chapter14 一般的な電話応対 ~担当者不在の場合の取次方~

 ある日の英語科準備室にて…


”プルル、プルル、プルル…”


「失礼します…2年×組の嶋尻真琴です」


「嶋尻さん!ちょうどいい所に!!ちょっと、その内線電話、出てもらえないかしら?」


 この先生は阪場先生。私のクラスの英語担当をしていて、とっても美人なことから男子生徒からの人気も高い先生だ。


”ガチャ”


『はい、英語科準備室の阪場先生のデスクです』


『んん?その声は…嶋尻が何で阪場先生の電話に出ているんだ?』


『戸山先生!次の時間、英語の授業なもので準備室に来たら、阪場先生に代わりに出て欲しいって頼まれたもので…』


『そういうことか…それで、阪場先生は近くにいらっしゃるのか?』


『え~と…』


「…」


「(首を横に振っている、ということは…)」


『少々お待ち下さい』



***



 真琴さんは、阪場先生が近くにいるのに、電話先の戸山先生に対し「少々お待ち下さい」と言いました。


 これは、阪場先生が首を横に振る仕草で『電話に出たくない』と真琴さんに合図を送っていたことと、そもそも電話の取次を行う際は、というビジネス電話の原則から、真琴さんがとった行動でした。


 もしここで真琴さんが「はい、いらっしゃいます」と答えてしまったら、阪場先生は半ば強制的に戸山先生の電話に出なければならなくなります。


 万が一、ビジネスの場で相手に取次先が在席していることを伝えてしまった後で、取次先が取次を拒否したり、急に席を外してしまった場合には、最初に電話に出た者が再び出て…


「申し訳ございません。私の勘違いで、〇〇は外出しておりました」


「申し訳ございません。先ほどまで在席していたのですが、外出してしまいました」


等と言って、相手の意向を確認する必要があるでしょう。



***



『戸山先生…すみません、つい先ほどまで近くにいらっしゃったのですが、今は席を外しているみたいです』


『そうか…分かった』


『阪場先生が戻ったら、戸山先生に連絡するよう申し伝えましょうか?』



***



 更にここで真琴さんは、電話相手の戸山先生に、この後どうすれば良いか「」しました。


 ビジネス電話で取次をする場合は「」のが原則で、担当者に電話させることが可能な場合は「戻り次第、ご連絡いたしましょうか?」等と言って、相手の意向を確認します。


 また、他のメンバーでも対応が可能な場合は「もし、他の者でもよろしければご用件を承りますが、いかがでしょうか」等と言って、この場合も相手の意向を確認します。



***



『いや、またこちらから内線するよ。阪場先生には、何も伝えなくていいからな』


『分かりました。では、失礼します』


”ツーツーツー…”


「…さすが、足達先生の手解きを受けた嶋尻さんね。完璧な電話応対だったわね」


「ありがとうございます…って、先生…もしかして、わざと私に電話を任せましたか?」


「まぁ、ね…」


「戸山先生と、話したくない理由でもあるんですか?」


「まぁ、いろいろあってね…実は、今度食事に行かないかって誘われてて…」


「『食事に行くだけなら、デートにならない』って、確か郷中先生もおっしゃっていましたけど…」


「まぁ!郷中先生も言うわね…」


”キーン コーン カーン コーン…”


「!まずいわね、授業が始まってしまうわ」


「先生!急いで準備して、教室に行きましょう!」


「そうね!ちなみに、戸山先生に食事に誘われていることは…」


「分かってますよ!守秘義務は守りますから!」


「ありがとう!嶋尻さん!!」



 capture15 に続く



~検定問題にチャレンジ!!~



 松下綾子は取引先から山田課長あての電話を取ったが、課長は電話中ですぐには終わりそうにない。このような場合松下は、取引先に「山田はあいにく電話中でございます」と言った後、どのように言うのが良いか。次の中から『適当』と思われるものを一つ選びなさい。

(第23回 ビジネス電話実務検定知識B級より)



「1.「このままお待ちください」」




「2.「どのようなご用件か伺いますが」」




「3.「それでは代理の者に代わります」」




「4.「終わり次第、こちらからおかけしましょうか」」




 『適当』(正しい)選択肢は…





































「4.「終わり次第、こちらからおかけしましょうか」」



~解説~



「今回は、電話中の課長宛に電話がかかってきています。課長は電話中ですが在席はしているわけですから、すぐに終わりそうもないのなら、終わり次第こちらからかけるのが正解であり、終わりそうもない電話を待ってもらったり、相手の了承もなく代理の者に代わるとか、松下が代わりに用件を聞くのは筋違い、ということになります」

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