携帯ペット
20××年に発売された携帯電話の新機種では、ペットを飼うことができるようになった。今は犬だけだけれど、将来的には猫やうさぎなども飼えるようになるらしい。
犬は、柴犬やチワワ、パグなど十二種類から選ぶことができる。わたしが選んだのは柴犬で、ケンタと名づけた。
毎日、ケンタにえさをやる。すると、ちゃんと、画面の中でケンタが大きくなる。ケンタは骨付き肉が大好物で、初めの頃、そればかり食べさせていたら、体調を崩して弱ってしまった。それ以来、えさの栄養のバランスにも気をつけている。
トイレの始末もする。最初にきちんとしつけないと、決めたところでトイレをしてくれない。
いやがるケンタをお風呂に入れて、シャンプーもする。シャンプーは嫌いだけど、そのあとのドライヤーとブラッシングは好きみたい。気持ちよさそうにしていて、見ているわたしも微笑んでしまう。
散歩にも毎日連れて行く。これをサボると、ストレスからか、ケンタの落ち着きがなくなってしまう。ときどき、お散歩コースの中の公園で、フリスビーで遊ぶ。わたしの投げ方が下手なのか、それともケンタが下手なのか。とにかく、三回に一回くらいしかキャッチに成功しないのだけれど、それでもケンタはフリスビーが大好き。フリスビーをくわえて戻ってきて、投げて投げて、とわたしにおねだりする。
芸も教えた。携帯電話に向かって「おすわり」と言えば座るし、「お手」と言えば前足を差し出してくる。えさをやるときも、「待て」と言えば、わたしが「良し」と言うまで食べずに待っている。うちのケンタは、とっても良い子なのだ。
何より嬉しいのは、わたしが「ケンタ」と呼びかけると、どんなに遠くにいても全速力で駆け寄ってきてくれること。他の人が呼びかけてもダメ。ちゃんと、わたしの声だけに反応する。わたしの声を覚えているのだ。それがすごく嬉しくて、ついご褒美をいっぱいあげてしまう。ケンタ、いつまでも一緒だよ、と思う。
問題は。
ケンタの世話に熱中しすぎて、電話がかかってきても出られないことだ。
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