機巧の魔術師篇

新たなる始まり

 かつて世界に《恐怖の大王》が空から現れた結果、破壊し尽くされ大陸の殆どは人が住めるような環境では無くなった。

 だからこそ作り出した。人々が安心して住める場所。

 それがこの人工大陸ラスト・エデンである。

 文献として残された《旧人類》の技術を学びそして生み出された。

 ほんの数百年あまりで急激な成長をした《新人類》。

 暮らしなどは、《旧人類》が滅亡するまでとほぼ同じ、いやむしろそれすらも上回っている。




 高層ビルの立ち並ぶ街。車も忙しなく走り、スーツを着て仕事に行く者もいれば、友達と他愛もない世間話をして遊びに行く者。恋人と周りの目を気にせずイチャイチャしながら歩く者。

 この都市には様々な人間がいる。誰もこの世界が一度は滅び、新たに生まれ変わった世界だと思うだろうか?

 彼らには、過去にいた人類のことなど興味はない。

 今という現実を生きる。そういうものである。

 しかし彼は違った。彼は《旧人類》がどのようにして滅んでいったのか興味を持っていた。

《恐怖の大王》とは一体どんなものなのか。

 彼は黒い髪に紅い瞳を持つ身長176cmの若い容姿を持っていた。

《旧人類》のどこかの国の軍隊が着ていた軍服のような制服に身をこなし、黒い革の鞄を持っていた。

 彼は腕時計型の端末で新聞記事を読んでいた。


「近々オープン 《旧人類》歴史博物館の王ねぇ…」


 大々的に見出しに書かれた記事をまじまじと見つめていた。

 彼はこの記事に少々興味を持っていた。最もそれは他に面白そうな記事がなかったことにもよるのだが。

 日差しの強いこの地で行き交う度に誰かにぶつかりそうであるが、見事にかわしていく。それも、全く違和感なく人々の流れに溶け込んで。


 この街、いやこの島は歪だ。東と西で対極する存在が向き合うようにしてあるから。

《ラスト・エデン》の西側には《魔法》のための区画が存在し、東側には《科学》のための区画が存在する。

 今現在彼がいる場所は東側イーストブロックの市街地である。街並みはどことなく無機質な感じがしており、色彩には乏しい。

 高層ビルが立ち並び、様々な会社のオフィスビルもしくは研究所らしきものがいくつも存在する。


「ほんと面白げのないところだな…」


 軽く欠伸をしつつその面白みのない無機質な街並みを重そうな足取りで歩いていった。

 しばらく歩いていくと公共交通機関であるモノレールに乗り込みこの大陸の核とも言えるべき場所、中心街セントラルへと向かっていった。

 中心街セントラルへ近づけば近づくほどその賑やかさは先程の東側イーストブロックの比ではない。


 この大陸の一番中心に立つ大きな城のようにも要塞のようにも見える一際大きい高層ビルが2つ存在した。

その建物はシルエットだけを見れば巨大な樹木のようにも思えるものである。

 この建物は果たしてどのような意味をなしているのか、こと大陸を統べる機関の根城、もしくは象徴とでも言うべきか。

 彼はこの建物近くの駅で降りていき、このビルの方へと足を運んでいった。












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