第34話 飲むのは前か後か……
「じゃあリンレイさん、『良いですか?』」
「オッケー、いつでも『良いよ』」
スマフォ越しの俺の“要請”をリンレイさんが“了承”した瞬間、目の前の床に光る魔法陣が出現する。
昨日のミフィさん製の魔法陣に比べれば随分と簡素な図形ではあるが、そこから隣の部屋で待機していたはずの彼女が浮き上がるように姿を現す。
……もちろん今度は最初の時とは違い彼女はしっかりと服を着ている、抜かりは無い!
姿を現した彼女は辺りを見回している。
「これで三度目だけど何か不思議な感覚ね、自分が召喚されるって言うのも」
「呼び出される時に何か違和感は無いですか? めまいとか……」
「ぜ~んぜん。呼びかけに応じたらいつの間にかこの部屋に来ていたって感じ」
俺とリンレイさんは先日発覚した能力『オーナー・コール』について実験、確認をしていた。
昨日商業都市トワイライトを襲った巨大黒龍を撃退する際には大活躍してくれた能力ではあるものの、全容が分かっているワケじゃない。
車霊契約者たちとの連絡手段としては非常に優秀だけど、『呼び出し』に関しては最初のような失敗があっては困るからな。
最初の失敗…………
「…………クッ!」
そこまで思い出して、俺は目の前のリンレイさんから思いっきり顔を逸らしてしまう。
アカン! 幻覚が!? 俺の邪な欲望が彼女の服を透けて見させる特殊能力を持ってしまったかのような幻覚が!?
しっかり衣類を纏っているはずのリンレイさんを神々しい肌色多めの姿に!!!?
ペシン……
「あた……」
しかし次の瞬間、俺はリンレイさんに頭を叩かれて正気を取り戻す。
「いい加減にしなさいよもう。何で見られた私よりも、見た君の方がいつまでも引きずっているのよ!」
「う……」
ほんのりと顔を赤くしながら嗜めるリンレイさんである。
何と言うか本当に申し訳ない……何と言うか、男子高校生にとってあの神々しい光景は目に焼きついてしまって……その……。
「私はもう気にしてない! 君ももう気にしない! いいね!?」
『そうよ~。リンちゃんだって別に見られた事を怒ってないんだし、むしろ……』
「むしろ?」
リンレイさんの言葉にニヤニヤ笑いで口を挟むカタナちゃんだったが、何やら速攻でリンレイさんに後ろから頬を引っ張られる。
「カタナちゃ~ん? 余計な事を言っちゃうのは、このお口かな~?」
『いひゃい!? いひゃい!!』
二人のじゃれ合いのお陰で和んだお陰か、少し落ち付いた俺は再び検証を開始する。
『オーナー・コール』は基本的に召喚術に似ていて、呼び出す『召喚』と元の場所に戻す『返還』が出来るようで、事実リンレイさんにスマフォ越しに『帰って』と話すと彼女は呼び出される前にいた隣の部屋へと光る魔法陣を通じて戻って行った。
しかし、この能力は本来の召喚術に比べて非常に使い勝手が悪いようだ。
召喚士と呼ばれる者たちは基本的に使役に成功した魔獣や精霊を呼び出すだけで召喚するのだが、俺の能力では『要請』と『了承』が不可欠になる。
……向こうの都合を考えるのなら、むしろ良い事ではあるけど。
そして最も効率が悪い所……それは今度は“隣の部屋から扉を開けてこっちの部屋に来た”リンレイさんが口にした。
「貴方が召喚出来るのは、今までの事を考えても一日に一回が限度のようね。いや、返還にも魔力的な何かを消費するなら2回なのかな?」
そう、この車霊契約者を呼び出す『オーナー・コール』は、どうも一日に一回限定。
それ以降は幾ら『要請』に契約者、この場合はリンレイさんが『了承』しても俺の前に魔法陣が現れる事は無かった。
「会話が出来るのに召喚は出来ないのか……」
「魔導師が一日に使える魔力に制限があるのと似てるけど。魔力も大抵休養で回復するもんだし……やっぱり『オーナー・コール』も魔法の一種なのかな?」
「カタナちゃん、車霊の君は何か分からないのかな?」
冒険者として経験のあるリンレイさんが思案しても分からないなら、車霊本人であるミニチュア巫女ならと俺は振ってみるものの、カタナちゃんも同様に首を傾げる。
『ん~どうかな? 私たち車霊も魔力で具現化した存在じゃなくどちらかと言えば精神力が形になったって感覚だからね~。普通の召喚士みたく『魔力で使役』されているワケじゃないから魔力で呼び出されているって言われてもピンと来ないって言うか……」
ようするに車霊本人にもよく分からないらしいな……。
「ま、分からんもんは仕方が無い。 ……多用出来りゃ配達の『行き』はともかく『帰り』の時間短縮になると思ったけど、1日1回じゃ~な~」
「普通だったらスキルの使用法は戦闘に偏るものなのに、ハヤトが第一に考えるのは仕事の事なのよね……フフ」
『一般の冒険者だったら“いつでも強者を召喚出来る!”なんて考えそうなものなのにね。やっぱり我らが創主(おにいちゃん)はこういう人なのよね~』
好ましく思っているのか、それとも呆れているいるのか……二人は俺にそんな評価をして苦笑する。
ほっといてくれ……俺には戦闘寄りな思考は出来んし、何より時間短縮は経営者としては常に考えるべき事案だぜ?
