8#『カモメ風船倶楽部』とカモメ
「こいつら、まだ飛ぶのか。」
セグロカモメのトフミは、割れた漂泊ゴミの風船を持ち去った『カモメ風船倶楽部』のカモメ達を追跡していた。
「あれ?まだ飛ぶのか。」
「あれ?まだなの?」
やがて・・・
「ふう・・・ふう・・・翼が疲れた・・・」
カモメのトフミは、余りにも『カモメ風船倶楽部』のメンバー達が余りにも長距離を飛ぶので、へとへとになった。
やがて・・・
ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!
『カモメ風船倶楽部』のカモメ達は、お互い鳴き交わすと、高度を下げ、そのまま降り立った。
「着いたぞぉーー!」
『カモメ風船倶楽部』の一羽は、海沿いの古ぼけた小屋の前で声をかけた。
「あっ!収穫は?」
小屋の中から、片足を無くしたの一羽のカモメが出てきた。
「はーい!この通り!」
『カモメ風船倶楽部』のカモメ達は、
がばーっ!
と嘴から、割れた風船を片足のカモメの前に落とした。
「おっ!こんなにいっぱい!今、丁度割れた風船をいつも欲しがってやって来るオオワシさんとカモさんが来てるんだ!」
「毎度ー!オオワシのリックが参りましたぁ!」
「毎回どうもー!マガモのマガークも来ましたぁ!」
「あーーっ!オオワシさん!マガモさん!直に逢うのは初めてだぁ!
やあ!こんにちはー!俺はセグロカモメのトフミでーす!『放浪カモメ』やってまーす!」
そこに、『カモメ風船倶楽部』を追いかけてきた、カモメのトフミがオオワシとマガモに挨拶をやりにしゃしゃり出てきた。
「お前はいきなり何だ!」
片足のカモメが、乱入してきたトフミに食って掛かってきた。
「つい・・・そこに、オオワシとマガモがいたから、滅多に逢わないから興奮しちゃって・・・すいません!」
カモメのトフミは、そう言い訳をして何度も会釈をした。
「いいんだよ!カモメのトフミさん!さぁ、みんなも自己紹介は?」
オオワシのリックは、『カモメ風船倶楽部』達にそう振った。
「俺は、『カモメ風船倶楽部』を立ち上げた、片足のスターオだ。トフミさん、あんたがこの割れた風船を浜辺から集めたんだって?」
「え、ええ!元々漂泊ゴミの萎んでたゴム風船です!それを俺が息を入れて膨らませて・・・」
「おお!膨らませてたのか!気に入った!お前さんも『カモメ風船倶楽部』に入らんかね?」
「へっ・・・?」
カモメのトフミは、いきなり言われたので、頭が真っ白になった。
・・・だって俺、『放浪カモメ』だぜ・・・?!
・・・ここで留まれ!とでも言うのかい・・・?!
「後で、『試験』な。それから、俺と『風船膨らませ対決』な!」
「?」
カモメのトフミは訳が分からなくなった。
「じゃあ、俺から自己紹介な。俺は、オオセグロカモメのインディな!
今さっきは、蹴っ飛ばしてごめんな!」
「僕は、ホイグリンカモメのフィーバ!」
「あたしは、シロカモメのサンキュ!」
「わいは、セグロカモメのクオリアや!」
「あたいは、ユリカモメのアディユよ!」
「おら、オオセグロカモメのガノサンだ!」
「あちきは、セグロカモメのスタディだす!」
「わては、ウミネコのプリテンダでないかい?」
「ほえー」
セグロカモメのトフミは、『風船カモメ倶楽部』の怱々たる面々をまじまじと見詰めていた。
「トフミさん、トフミさん!セグロカモメのトフミさん!」
「はっ!すいません!す、スターオさん!つい・・・」
「トフミさん、このメンバーはお前さんと同じ『放浪カモメ』や、群れで生活ながらのカモメもいるから、ここに留まる訳じゃないんだぜ。
この他に全国には『風船カモメ倶楽部』のメンバーはいるんだぜ!
全国から津々浦々、『風船カモメ倶楽部』が漂泊風船を持ち寄って来るんだぜ!
で、トフミさんも入らないかい?『風船カモメ倶楽部』に。」
トフミは、スターオの誘いに困った顔をした。
「スターオさん?ちょっと聞いていいかなあ?」
「なあに?」
「『風船カモメ倶楽部』に入って、何か特典とかあるの?特典とか。」
トフミは、ニヤニヤしながらスターオに訊ねた。
「あるよ!まず、皆が持ってきた風船は、そこに居るオオワシのリックさんと、マガモのマガークさんが、遥か彼方の湖の風船が大好きな、白鳥の女王様に献上されることになるんだけど・・・」
「は、白鳥さん?」
カモメのトフミは、興奮で鼻息を荒げてオオワシとマガモに迫った。
「と、トフミさんとやら。あの白鳥様は綺麗だぜー!可愛いぜー!どうだ?逢いに行けるんだぜ!」 「そっ!『風船カモメ倶楽部』希望者は年に2度の『白鳥の湖ツアー』に参加出来まーす!」
「うん!いくいく!」
トフミは、更にオオワシとマガモに迫ってきた。
「か、カモメさん!そんなに興奮しないで!」
オオワシとマガモは、顔をニヤつかせるカモメのトフミを必死に宥めた。
「トフミさん!ひとの話を聞いてよ!」
カモメのスターオは、興奮が収まらないトフミに注意した。
「あ、すいません!後は、何か?」
「あるよ!『風船カモメ倶楽部』同士と、美味しそうな魚が入れ食いな場所の情報交換出来るし、年一回の『風船カモメ倶楽部』地域対抗風船バレー大会とか、風船割り大会とか。全国カモメ風船の集いとか。特典はメジロ押しだよ!」
「は、入る!」
セグロカモメのトフミは、ついつい『風船カモメ倶楽部』の勧誘に乗ってしまった。
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