11. 腹をくくれ
【……来るとは思ってたが、ねえ】
そんな、ケケの言葉のすぐ後。
【――ねえ、ちょっと】
すぅっと、アオイが目の前に現れた。
そして、唐突とも言えるようなことを言ってくる。
【西の森の、老涙竜フィネルについては、知ってるよね?】
【……さぁて?】
【知ってる、知ってる!】
横から声を上げるはケケの話し相手。
【ああ、まったくおしゃべりだねえ、お前たちは】
【だって、さっき視てたじゃんよ】
――ケケこと「狭間の番人」
それは、老いた人のような形をとっているが、もちろん人間ではない。
しょうがないねえ、と、それは語りだす。
【――老涙竜、フィネル。そやつは、争いをやたらと嫌う竜でね。だからこそ、争いの火種となりえるヒトの子を――極上の涙の子を、ずっと隠していたのさ】
【……え】
極上の涙。それはつまり。
【それって。……「
ニィッと、それは笑う。
【そうさ】
アオイにとっては、ちょっとした「おつかい」のような気持ちでいたのだが。これは、ずいぶんな大役だ。
つい、ため息がでるが。
『――こはくを、逃がしておくれ』
(……)
どうにもその言葉が、耳に引っかかって離れてくれない。
【アオの、腹をくくれ】
【……言われずとも】
そのまま、アオイはそこを後にした。
――さあ、物語のはじまりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます