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 彼と初めて会ったのは、というより彼に気付いたのは初出社の日だった。

 人混みが苦手な私は、少しでも避けようと最前列の車両に乗り込んだ。

 それでもこの時間帯は人が多くて座れなかった。

 これがあと何年も続くのか。そう思うと少し嫌になった。

 そんな時。

 緊張して周りをきょろきょろと見回していたら、ふと目に付いたのが彼だった。

 みんながスマホを見てる。大人も子供もみんな。

 でも、彼は違った。最近は珍しくなった文庫本をじっと見つめていた。

 本が好きなんだ。

 ただそうとだけ思った。

 それが始まりだった。

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