第11話 大陸国家の業病
それは遂に来た。
中国が、東シナ海のソラリス日本地区領空を無断で侵入、戦闘機の編隊が領空侵犯していた。
五機の中国戦闘機、ロシアの中古だが、空戦能力が高いSuー35の編隊だ。
中国だってバカではない。
もしもの場合は逃げられるように、回避能力の高い戦闘機で領空侵犯する。
その目的は、ソラリスの総代、天帝アレスジェネシスを中国に呼び寄せる為に…
現在、中国には日本の大使館がない。日本にも中国の大使館はない。
両国家が対話を行うには、ソラリスが儲けているサーバーにアクセスするしかない。
国のトップが持っているホットラインでさせ、存在しない。
故に、中国は、自分達の面子を守る為に、アレスジェネシスを呼ぶ。
それが中国の政治である。
巨大な国家を支配するには、面子しか方法がない。
数千年の間、そうして中国の政治は行われた。
どんなに、体勢が変わろうと、その性質は変わらない。
日本の自衛隊にスクランブルが掛かる。
一斉に自衛隊の基地からソラリスから提供された遠隔操作型の無人戦闘機が飛ぶ。
人がいない無人戦闘機には、人が乗っている故の、リミッターがない。
一気に音速を突破して、領空侵犯した中国の戦闘機編隊へ到達する。
それを、ソラリスは上空の無人機と、自衛隊の無人戦闘機に備わるカメラ達をコントロールして、日本全土に同時生中継させる。
自衛隊の無人戦闘機が五機、中国の戦闘機編隊に並び呼び掛ける。
自衛隊の無人戦闘機は遠隔操作で、基地にいる操縦士が共通チャンネルを開いて呼び掛ける。
「This is a SDF machine.
You guys are violating airspace.
According to the guidance of this machine」
英語での領空侵犯を伝える自衛隊機。
中国機は無反応である。
日本中にそれが生中継される。
多くの国民がネットや、街頭のテレビを見上げる。
ニュースの解説者が、自衛隊が領空侵犯しているので、当機の指示に従えと行っているようです。
キャスターが「これは、大丈夫なのでしょうか?」の問いに
解説者は「適正な対処だと思います。国際法では、まず、呼び掛けるという事から始めます。それで従わない場合は、威嚇射撃となり、最悪は…」
画面の中国機は、返答がない。
そのまま、領空侵犯を続け、九州地方へ向かって行く。
このままでは、日本の領土へ到達するのは目に見えている。
自衛隊が対処をソラリスへ求めている。
現在、日本には首相が存在しない。ソラリスが日本のトップである。
それを宇宙にある巨大な天空城ソラリスの王座から受け取るアレスジェネシスが、レミエルを隣に
「どうする? このまま放って置くか?」
レミエルは肯き
「ええ…増長させてやりましょう。そして…中国機が日本の領土の上に来た場合は…」
アレスジェネシスは腕の一つを組み
「落とすか…。ミカエルとガブリエルには、中国機が破壊された破片を、地上に落とさないようにさせろ」
レミエルは頷き
「了解しました」
中国機は、日本の領土に近付く。
中国共産党のトップ、宗主席は、日本がソラリスが何もしてこない事に
「やはり、無能な連中だ。このまま戦闘機を、陸地に向かわせろ」
隣にいる副主席が
「よろしいのですか?」
「何もしてこないんだ。我々の力を見せてやれ」
見事に増長した。
中国機が九州へ近付く。
もう、陸地が見えて来た。
自衛隊機は、何も出来ないまま…併走させられる。
基地のトップが、ソラリスに再三、要請を求める。
ソラリスは、後は我々が対処する。そのまま併走し監視せよ…だけ。
九州の都市が、迫る戦闘機をスマホのカメラで捉える。
中国機が、九州の上空に入った瞬間
中国機の無線に
「警告する。撃墜する」
と、入った瞬間、戦闘機の操縦士が、陸地から離れようとしたが、遅かった。
亜光速で、ギガンティス達が、中国機の上に到達、全く間に戦闘機の両翼とエンジンを破壊、操縦士がいるコクピットを掴み回収して破壊した。
陸地に落ちる破片達は、ミカエルとガブリエルが背にアイオーン達を従え、空間波動攻撃で、落ちていく戦闘機の破片を粉々にして吹き飛ばし、海に落とした。
それにより陸地の被害は皆無である。
ソラリスの王座より確認したアレスジェネシスは
「ラグエル、ネルフェシェルの両名による、在中日本人の回収は?」
隣に居るレミエルが空間に端末を浮かばせて操作し
「順調です。後…数分後には…十五万人近くの在中日本人を回収します」
アレスジェネシスは、座っていた王座より立ち上がり
「よし、では…行くぞ」
レミエルが肯き
「メルカバーも出撃させます」
◇◆◇◆◇◆
全世界ネット中継されていた中国機撃墜に、中国は、早速、避難を表明しようと行動を開始する。
だが、それは最悪な展開で迎える事は出来なくなる。
まだ、ネット中継は終わっていない。
ソラリスの先端部、地球に向いている部分のメルカバーが収まるロックが外れて、四機の…日本を数時間で占領した全長500キロ、幅100キロの巨大な質量が四機、中国へ向かう。
中国の宗主席がいる本部では、声が荒れ響く。
ソラリスが攻めてきたぞ!
