16#風船を愛でるカモメ
「ふぅ・・・!あの湖でぶっ通しにゴム風船を膨らましまくってまだ、ほっぺたがジンジン痛むわ。肺も疲れたし。
でも、白鳥の女王様は素敵だったなあ・・・
絶世の美貌だなあ・・・俺がハクチョウだったらつがいにしたいレベルだったなあ・・・
あれほど、華麗にゴム風船を嘴で膨らませられるハクチョウはいないしな・・・
あー!頭が風船のことだらけで風船なんかもう見たくないレベルだ!」
カラスのカーキチとカースケとの約束で、あの白鳥の湖に行ってきて、砂浜に戻ってきたセグロカモメのトフミは、
ぽわーん・・・
と、上の空で悠々と海岸の海風を翼に受けて飛んでいた。
「ん?」
ふうわり・・・
「風船?」
カモメのトフミは、海風に煽られて飛んでいる真っ赤なゴムの風船を見つけた。
「んもう!風船なんか見たくないのにぃ!」
トフミは、一目散にそのフワフワ飛んでいる風船に向かって、捕まえに飛んでいった。
パァーン!
そこに、小さい白い影が浮いている風船を掠めてパンクさせた。
「えーーーん!風船が割れちゃったあー!」
カモメのトフミは、思わず泣いてしまった。
「ははっ!めんごめんご!よお!風船カモメちゃん!」
コアジサシのリーヴァは、割った赤い風船の破片を加えて、翼で目頭を押さえて泣きじゃくるカモメのトフミの目の前に降り立った。
「風船カモメのトフミさん!君、えらいね!海からの漂白してきた風船を拾ってるんだって?
『風船アジサシ倶楽部』があればいいんだけどなあ!
泣くなよ、風船カモメちゃん!」
コアジサシのリーヴァは、カモメのトフミの嘴の鼻の孔に、割れた風船の破片をうりうりと突っ込んだ。
ムズムズムズムズ・・・
「へっぷしーーーっ!!」
カモメのトフミは、思わず大きくくしゃみをした。
「うへえ!凄い肺活量!」
「そう?今さっき、風船をいっぱい膨らませて肺を鍛えてきたからよお!」
カモメのトフミは、おどけてコアジサシのリーヴァの顔に吐息をフーーッ!!と吹き掛けた。
「げほっ!げほっ!鳥臭い!!」
「君だって鳥じゃん!」
カモメのトフミは、割れた風船をコアジサシのリーヴァから奪い返した。
「さあーて、この割れた風船もともと俺が・・・」
「って、向こうの海岸で、
『何で人間は風船を飛ばすんだ!!』
って、大声で叫んでたじゃん!
めっきり、風船カモメのトフミさんが、風船が大嫌いになったのかと・・・!」
「あの時はあの時!今は今!って、見てたのかよ!俺の一部始終!!」
「うん!僕は小屋のとこでトフミさん達が風船で遊ぶとこも居たし。」
「そうなの?」
「うん!」
コアジサシのリーヴァは、気前よく頷いた。
「うはっ!」
「でさあ、僕も海岸の漂泊風船探しに僕も参加させて!」
「ええ?君、コアジサシじゃん!」
「うん!だから参加するの!『独り風船アジサシ倶楽部』としてなあ。
よく、風船が堕ちてる場所の穴場探しは僕、知ってるからアジサシ・・・じゃなくて、アシスト」
「ちょっ・・・ちょっ・・・」
カモメのトフミは慌てた。
バサバサッ!!バサバサッ!!
そこに、カモメが3羽やって来た。
「よっ!トフミ!」
「あっ!どーも!久しぶり!」
「最近はめっきり風船を見かけなくなったねえ!」
オオセグロカモメのインディは、トフミの翼をポンポンと翼で叩いた。
「でも、俺今さっき!ほれ!」
と、トフミはインディに割れた赤い風船を見せた。
「うーん!割れちゃったやつか。ラッキーだなあ。」
ウミネコのプリテンダは、トフミに渡された割れた赤い風船を嘴にくわえた。
「あ、アジサシさん!あたい達はあんたに、漂泊風船が集まる場所を知ってるって言われて集まったんだけど、どこよ?」
ユリカモメのアディユは、コアジサシのリーヴァに伺った。
「さあ、どこでしょ?」
コアジサシのリーヴァは、嘴で口笛を吹いておどけた。
ずり・・・
ずり・・・
「ああーーーっ!アジサシさんの足元!!」
遅れてやって来た、ホイグリンカモメのフィーバが声をあげた。
「しまった!」
更にやって来たシロカモメのサンキュと、セグロカモメのクオリアとスタディ、そしてオオセグロカモメのガノサンが、
ガサガサガサガサガサガサ・・・
と、コアジサシのリーヴァの足元を嘴で掘りまくった。
「わーい!こんなにゴム風船がいっぱい!」
「マイラー風船もある!!」
『風船カモメ倶楽部』のカモメ達は、わいのわいのと、砂浜からどんどん出てきた萎んだ風船に群がった。
「こ、これは・・・この砂浜に漂白してきて・・・綺麗だから・・・どんどん拾って・・・僕のこ、コレクション・・・だよ!
よ、よかったら・・・全部あ、あげるよ!」
「いいの?全部!!」
ホイグリンカモメのフィーバは、目を爛々と輝かせた。
「でも、紐はつけっぱなしだなあ。『あの小屋』に持っていくには、全部外さなきゃ!!
よしー!全部アジサシさんにやってもらおー!」
シロカモメのサンキュはニヤニヤと、困惑するコアジサシのリーヴァを見詰めた。
「ええーっ!」
「冗談だよぉーー!」
サンキュは、おどけて舌を出した。
ガサガサガサガサガサガサガサガサ・・・
「???」
コアジサシのリーヴァは、何カモメはしてんだ?と風船を埋めた穴を覗こうとしたら・・・
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!!
と、『風船カモメ倶楽部』の9羽のカモメ達が一斉にコアジサシのリーヴァに振り向いて、嘴でゴム風船に息を吹き込んで膨らませ始めた。
「わー!わー!僕の風船が割れちゃう!!わーーーーわーーーー!!!割れちゃう!!!!これ以上!!!!わーーーーー!!!」
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!!
「うああん!大きく膨らますのやっぱ怖いよお!」
「こん位膨らませばいいでしょ!」
「もう、パンパン!!」
「何だか、洋梨みたいになっちゃった!」
「みんなーーっ!風船の吹き口を押さえたぁ?」
「おっけーぼくじょう!」
「じゃあ、いくでぇーーーー!」
「いっせえーーーの!」
「せーーーっ!」
ぷしゅーーーーーーーーーーーーっ!!
ぶおおおおおおおおおおーーーーーっ!!
しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる・・・
パンパンに膨らませた9つのゴム風船は、それぞれの『風船カモメ倶楽部』のカモメ達の吐息を、快晴の海の大空に吹き口から噴き出しながら、ロケットのように吹っ飛んでいった。
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