*
実験を終えてしばらくしてから、俺たちはこの街で冒険者たちが集う宿兼食堂である『満月亭』へと訪れていた。
ココには昨日黒龍を倒すのに尽力した多くの冒険者たち、特に『炎の椋鳥』が常宿にしているらしく、案の定一階の食堂へ入ると多くのテーブル席に座る客に混じって彼女たちも着席しているのが目に入った。
ただ、その着席した4人の内2人はグッタリとしていてテーブルに突っ伏している。
それはまるで酔いつぶれた中年のような疲れ切った様子で、比較的元気そうな二人が甲斐甲斐しく食事を口元に運んであげている。
ちなみに潰れているのはシルフさんとリリアちゃん、食べさせてあげているのはイリスさんとミフィさんだ。
え~~~っとこれは一体?
「ちわ~っす、トワイライトの救世主さんたち」
「な~にダレてんのよ。今や『龍殺し』の最強魔導師パーティ『炎の椋鳥』が情けないわね」
リンレイさんが呆れたように言うと、テーブルに突っ伏していた二人、ハーフエルフのシルフさんとゴスロリ少女のリリアちゃんが恨みがましい瞳で睨んだ。
ただ、首を動かすのも億劫なのか向いたのは瞳だけだが。
「うっさいな~。昨日の無茶な魔法のせいで魔力が回復しきってないのよ……。これほど持って行かれるとは思わなかったわ……」
「私も……まだ不調。2~3日は動けない……」
な、なんだこの二人のグッタリ具合……どっちも目に生気が無い。
確かこの二人はエリート魔導師集団『炎の椋鳥』の中でもトップの魔力量を誇っていたんじゃ無かったっけ?
「え~っと、どうしちゃったんですか二人とも。昨日の黒龍を倒した魔法の事を言うなら、イリスさんだって……」
二人と同様に昨日荒野に描いた巨大魔法陣の発動を担当したイリスさんには二人ほどの消耗は見られないのに。
俺がそう言うとイリスさんは気まずそうに笑う。
「ミフィが昨日描いた魔法陣は黒龍をも滅消してしまう強力な魔法でしたが、大気や大地などから魔力を得る代償に、術者本人も相当の魔力を持っていかれるようで……私も本日は碌に魔法は使えません」
「え!? そうなんですか」
現状二人よりも元気そうなイリスさんも相当疲弊しているらしい。
だが、そうなると魔力量自体は高いはずの二人が動けない程ってのは?
