Ⅲ
今日の勤務はいつもと比べてとくに楽であった。というのも彼女の新たなる住居となる場所への申請や書類などを書く手伝いであったからだ。
しかし、どうもやりづらさを感じずにはいられなかった。
「桐谷先輩」
「な、なんだよ?」
新しい住まいのある
名前を呼ばれ一瞬ドキッとしたが、そこは悟らせないようにした。
「どうしてあなたはこの仕事をしているのですか?正義の味方になりたいのですか? それとも己の力を見せつけるためですか?」
「いや、どうしたんだ急に?別に深い理由があるわけではねぇよ」
何を言うかと思えば、珍妙なことを尋ねてきたのだった。
かなり食い気味に聞いてきており、雲人にとって反応に困るところがある。
しかし彼の理由に気に食わなかったのか、不快感を感じているような顔をしていた。
「深い理由がないのに、この仕事してるんですか?そんな適当な事で務まるんですか?」
「そんなこと言われても…大体、君みたいな新人の少女に言われる筋合いはないぞ」
なぜここまで言われなくてはならないのか。それも自分よりも歳下のガキに、と雲人は心の中で思っていた。
流石に口に出して言うと大人気ないと思いそこは思いとどまった。
「失礼ですが、私は22歳です立派成人です」
「え?俺と同い年なの?」
まさか同い年なとは思わず呆気にとられていた。冴えない自分に比べてなんと若々しくてフレッシュなのだろうか。
そう思うと雲人は自分の見た目の老け具合に少し悲しさも覚えた。
「私は大学機関を出ているので、あなたと違って」
この言葉を聞いた時に雲人は無性に腹が立ってきた。なぜなら、この《ラスト・エデン》において大学機関を卒業した場合一流企業などから引っ張りだこで、将来は約束されるのである。
そのため、大学機関出の人間というのはいわゆるエリートなのだ。
それに対して雲人は高卒という一般的な学歴である。
「はいはい。やっぱり大学機関出のエリート様は言うことが違いますね?よっ天才!」
貶されたことに対して、ムッとしていた雲人は反撃と言わんばかりの皮肉たっぷりの言葉を彼女にかけた。
「喧嘩をうっているのですか?」
「別に。ただ、この世の中生きていくのに学力や知能だけじゃどうしようもないってことだよ」
同い年とはいえ、雲人の方がこの職業は先輩という立場である。だからこそ社会というものを知っているが故に彼女に忠告をしてのだ。
彼女がそれに聞く耳を持つか別にして。
「ご心配なくあなたに守られるほど戦闘能力は皆無ではありませんから」
「そういう問題じゃねぇよ…」
何とも石頭というかプライドが高いというか、よく今までこのような性格でやってこれたなとある意味関心している雲人である。
せっかく綺麗な風貌をしていてもこれでは男とまともにいなかったのだろうと感じていた。
「何か今失礼なことを考えたでしょ?」
「いいや別に…それよりここら辺見たことあるな…」
二人が歩いているこの
そんな
「まてよ…この道って…ははっ。まさかな…」
何かとてつもなく嫌な予感がしていた。
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