14#風船に助けられるカモメ
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
海岸には、大きな波が何度も何度も打ち寄せていた。
砂浜には、一羽のカモメがうずくまっていた。
どどーーーーーーん!!
ざざーーーーーん!!
どどーーーーーーん!!
ざざーーーーーん!!
どどーーーーーーん!!
ざっぱーーーーーーーーーん!!
「ぶうーーーっ!」
大波が、うずくまっていたカモメのトフミに、もろにかかって目が覚めた。
「ぶっぷぅーーーーっ・・・海にさらわれると思ったぜ・・・」
セグロカモメのトフミは、辺りを見回した。
夜明けを告げる朝焼けが、海面に照らし出された。
「あれ?」
トフミは気づいた。
「ない?!!いない!?」
隣にいた、あの風船に絡んで死んだカモメの亡骸がいつのまにか居なくなっていた。
「どうしたの?生き返ったの?」
どどーーーーーーん!!
ざっぱーーーーーーーーーん!!
「ぶうーーーっ!また波をかぶったぁーーーー!!」
トフミはもう一度隣を確かめた。
「まさか・・・?!!まさか・・・生き返ったのか?まさかな・・・。」
カモメのトフミは、背伸びをして起き上がろうとした。
ぐうっ!!
「うっ!」
何かがひっぱった。
「なにぃ!?」
カモメのトフミの顔はみるみるうちに青ざめた。
体にあの、隣に今さっきまで、横たわっていたカモメの亡骸に絡んでいた風船の紐が絡んでいたのだ。
「しまったーーーーーっ!」
カモメのトフミは、何とか風船の紐を取ろうとして暴れた。
「このっ!このっ!このっ!このっ!」
さっ・・・
風船の紐が、トフミの体からするりと抜けた。
「ふう・・・・・・助かった・・・」
カモメのトフミは、深い溜め息をついた。
海岸には風船の紐がたなびいていた。
紐にそれぞれ付けられていた萎んでいた風船は、砂浜に埋もれていた。
「やっぱり・・・あいつは・・・えっ?!まさか!!」
あのカモメの亡骸は、波にさらわれて海に流されたことを知った。
丁度、何かが波に襲われた跡がくっきり残っていたのだ。
そしてカモメのトフミは、何故自分が波が来ても助かったかも知った。
「もし、俺の体に風船が絡んでなければ、あのカモメの死体と一緒に海の藻屑と消えてたかもな・・・
そうさ!俺は風船に助けられたんだ!
そして死んだカモメの遺志が、風船に取り込まれて・・・
『お前は、一緒にあの世に来ては行 けない!』と・・・
俺は、あのカモメから命を貰ったんだ!
解ったぜ・・・!俺はお前の分まで生きるぜ・・・!
お前の命を奪ったこの風船どもと共にな・・・!」
カモメのトフミはそう言うと、砂浜に埋もれた萎んだ風船の束を、紐を嘴で引っ張って取り出した。
「よぉっ!」
ズボッ!!
カモメのトフミは尻餅をついた。
砂浜の泥まみれのトフミは、風船の紐をくわえ、ゴミ捨て場に向かって飛んでいった。
「あっ!ここがいい。」
カモメのトフミは、漁港の海産物市場の片隅のゴミ捨て場に降り立ち、風船から紐を嘴と鰭脚で引っ張って取り除いた。
ぷちっ!ぷちっ!ぷちっ!ぷちっ!ぷちっ!・・・
「よし!全部取れたぞ!」
カモメのトフミは、萎んだ風船をくわえると、突然衝動に駆られた。
「この風船・・・『風船カモメ倶楽部』に持っていかないで、俺が膨らませて割って葬っちゃおうか?
あのカモメを死なせた風船を、弔いに・・・」
カモメのトフミは、紐から取り除いた風船を全部嘴にくわえると、もと来た海岸に戻ろうとした。
その時・・・
「よお!トフミさん!ここで会うとは奇遇だな!」
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