6#風船を割られるカモメ

 しゅっ!


 パァーン!




 「ひゃっ!」


 カモメのトフミは、びっくりした。


 「な、何するんだ!」


 その影・・・コアジサシのリーヴァは、ニヤニヤしながら、風船の『花畑』の上空をホバリングしていた。


 「だって、この風船は元々浜辺に打ち上げられた『ゴミ』じゃん!別に割っちゃったっていいじゃん!それっ!」


 ひゅん!


 パァーン!


 またコアジサシのリーヴァは、風船の上に急降下して、鋭い嘴を突っついてパンクさせた。


 「わぁーっ!『ゴミ』は『ゴミ』でも、俺が膨らませた風船だぞぉー!

 んもうーーっ割らないでよぉー!」


 カモメのトフミは涙目だ。


 「やだよーん!」


 コアジサシのリーヴァは、またホバリングして、今度は大きく膨れた風船に狙いを定め・・・


 バァーン!


 と、急降下して嘴で割った。


 「あひゃあ!」


 「うーん!効くぜ!この風船を割る瞬間の嘴の感触!そして、ドデカイ破裂音!」


 コアジサシのリーヴァは、更に興奮してきた。


 リーヴァはまた上空をホバリングした。


 「さぁーーーーて!どーれーを割っちゃおうかなぁーー!」


 「うわーーーっ割らないでぇ!」


 カモメのトフミは、風船の『花壇』に被さって翼を拡げて隠した。


 パァーン!パァーン!


 「あ!」


 「ばーか!自分の体の重みで風船をパンクさせてやんの!それっ!」


 ひゅん!


 パァーン!


 「ははっ!もういっちょ!」


 コアジサシのリーヴァはまたホバリング。


 ひゅん!


 パァーン!


 「うわーーーっ!」


 カモメのトフミは、どんどんと風船のくしゃくしゃした破片と化していく、風船『花壇』の上を徘徊して、またコアジサシのリーヴァに割られないように、翼でカバーした。


 「そんなことやったって無駄だよん!」


 今度は、てくてくとトフミが翼でカバーする下へ歩くと、


 ぐさっ!


 と、嘴を風船の表面に突き刺した。


 パァーン!


 「うわっ!」


 ぐさっ!


 ぷしゅーーー!しおしお・・・「あっ!萎んじゃった!」


 ぐさっ!


 パァーン!


 「ぎゃっ!」


 ・・・・・・


 「よっしゃ!最後の1個!」


 コアジサシのリーヴァはニヤニヤしながら、必死に翼で抱き抱えて喚くカモメのトフミの回りをテクテクと歩いた。


 「ねぇー!カモメさん!」


 「なあに?」


 「これ全部、お前さんが膨らましたんでしょ?」


 「だから何?」


 「息が鳥臭ーい!」


 「何ぃ!」


 「隙ありっ!」


 ぐさっ!


 パァーン!


 「・・・うっ・・・うっ・・・うわああああああん!風船が割れちゃったぁーーー!風船が割れちゃったぁーーー!」


 カモメのトフミはショックの余り、突然大声で泣きわめいた。


 「割れちゃったぁーーーー!!割れちゃったぁーーーー!!」


 カモメのトフミは、コアジサシのリーヴァに割られた風船の破片をかき集めて、顔に押しつけて泣きじゃくった。


 「カモメさん、風船が割れた位で、そんなに泣くなよぉ!困ったなあ・・・あっ!」


 コアジサシのリーヴァは、海風にコロコロ転がる、黄色い風船を見つけた。


 それは、カモメのトフミが膨らまして突いて遊んだ黄色い風船だった。


 「はい!それもお前さんの風船でしょ?」

 

 コアジサシのリーヴァは、吹き口の留め具を嘴にくわえると、まだ泣くのを止めないカモメのトフミのとこへ持っていった。


 「あ、ありがとう!アジサシさん!」


 カモメのトフミは、涙でなきはらした顔を上げて会釈をした。


 「じゃあねー!」


 コアジサシのリーヴァは、そのまま風に乗って飛び去って行った。


 「バイバーイ!・・・ん?」


 「隙ありー!」


 去っていった筈のコアジサシのリーヴァは、カモメのトフミの上空をホバリングをして、いきなり急降下してきた。


 ひゅん!


 パァーン!


 「なっ!」


 「ちなみに、僕は風船嫌いだよ!風船の紐絡んで事故っちゃうからねえ!バイバーイ!」


 コアジサシのリーヴァは、そう言い残すと、どこかへもとなく風に乗って去っていった。


 「・・・・・・」


 割れてボロキレのようにグシャグシャになった、黄色い風船を翼に引っ付けたままのカモメのトフミは、空を見上げて茫然としていた。



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