全戦闘機は発進させろ!
と、将校達が叫ぶが、中国全土に向けて、膨大なハッキングが行われる。
その元は、完全にソラリスだった。
地球にある通信ケーブル、ソラリスから発進したメルカバー達からの高出力電波と、両方のハッキングに晒されて、中国全てのシステムは乗っ取られた。
全ての通信を手中にされた中国。
その通信から、宗主席がいる本部に通達が来た。
アレスジェネシスが来ると…。
宗主席は副主席と、数名の護衛を連れて本部の屋上に来ると、空よりレミエルとサラカエルを脇にするアレスジェネシスが降臨する。
主席と副主席を守る護衛達が、アレスジェネシス達に銃を向けるも
「フン」と鼻で笑うサラカエルが、多翼に備わる空間波動砲で、護衛達を吹き飛ばす。
護衛達は、見えない空間波動攻撃で吹き飛び、う…と呻く。
ズン、とアレスジェネシスが宗主席の前に降りる。
三メータ半の巨体を見上げる宗主席、三メータ半しかないのに、巨大な山脈に思える程の気迫を放つアレスジェネシス。
宗主席は痛感する。
この世の者ではない…。立っている場所の高さが違う…。
中国のトップである筈の主席が、自分より圧倒的な存在を前に動けなくなる。
それは隣にいる副主席も同じだった。
ズンとアレスジェネシスは歩みを進め
「キサマ…良くも…ふざけた事をしてくれたなぁ…」
宗主席が
「よ、ようこそ…」
「ア”ア”ア”」
と、怒り混じりの濁音を放つアレスジェネシスは、鋭い嚇怒の視線でちっぽけな面子だけが大事な統治者を睥睨する。
アレスジェネシスの三ツ目がある仮面に睨まれ、宗主席が黙るが、副主席が
「ここには…我が国には、多くの日本人がいる。彼らの」
「ははははははは」
サラカエルが爆笑し
「そんなの…回収済みだよ。お前等が…人質にするを分かっていたからなぁ…。言っただろう。約束を守れない場合は、それなりの対応をすると…聞いていなかったのか?」
レミエルがフッと嘲笑いを向け
「止めろ、愚かがデフォの中国の統治者だ。そんな事なぞ…理解出来ないさ」
ズン、ズンとアレスジェネシスは、宗主席のスレスレまで近付き
「覚悟しろ!」
と告げた瞬間、アレスジェネシス達の背後上空にある巨大なメルカバーが閃光を放つ。
雷鳴がメルカバーから幾つも響き渡り、遠くの方で爆発音が響く。
宗主席はそれを聞いて
「何をしたんだ?」
アレスジェネシスは怒りを伴って
「キサマ等の全ての航空戦力と艦隊戦力を破壊した」
「な!」と宗主席は驚愕に包まれる。
レミエルが
「序でに配備されていた核兵器10機も破壊しましたので…」
宗主席は恐れつつ
「何をするつもりだ? まさか…日本のように中国を…」
アレスジェネシスは哀れみの睥睨を見せ
「こんな、広いだけの国になんの価値がある? 奢るな! 愚か者がーーー」
アレスジェネシスの押し潰すような鬼迫に晒されて、宗主席は膝を崩した。
アレスジェネシスは怒りを伴って
「こんな国、今すぐにでも海に変えてやってもいいが…。それ程、私は暇人ではない。だから、今すぐ、自分達がやった事を謝罪するなら…撤退してもいい」
副主席が
「しなかった場合は…」
アレスジェネシスが副主席を三ツ目で睨み、副主席が恐怖に引き釣り腰が砕けて床に落ちた。
アレスジェネシスは、鋭く
「今度は…陸軍戦力全てを消滅させる」
つまり、中国が持っている全ての軍事力が消滅、終わるという事だ。
航空戦力、艦隊戦力までも失って、最後の陸軍戦力が喪失すれば…間違いなく、中国全土で反乱が起こり、中国は終わる。
宗主席は立ち上がり
「………申し訳…なかった…」
と、頭を下げる。
そうしなければ、自分達が終わる。
アレスジェネシスはそれを睥睨し
「頭を下げた程度で終わりか? 領空侵犯をしたのだぞ。侵略行為と同等だぞ…」
サラカエルが
「謝罪が足りませんね。天帝…」
宗主席は顔を引き攣らせ、次に…膝を崩して土下座をした。
「申し訳ありませんでした!」
アレスジェネシスは、副主席を三ツ目で睨み
「キサマを同罪だぞ」
副主席も体勢を直して、同じく土下座した。
「申し訳ありません…」
主席と副主席の土下座。
それが、ソラリスのシステムを通じて、世界中に、中国全土に放映される。
アレスジェネシスはスラスターの如き巨足を上げ、宗主席を踏み付ける。