「担当する属性魔法が一つだった私やソフィと違って、二人が担当したのは2つ。一つでも翌日に魔法が使えない程疲弊するのに2つ……結果、彼女たちは翌日の体力すら魔力に変換する勢いで枯渇してしまったのですよ」
「あ……あ~~~なるほど……」
例えばイリスさんが100で二人が150だとして、昨日の魔法が一つの属性につき100の魔力を必要としたなら2つ担当した者は消費は倍、足りない分を体力で補うしか無かったと。
俺は深々とうな垂れる二人に頭を下げた。
「お疲れ様です」
「……本当に疲れたわよ。スプーンも持てないくらい……イリス、スープちょうだい」
「はいはい……あ~~ん」
「ミフィちゃん、パンにジャム塗って~」
「は~い、イチゴジャムをタップリと……ランちゃんお願いね」
『アイアイサー』
気力体力を使い切っても食欲はあるようで、仲間たちに食べさせてもらう状況は何気にシュール。
ミフィさんはタップリとジャムを塗ったトーストを、テーブルに乗っている迷彩柄の少女『ランドクルーザー』のランちゃんに渡すと、彼女はてってことリリアちゃんの口元に持って行く…………何かホッコリするな。
「あ、あのお二人とも……昨日はその……ありがとうございました。姉さんを助けていただいた事は勿論ですが、長年わだかまりを問題を解決して頂いて……」
そんな光景に俺もリンレイさんも和んでいると、不意にミフィさんが話し始めた。
長年のわだかまりって言っても、姉妹での仲違いと言うか意見の違いと言うか……結局互いが互いを心配していただけだからな。
姉(ソフィ)は戦闘に向いていない妹(ミフィ)を心配して冒険者にしたくなく、妹は姉を心配で冒険に付いて行きたい……結局はそれだけの事だった。
「何を言ってんだか……俺がやったのはきっかけに過ぎないですよ。ミフィさんの才能とソフィさんの実力は元々相性が良かった。昨日の結果はそれだけの事ですよ」
俺がやったのはミフィさんの『車霊』の才能を引き出したという事だけ、魔法陣を描く事も使用する事も一切俺の手柄じゃない。
しかし、思った事を口にした俺に対してミフィさんは激しく首を振る。
「そんな事ありません! ランちゃんの発現は勿論ですが、店長さんはあの危険な逃亡の運転を担って下さいましたし、何よりも町全体に連絡して情報を共有して下さらなければ、昨日の勝利は絶対にありえませんでした!!」
「お、おおう!?」
「それに……姉さんと一緒に戦う何て事も…………」
そう言うとミフィさんは正面から俺の顔を見つめてガッシリと手を掴んだ。
眼鏡の文学少女風な彼女に見つめられて、不覚にもドキッとしてしまう。
「本当に……本当にありがとうございます……」
その真剣な瞳には涙が浮かんでいた。
彼女にとって、昨日の出来事はそれ程までに大事な事だったんだな……。
そんな彼女の振る舞いに、『炎の椋鳥』の面々も苦笑を浮かべる。
「……ま、本当は私たちもソフィの過保護っぷりは過ぎると思っていたけど、姉妹の事に口出しするのは野暮だと黙っていたからね。店長には感謝しているのよ」
「私は以前からミフィの魔法陣の有用性は高いと思っていたのです。今回の事でそれが証明出来て嬉しく思いますよ。これも貴方のお陰ですね」
「巨大魔法陣を使えたのはハヤト店長の力……。お陰で私たちは『龍殺し』の称号を得る事が出来た……感謝」
「え、ええっと……」
タイプの違う美少女魔女たちに褒められ感謝されるというこの状況、男冥利に尽きるとも言えるけど……何と言うかむず痒いな。
そんな風に俺がマゴマゴ言い淀んでいると、背後からリンレイさんの溜息が漏れる。
「こういう時のお礼は堂々と受けなさいよ……全く……」
『まあ~ウチの店長は純情ボーイだから……美女に免疫少なくて、褒められるのに慣れてないんでしょ?』
「やかましい、その通りだよ、んにゃろう!!」
心裏を突かれてやさぐれる俺が美女たちに一しきり笑われてから、俺はこの場に重要な人物がいない事が気になった。
「そう言えばお姉さん、ソフィさんは一緒じゃないんですか?」
昨日の戦いでは間違いなく一番の功労者であるソフィさんも、てっきりみんなと一緒だと思っていたのだが。
しかし俺がその事を聞いた途端に魔女たちは全員気まずそうに俯いた。
「姉さんは……その……」
「? ソフィさんに、何かあったんですか?」
深刻そうに言葉を搾り出すミフィさんに只ならぬ気配を感じて、背筋が凍る。
