7#カモメを追いかけるカモメ

 せっかく嘴で膨らませて『花畑』にしてみた漂泊ゴミだったいっぱいの風船を、通りすがりのコアジサシに割られたセグロカモメのトフミは、嘴の鼻でかき集めた割れた風船の破片の伸びきったゴムの匂いを嗅ぎ、ぼーっと佇んでいた。


 


 ・・・ゴム風船・・・




 ・・・ゴム風船・・・




 ・・・割れちゃって『ゴミ風船』になっちゃった・・・




 ・・・悲しいなあ・・・




 ・・・虚しいなあ・・・




 すーーっ・・・


 ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!


 遠くから、カモメの群れがトフミのいる砂浜に向かってきた。


 ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!!ぎゃあ!


 「おーーーい!そこのカモメ君!その割れた風船全部よこしな!」


 すーーっ!


 カモメの群れは、一斉にカモメのトフミの側に降り立った。


 ガン!


 「いてっ!」ドタッ!


 最後に降り立ったカモメの鰭脚が、カモメのトフミの後頭部を直撃して、トフミはぶっ倒れた。


 「おいおい!痛てえな!ちゃんと見て着陸しろよな!」


 後頭部を片脚で掻きながら、カモメのトフミは怒った。


 「いやあ、ごめんごめん!今さっきから上空で見守ってたんだけど、みんな漂泊ゴミの風船なの?凄いわ。壮観だったよ!風船の『花壇』みたいで。

 あっ!申し遅れた!俺らは『カモメ風船倶楽部』のメンバーだ。

 訳あって、この割れた風船を全部貰うぜ!みんなぁー!」


 「はぁーーーい!」


 ごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょ


 『カモメ風船倶楽部』のカモメ達は、徐にトフミの側に散らばってる割れた風船をくわえ、次々と飛び去っていった。


 「あーっ!まだ持ってるな!よこせ!こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!」


 今さっき、トフミを脚で蹴飛ばしたカモメは、トフミの翼の脇を嘴でくすぐった。


 「きゃはははははは!くすぐったい!!」


 ポロッ・・・


 「やったあ!もーらい!」


 トフミをくすぐったカモメは、思わずトフミが落っことした割れた風船を嘴にくわえると、ばっ!と飛び去っていった。


「あっー!待てぇーーーーっ!」


 カモメのトフミは、割れた漂泊風船を持ち去ったカモメ達を追い掛けて、海岸を飛び去っていった。

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