ちゃんとしたチャーハン

 私は普段、あるQ&Aサイトを見ている。それで私は今日、ブチ切れた。

 我が最愛の漫画『Avaloncity Stories』のファンにレイシストがいるなんて!? 私は腹が立った。問題の回答者はどさくさに紛れて、質問内容とは無関係の嫌中嫌韓のヘイトスピーチ、さらには中南米某国の女性有名人への誹謗中傷を回答に付け足していたのだ。反戦・反差別・反ファシズムの立場にある私は当然、頭にきた。お前みたいなレイシストなんかにゃ、あの漫画を読む資格などない!

 第一、あの漫画は私のように世間一般の不条理や「悪しき常識」に対して疑問を抱ける人間こそが読むべきなんだ。一部特権階級の私利私欲の上に成り立つ史上最低の政権を無批判に支持するような愚か者には、あの漫画のファンでいる資格などない。


「くそう、ムカムカする!」


 私はムシャクシャした気分を抱えつつ、近所のラーメン屋に行く。以前食べ損ねた油淋鶏ユーリンチーの食券は、今日はちゃんと売られている。私はチャーハンと油淋鶏の食券を買い、注文する。

 店内を流れるFMラジオ。普段聴いている〈FMエソニア〉とは違う放送局だ。そのFMエソニアの「DJ松弾」こと松永少伯さんの番組が今頃放送しているのを思い出すが、黙って裏番組を聴きつつ料理を待つ。スマホは我が家で充電中だし、本も持ってきていない。ただ、撮影用のデジカメがあるだけだ。仕方なく、店内のメニューを眺める。私は活字に飢えているのだ。

 さらに、水槽の魚も眺める。なんてかわいらしいの? 私はキラキラした水槽に背を向け、席に戻る。

「お待たせしました、チャーハンです」

 チャーハンが、そして油淋鶏が来た。久しぶりに「ちゃんとした店」で食べる「ちゃんとした」チャーハン。うまい。油淋鶏のパリパリした衣と、食べごたえのある肉。

 チャーハンの塩コショウの加減がほどよく、どんどん食が進む。私自身が作るチャーハンなんて屁みたいなもんだ。これがプロの味。細かく刻んだカマボコが懐かしさを演出している。このチャーハンには、上にラーメンと同じくバラの花のようにまとめたチャーシューが載っていたけど、これは瑞々しい。


「ごちそうさまでした」

 私は店を出て、家に戻る。毎食後飲んでいる病院の薬を飲むため、すぐに帰宅したのだ。今日はたまたま薬を家に置いてきたのだ。

 パジャマに着替えて、布団に横たわる。先ほどに比べて、だいぶ気分が良くなった。

 よし、明日のブログの記事はあの店のレポートだ。ちゃんとデジカメで料理の写真を撮っているし、あとは文章を書くだけだ。私は充電が終わったスマホを手にした。

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