……いや、考えてみればソフィさんは昨日の戦いで黒龍と常に対峙して、ほとんど攻撃の矢面に立ち、相当のダメージを負っていたはずだ。
魔法陣での強力な攻撃が余りに華々しくて忘れていたけど、一度など上空から黒龍に叩きつけられていたし、普通だったら重傷ものだ。
魔力の枯渇に関しても、シルフさんとリリアちゃんみたいに2属性の消費は無かったとしても、ソフィさんは黒龍と対峙する為にも相当の魔法を使っていた。
下手をすればこの二人よりも疲弊が激しいのかも……。
「ソフィさん、何か大怪我でもあったんですか!?」
「……昨日の様子じゃ気が付かなかったけど、彼女大分黒龍からの攻撃を貰っていたわね。常人だったら一撃でお陀仏だったようなヤツを……」
リンレイさんも心配になったのか、深刻に口を挟む。
「いえ、怪我自体は全身の至る箇所に打撲、骨折がありましたが、教会の『天使』のシスターに見ていただいて……大事には至りませんでした」
どうやら診察治療に当たったのはシスター・ラティエシェルのようだ。あの人だったら間違いは無いだろうな。
「じゃあ魔力の枯渇が酷いとか?」
俺が次点の思い付きを口にすると、今度は突っ伏したシルフさんが首を振った。
「……店長、『炎の椋鳥』はそれぞれの利点を持った魔導師集団なの。それぞれ別の属性を持っているのは勿論だけど、それ以外に特技があるのよ」
「特技? 属性以外にって事ですか?」
「分かり易く言えば秀でた『魔力の才能』って所かな? 例えば私はハーフエルフ特有の膨大な魔力量、リリアは私に次ぐ魔力量の他に魔法を効率良く繊細最小限に扱う才能、イリスは回復や防護結界なんかを長時間維持させる力……ミフィは言うまでも無く六属性全ての魔法陣を描ける能力……」
シルフさんの言葉にミフィさんは照れるが、他の二人は当然の顔で頷く。
どうやら彼女たちにとってその事実は自信の源になっているようだ。おそらくその才能のお陰で九死に一生を得た経験だって少なくないんだろうな。
「……じゃあソフィさんの秀でた『魔力の才能』って?」
俺の当然の疑問に対して、シルフさんは溜息交じりに答える。
「圧倒的な“攻撃力”とありえない程の“回復力”よ……」
その言葉に俺は驚くというよりも納得してしまう。
性格や戦い方などを鑑みても、彼女の魔法が攻撃力に特化しているのは正直“見たまんま”としか言いようが無い。
昨日の黒龍と最初に対峙した時だって、属性魔力防御を使っていない状態だったとはいえ、黒龍の巨体を自前の魔法のみで吹っ飛ばしていた位だからな。
しかしありえない程の回復力とは?
「回復力って……そんなに凄いんですか?」
「……私もリリアも、2~3日は碌に動けないだろうし、イリスだって動けても魔法が使える程回復してない……なのに……」
「いえ~~~~い、みんなお待たせ~~~~!! 追加の酒が届いたよおおお!!」
「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオ!!」」」」」
「さっき言った通り、今日はソフィの奢りで飲み放題だ! 気合入れろよ手前ら!!」
「「「「「「うおおおお! かかってこいやああああ!!」
その時、突如として食堂に大量の酒樽を抱えた男たちがなだれ込んできた。
途端、食堂内に沸き上がる大歓声。
その音頭を陽気に、絶対に酔っ払っている赤い顔で取っている女性……。
目が点になる俺たちを他所に、四人の魔女たちは溜息を吐いた。
「魔力と体力の回復が追い付かない仲間を他所に、昨日の戦いで一番魔力を消費して、しかも満身創痍だったはずのあの人は……何してんですか?」
おそらく今俺は過去最高に呆れた顔をしているんだろうな。今現在のリンレイさん、カタナちゃんと同じように。
まるで昨日の事実が無かったかのように、魔力と体力の枯渇で動けない他の面子とは似ても似つかない陽気ぶりだ。
「まあ……こういう事です。姉さんはどんなに魔力を使っても、翌日には全回復しているくらいなんですよ。お陰で今日は『龍殺し記念』と言って朝からこんな調子で……」
妹ミフィさんが溜息混じりに説明してくれる、若干申し訳無さそうに。
あ~~~まあ彼女たちが溜息付きたくなるのも分かるか……自分たちがグッタリしているのに一人だけ陽気に元気にされてたら……ね。
しかし、この冒険者みんなを巻き込まんばかりの騒ぎは一体?
