恋愛通勤

古城エフ

1-1

 ああ、今日もいる。

 電車の一番前の車両。その一番後ろの席。

 いつもの席で彼は文庫本を読んでいた。

 もう高校三年間も終わりかな。

 そんなことを思いながら私は横目で彼を見ていた。

 彼はいつも静かに本を読んでいる。

 前髪の間から穏やかな瞳を少しずつ動かしていた。

 背は私より少し高い。学ラン服と紺色のマフラーが似合っていた。

 黒縁の眼鏡はこの三年で一度デザインが変わっていた。

 こんな事でも私にとっては大事な情報だ。

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