覚悟 二
悲鳴がうるさい。
とりあえず振り切って逃げたが、声が追いかけてくる。折角取ったものもわざわざ投げ返してやったというのに、うるさい奴だ。
いざとなったら切り捨てるまでだが、それは最後の手段だ。
とにかくひた走っていたら突然、何かにつまずいてすっ
急いで顔を上げ、上体を
「何やったかしらないけど、大人しくつかまっとけば?」
「貴様ッ…!」
「ほら、来た」
やはり
秋刀魚女と、
逃げるかと一瞬だけ迷ったが、こうなったら最後の手段と、刀に手をのばす。
これだけは、どれだけ食い詰めても、手放さずにいた。たった一つの、俺の
ところが、まずははじめの犠牲と思った鮃男は、すうと、目を細めた。それだけで空気が変わり、ぞくりと、背筋が冷たくなった。
「それに手をかけるなら、切り捨てられても文句がないってことだ、って取るけど、いい?」
腹の立つくらいに穏やかな調子は、変わらない。
それなのに、刀を抜けばそれで最期だと、到底太刀打ちのできない相手が牙を
体が、震えた。
畜生。なんて日だ。なんて、奴だ。
「…くっ!」
手を放し、土を握り締める。こんな奴に向かって刀を抜くなんて、死にたいと言うようなものだ。
俺は、それすらもわからない莫迦ではない。そして、死にたくは、ない。
そうすると、
俺は、わらわらとやってきた鯵たちに、
男は、俺に逃げる気がないと見て取ると、鯵たちに捕まるのを最後までは見届けずに、身を
そうして、一言呟いたのが、耳に届いた。
「さあ、団子ダンゴ」
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