chapter12 「工程別総合原価計算」って何!?

 今日は「銀杏通り」で開かれる夏祭りに、煉先輩と一緒に来ていた。


「へい、いらっしゃい!美味しいたこ焼きだよ!!」


「ふわっふわの人形焼きは如何~」


「ねえ先輩!屋台がいっぱい出てるよ~♪」


「そうだな!今年は一段と屋台の数が多いみたいだし」


「早くいこ!」


「まてまて美琴!そんなに急がなくても、屋台は逃げては行かないぞ!」


「ねぇ先輩!たこ焼き食べない?私、小腹がすいちゃってて…」


「俺も腹が減ってたんだよ。たこ焼き買うか!」


「いらっしゃい!」


「たこ焼きを1つ、お願いします♪」


「今から焼くから、少し待っててくれや!」


「は~い♪」


「いい匂い♪」


「そうだな♪」


「それにしても、あのポリバケツに入った生地の素とか、中に入れる具材とかって、お家でたこ焼きを作ろうと思ったら、切ったり粉を水で溶いたりする必要がありますよね~」


「この狭い屋台のスペースで、具材を切ったり粉を水で溶いたりすることはできないから、たこ焼きを作る過程を「工程別」に分けて、自宅でやれるものは自宅でやって来てるってことだな」


「あっ!!こんなところにも「工業簿記」を発見!!」


「確かに、屋台の運営は「工程別総合原価計算」に例えてもおかしくないな!」


「そう言えば、授業でもう工程別総合原価計算に入ったんだったな」


「総合原価計算の基礎が先週終わったから、今週から具体的な内容に入ってるんだ~」


「屋台のたこ焼きを工業簿記に置き換えると、具材を切ったり、生地の素を水で溶いたりする工程が「第1工程」って訳だよね!」


「そうだな。工程別総合原価計算では、


「野菜やタコ、生地の素といった「材料」に、「人の手(労務費)」と、具材を切る場所の照明や空調、ガス代や水道代といった「経費」を使って加工を加え、この屋台まで運ぶ」


「屋台まで運んだ時に「第1工程」で生産された半製品が「第2工程」に引き渡される、ってことですね」


「そういうことになる。今回の例だと、ただ具材を切ったり生地の素を水で溶いただけだから、第1工程で出来上がった「半製品」を売却することはないだろうけど…」


「例えばドーナツの製造で、第1工程が生地を丸いリング上にして油で揚げ、第2工程でチョコレートをかけて製品が完成だった場合、から、第1工程で完成したものは「」ということにして資産管理し、売却したら「半製品売上原価」に振り替えることもあるな」


「確かに!」


「んで、自宅で加工が終わっている具材や生地の素を、たこ焼き専用の鉄板の上で調理して、プラスチックのフードパックに入れて製品を完成させるのが「第2工程」という訳ですね!」


「ここでポイントなのが、調味料以外の材料は、この第2工程で投入されないということだ」


「確かに。だから、第2工程の月末仕掛品を算出する時に「材料費」の代わりに「」と「加工費」で計算をするんですね♪」


「そういうこと。第2工程の前工程である「第1工程」で完成したものが、第2工程の材料となる訳だから、んだ」


「へい!たこ焼き1人前お待ち!」


「あれっ!?おじさん、2個多くない!?」


「美人で正直者のお嬢ちゃんにおまけだ!」


「そんな…美人だなんて…」


「そこの兄ちゃんも、幸せ者だね!大事にしてやんなよ!」


「はい。ありがとうございます…」


「おじさん!ありがとう!!また明日、友だち連れてきっと来るからね~」


「おう!待ってるぜ~!!」


chapter13 に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る