「うぐ…」とその重さが背中に来る宗主席に
「次は…この国の破滅だ…」
巨足を外して空へ、ソラリスへ帰還する。
それと同時にメルカバー四機もソラリスへ帰還する。
そして、中国全土には、中国で最も崇高とされる主席が土下座した事に、各地で国賊だ!と声が上がるも…それは、共産党を潰してトップを取りたいという二割程度の者達だけで、殆どの八割が、ソラリスが持つ力に恐怖と畏怖を感じていた。
◇◆◇◆◇◆
中国の領空侵犯事件の後、中国では…主席と副主席が替わり、中国政府がソラリスに対して抗議の声明を出すも、それは張り子の虎でしかない。
世界がソラリスの力を再確認して、驚愕に包まれる。
ロシアは、ソラリスにラートン大統領が訪れたいと、打診しても、ソラリスは一向に答えなかった。
ソラリスにとって、ロシア、中国、アメリカといった既存の大国なぞ、特別ではないのだ。
ただの、一国家、同じ地球上にある国々と同じでしかない。
ソラリスの力を知って近付く国も出て来た。
だが…ソラリスは一切、答えない。
その代わり国民議会の立候補者達に、国々が接触する。
ソラリスとの有益な関係を築きたいとして近付く。
それは中国も同じだった。
ソラリスを非難しつつも、議員立候補者達に接触、なんとかしてソラリスとのパイプを作ろとしていた。
ソラリスの王座ではアレスジェネシスがそれをレミエルから聞いて
「天帝、如何致しましょう?」
アレスジェネシスはフッと嘲笑い
「法に照らし合わせて、処罰せよ」
レミエルが
「それですと…資金や物品の授与がない、後で見返りがある関係は…見過ごされますが…」
アレスジェネシスは肩を竦め
「どの立候補者が、どの国と接触したか…それを公表しろ。それで国民に判断をさせる」
レミエルが
「そうなりますと…投票率が…落ちますが…」
アレスジェネシスはニヤリと笑み
「それが国民の判断なら仕方ない。我らソラリスの統治が続くだけだ…」
レミエルが頭を下げ
「畏まりました…」
アレスジェネシスは眉間を寄せ
「ところで…ウリエルは…どうした? あまり、ソラリスで見かけないが…」
レミエルは「ああ…」と顔を納得にさせ
「天帝が中国の一件で、ヘパイトスに監視を命じた後、ヘパイトスの母親と仲良くなりましたので…ちょくちょく、顔を見せているようですよ」
アレスジェネシスは首を傾げ
「そうか…」
レミエルが
「行くのを止めさせますか?」
「構わん。ウリエルの好きにさせる」
「は…」
アレスジェネシスは天井を見上げ
確か…亡き母親もウリエルと似たような、天真爛漫な性格だったなぁ…。こっちの別時空過去世界でも同じという事か…。
ヘパイトスが買い物から帰ってくると、玄関の部屋で、母親とウリエルが楽しげに話している場景があった。
「また来たの?」
と、ウリエルに告げるとウリエルは悪びれる事なく
「来ちゃあ~悪いの~」
「ねーーー」
と、母親とウリエルは声を合わせて微笑む。
「はいはい」
と、ヘパイトスは母親と話すウリエルを横目に家に上がる。
ヘパイトスは居間に来て、スマホを開くと、中国との領空侵犯に対する討論のような政治系のYouTubeが騒いでいた。
多くの日本の政治YouTubeは、当然の対処だと言っているが…一部の左とされる人々は、横暴だと言っている。
だが、結局は…中国の今までの日本に対する領空、領海の侵犯のせいで、当然とする声が多い。
そして、そんな状況だからこそ、国政立候補者達が、どの国と接触したという情報の公開は、大きなお祭りとなった。
ニュースでは、どの候補者が、どの諸外国と繋がりがあるか…そんな、ワイドショーで賑わっている。
ソラリスが、面白いネタを沢山くれるので、マスコミは、嬉しがっていた。
だが、ヘパイトスだけは違った。
これも、ソラリスの狙い通り…という事を分かっている。
全てはソラリスの手の上、あのアレスジェネシスの目論み通りなのだ。
ヘパイトスは、スマホの端末を閉じて
「おれは…どうすれば…」
と、考えてしまう。
そんな胸中に、玄関から母親とウリエルが楽しげに話している声が響いてくる。
確実に世界は、ソラリスを受け入れ始めていた。
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