疑問に質問すると、シルフさんが為気交じりに教えてくれる。
「昨日の黒龍討伐……最後に仕留めたのは確かに私たちだけど、協力した冒険者の数は多かったじゃない? そうなると冒険者ギルドも討伐の賞金を誰に払って良いのか分からないって事態になるらしくってね」
「まあ、そうでしょうね。冒険者の討伐詐称なんて良くある話だし」
リンレイさんも経験があるのか、納得顔で頷く。
確かに、昨日の騒ぎでは仕留めた最大の功労者は『炎の椋鳥』だけど、町中から外へ誘導する時にも関わった冒険者は多数いる。
だけど、後日になって『俺は参加していたから分け前を寄こせ』と言われても、本当かどうか確認のしようがない。
「それでギルドが困っていたらソフィが『じゃあギルド持ちで一日一杯、協力者は飲み放題、それが報酬って事にしましょう』って言ってねぇ」
「ああ……なるほど、そういう……」
「ったく……せめて私たちが回復してからにしてくれれば良いのに……」
「祝いは早い方がって…………ブツブツ」
何ともソフィさん(のんべえ)らしい豪快な解決策。
ギルド持ちの飲み放題を今日限定に、しかも最大功労者の提案なのだから後から文句を言うワケにも行かなくなる。
そうなると、もう協力者だろうがそうでなかろうが、時間の許す限り飲むのが得だと。
一気にボルテージが上がる満月亭の食堂の中心で、ジョッキを片手に『車輪の誓』のケルトさんの肩に乗り「乾杯!!」と叫ぶソフィさんの姿に……本日のギルドが果たしてどれだけの支払いを強いられるのか……少し心配になった。
「これって黒龍討伐と、どっちが高く付くんですか?」
「さあ…………姉さんにとって“タダ酒”って禁句中の禁句ですから……」
*
「……にしても、あの二人の関係は……結局謎のままですか」
俺は喧騒の中、今も一緒にジョッキを傾けて笑いあっているソフィさんとケルトさんの姿に不思議に思った。
両パーティでも謎のままである“リーダー同志の飲み仲間の関係”
今の状況を鑑みても、結構しっくり来る二人だとは思うのだが。
「毎度毎度、酒宴で最後まで付き合えたヤツがいないからね……こればっかりは」
「憎からずは思い合ってると思いますけど」
「何の話です?」
俺たちがコソコソ話していると、ミフィさんが不思議そうに聞いて来た。
そう言えば、この前この話になった時にはミフィさんはいなかったっけ?
「ソフィとケルトの事よ。あの二人がどこまで行ってるのかって……『車輪の誓(むこう)』とも情報交換しているけど、酒の席を最後まで残れたヤツがいなくて、確証が……」
「ああ、そんな事ですか」
しかしシルフさんの言葉にミフィさんは、何でもないように、実にあっけらかんと爆弾投下した。
「だったらお酒の終わりを狙っちゃダメですよ。あの二人は“お風呂の後でお酒を楽しむ派”ですからね」
「「「「「え!?」」」」」
「は? 風呂の後??」
ミフィさんが言った言葉の意味、俺にはそれだけで理解が及ばなかったが……女性人はそれだけで理解が出来たようで、全員が瞬時に顔を赤くする。
「え? まさか……でもそう言えばあの二人、いつも飲み屋には“一番最後に一緒に”来るわよね?」
「確か……二人の会話で“いつもの場所で待ってる”って聞いた事がありました。てっきり飲み屋(ここ)の事かと思っていましたが……」
「お風呂の後って事は……つまり……」
『い、いたしちゃった後って事?』
ゴクリ…………カタナちゃんが最後に締めた一言、全員が息を飲んだ時には、さすがに俺にも意味が咀嚼、理解できた。
そして冒険者たちの中心で陽気に酒を交わす二人の姿に……ちょっといけない妄想が浮かび上がる……。
「ミフィ……姉さんとケルトの事、詳しく教えて!!」
「我々の長年の疑問、終止符を打てるのは貴女だったのですね!!」
「隠す……良くない! 私たちは魂で繋がった最強の魔女、『炎の椋鳥』!!」
爛々とした目でミフィさんに詰め寄る三人は冒険者と言うよりも女子高生のノリ。
別にパーティでもないリンレイさんも興味津々だし、カタナちゃんに限っては既にテーブルの正面を陣取っている。
そして若干戸惑いを見せていたミフィさんも、次第に得意気な顔で姉のプライベートの暴露を始める……。
何時の時代も、女性は恋バナが大好物。
特に他人事なら聞くのも話すのも……話される方としては後日大変な事になりそうだけどな。
俺も、自分の事を妹に暴露されているとは知らずに皆と酒を片手に笑うソフィさんに背を向けて……後学の為にミフィ教授のご講義に集中する事にする。
いや、男は何時の時代もエロが絡む話は大好物ですから。
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