする。

 彼らは最低でも五十代オーバーの年齢だ。

 この時分の男性達は、女性が男性と対等であるという教育が薄い年齢である。

 故に、色んなセクハラやパワハラという事件を起こす問題年齢でもある。


 その前に、男は基本がバカだ。女性を性的対象で見てしまう欠陥的な構造を持っている。


 それが無い男もいるが、それは極少数で、圧倒的に女性を性搾取としているバカ男共に攻撃されるのが世の常だ。


 テッドが

「この動きが世界に広がって…女性が圧倒的多数を占める政党が世界中で誕生するかもしれません」

 男性の長官の一人が

「上手くいくのかねぇ…」

 テッドが

「上手く行くでしょう。日本のトップには人の性を知り尽くしたソラリスがいる。彼らは異星人である故に、人間を冷静に分析出来る。我々が人以外の昆虫や生物を良く観察してその習性を理解出来るのと同じです」

 イヴァンが

「我々人類は、一番、人類である自分達の事を理解していません。それは嵐の中にいれば嵐が見えないと同じです。人であるが故に人だから人が理解出来ない。だが…人を理解しているつもりでいる。彼らソラリスは人ではない。故に人以外だが人の習性を理解出来る」

 ドランド大統領が

「恐ろしい存在だ。ソラリス…」

 テッドが

「大統領、更に問題な知らせです。中国で、ソラリスが製造したネットワークデバイスが広まっているようです」

 ドランド大統領が大きく目を開き

「どういう事だ」

 テッドが資料を配り

「恐ろしい技術です。ほぼ、我々の技術では判別不能な程の擬態をしたネットワークデバイスが急速に中国、北朝鮮、韓国、ロシア、中東と、アジアに広がっています。このままだと、我々が監視出来るネットワーク以外に、ソラリスの新たなネットワークが誕生してしまい。我々の情報収集能力が著しく低下する可能性が…」

 ドンとドランド大統領が机を叩き

「早くソラリスとの接触は出来ないのか!」

 イヴァンが苦しい顔をして

「残念ながら…何度もソラリスが置いている大使館サーバーに連絡をしていますが…全くの無反応です」

 ドランド大統領が

「ならば…日本に対する輸出入の規制を掛けよう。そうすれば」

 テッドが

「大統領…無意味です。もし、日本の輸出入に規制を掛ければ、日本の経済に大打撃が起こり、日本企業が倒産します」

 ドランド大統領が

「一番の効果がある事じゃあないか!」

 テッドが

「そうなれば、ソラリスが広げている、ソラリス関係の職種ナノマシンエンジニアがますます拡大して日本は、完全にソラリスになってしまう。現在、ソラリスのナノマシンエンジニアは一千万人を突破しています。ますます増えるでしょう。ここで日本の輸出入に規制を掛ければ、もっとそれを増やして、もっと我々の手に負えなくなる」

 イヴァンが

「もし、日本の製品に関しての輸入規制をした場合、国内にある多くのコンピューティング関係の仕事にも影響します。更に、ソラリスは新素材の輸出も初めています。超高力鋼を超える炭素と鋼繊維の複合素材、既存のバッテリーを超えるリアクター、ナノサイズのコンピュータチップ。どもの諸外国で輸出を求めています。もし、我が国がそれを入れないとしたら、それを輸入する国に負ける可能性が高いです」

 ドランド大統領が項垂れて

「クソ…ソラリスが来てから…全てが…」

 テッドが

「それ程に、ソラリスの力が優れているのです。我々人類の文明なぞ、サルに等しいのでしょう。ですが…それを味方にすれば…巨大な恩恵がもたらされる」

 長官の一人が

「そんな強大な力があるなら、どうして世界を取らない? 征服なんて容易い筈だ」

 テッドが

「友人のトウジョウより、彼らが何故、征服しないか聞いたら…このように答えたそうです。小さな島なんて手にして何の価値があるのか?と…」

 イヴァンが

「彼らには、地球という惑星サイズでさえ、小さな島としか思っていないのです」

 長官で一番古株のザンダーズが

「NASAの友人が言っていた。直径五百数十キロ、全長十五万キロの巨大なあの宇宙船には、恐らく地球人口80億人が全て乗っても余裕で暮らせるだろう…とね」

 ドランド大統領が

「彼は…何が目的なんだ?」

 テッドが

「それを知る為にも根気よく、彼らに交渉をしようと呼び掛けましょう」



◇◆◇◆◇◆◇


 その後、日本で世界初の女性与党により、女性の総理が誕生、桜井政権の元、多くの女性が大臣として起用された。

 労働省、医療省、科学省、文化省、教育省、食料省、財務省、総務省、防衛省、消費者庁、ほぼ女性の大臣となり、予てから約束されていた自衛隊の国家安全委員や、内閣情報調査室、外務省と、外務に関するのは男性が起用された。

 阿部元総理は内閣情報調査室の長官に任命される。

 推薦してくれたのは、以外にもアレスジェネシスだった。

 外国との外務に関して、外との繋がりが必要とする男性議員達の採用を、桜井総理にお願いしたのだ。


 それを聞いて阿部議員の秘書の東城は「全てがアレスジェネシスの手の上か…」と溜息を漏らした。


 東城はアレスジェネシスに新たなタイプを見ていた。

 男性で、権力を握りるタイプに大まかに三つの者がいる。

 

 一つ目は、トップを打倒してひたすら、闘争に明け暮れるタイプ。

 このタイプは壊すのは得意だが、構築するのが苦手、故に最新を行くが後で瓦解する。

織田信長タイプというヤツだ。


 二つ目は、上手く世話をして回す者。人に多くの恩を作り、その繋がりによって権力を構築する。金回りの動かし方が上手い。

 豊臣秀吉タイプ。


 三つ目が時期を待つ徳川家康のようなタイプ。これが日本で一番多い。代々ある権益を生かして成長させ、そしてジワリジワリと時間を掛けてトップになる。

 長期政権として維持されるのも、このタイプだ。


 大体が、この三つのタイプに権力者が多い。


 だが、アレスジェネシスは違っている。

 今までに類を見ない。巨大な力を持つ個が、世界をその力、つまり…英知や技術を提供して動かしている。

 まさにそれは、今までの人類にない部類だ。

 

 人類は全て弱者だ。弱い故に、マフィアや犯罪者は、自分より弱い連中を襲って益を得る。その搾取していた者達が結託して強くなると立ち所に見る影も無く潰れる。

 人は集まってこその力が、アレスジェネシスは強大な能力、英知と技術を持ち、それを人々に分け与え、遠巻きに見つめて流れを調整して動かす。

 それは、まるで釈迦の手の上で踊る孫悟空だ。

 アレスジェネシスは人を超えた視点で、釈迦の手の上をしている。

 その釈迦の手の上にいる状態では、そこが手の上と知る事が出来ないだろう。


 アレスジェネシスを超えるには、釈迦と同じ格を備えるしかない。そんな人間がいるのだろうか?

 東城は悩むも、不意に山中の事が過ぎった。

 それの答えを求めて、再び山中に会いに行く。

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