魔人に願いを
魔人に願いを
もくもくもく、とけむりが立ち昇り、
おいおい、マジかよと思ったが、どこからどう見ても
「願いを言え。一つだけ、叶えてやろう」
魔人に願いと言えば三つが相場だ。一つだけというところがケチだと思ったが、迷わず俺は答えた。
「バレンタインにチョコがほしい」
しばらく、魔人は沈黙した。
「……そんな願いでいいのか?」
「そんな願いとは何だ! 俺にとっては切実な願いなんだぞ!」
俺は、拳を握り締めて力説する。
「この世に生まれ落ちて
もし、誰かが俺にチョコレートをくれたなら。俺は、喜んで三倍返しだって五倍返しだってするだろう。そのときのためにバイトで貯めた金を全部つぎ込んで、ホワイトデーには両手いっぱいのバラの花束をその子にプレゼントする。そしてその子は「ありがとう」なんて言って微笑んで、それから二人はラブラブ街道一直線に……。
しかぁし! 俺にはそもそもチョコをくれる人がいないんだ!
「一度でいいから、バレンタインにチョコをもらいたい! 俺の願いを叶えてくれ!」
「そうか、わかった」
魔人はうなずいた。
「ほれ」
そして魔人は、チョコを残して去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます