カモメのトフミと風船

4#風船を膨らますカモメ

　セグロカモメのトフミは、ゴムが伸び萎みきったオレンジ色の風船の吹き口に、嘴を突っ込んだ。

　トフミは渾身の力を込めて、息を思いっきり吸い込み、風船の吹き口をあてがった。

　カモメのトフミは頬っぺたをぷくっと膨らませ、吐息をいれて膨らませた。

　ぷぅーーーーーーーっ！

　ぷぅーーーーーーーっ！

　しゅーっ！

　ぜえ・・・ぜえ・・・

　・・・うーん・・・嘴に風船をあてがっても、風船から空気が漏れちゃう。

　あっ！そうだ・・・！

　カモメのトフミは、今度は風船の吹き口を嘴にくわえて、息を思いっきり吹き込んでみた。

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷくーっ・・・

　「おっ！」

　カモメのトフミは、肺にいっぱい潮風を

　すぅーーーーーーーっ！

　と吸い込み、風船の吹き口を嘴にくわえ、頬っぺたをパンパンに膨らませて息を思いっきり吹き込んだ。

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーー・・・

　パァン!!

　「ひゃあ！」

　突然パンクした風船の破裂音で、カモメのトフミは思わずビックリして飛び上がった。

　「うーん・・・ゴムが伸びきってるからなあ。これらの風船は、膨らますとすぐ割れちゃうんだよな。

　この前、飛んでたときに見た、洋梨を逆にしたみたいなパンパンに膨らましてたいんだけどなあ・・・」

　カモメのトフミはそう言うと、トフミのよだれと砂で汚れた割れた風船の破片を鰭脚で引き延ばしてみた。

　「本当、風船を膨らますのは難しいなあ・・・よし！もういっちょ!!」

　カモメのトフミは、白い風船の吹き口の留め具を嘴と鰭脚で外すと、また息を思いっきり吸い込んだ。

　トフミは、頬っぺたを膨らませてドキドキした。

　・・・また膨らませすぎたら、パンクしそうだなあ。今度は息を八分目に入れよう。

　カモメのトフミは、白い風船の吹き口を嘴にくわえて、息をゆっくり吹き込んで膨らました。

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　「このくらい膨らめばいいな。」

　カモメのトフミは、膨らませた風船の空気が盛れないように、嘴と鰭脚でぎゅっ！と風船の吹き口に留め具をはめた。

　「さぁ、次はどれを膨らまそうかなあ・・・！」

　カモメのトフミは、萎んだ水色の風船を取り出して、吹き口から栓を取り外すと、また息を思いっきり吸い込んで、嘴で膨らませた。

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　・・・・・･

　その後も、いっぱいあった漂泊してきた萎んだ風船の吹き口の栓を嘴や鰭脚で外したり、結び目を嘴や鰭脚で解き、吹き口から嘴で、どんどんとカモメのトフミが吐息を入れてぷー！ぷー！と膨らませた。

　こうして、風船におおらかな膨らみが戻っていった。

　海風で飛ばないように、栓をしてある吹き口の部分を砂浜に埋めた風船は、まるで海岸を風船の花畑のように華やいでいた。

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　・・・この風船で最後だ・・・

　ぷしゅーーっ！

　「あっ！嘴開いちゃった！萎んだ萎んだゴム伸びる！ふーーー！」　

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　ぷぅーーーーーーーっ!!

　「よし！これは大きく膨らんだのはいいけど・・・割れちゃったのの栓は他の風船に使っちゃったし・・・

　仕方ないから、あの石ころを吹き口に詰めりゃいいな。」

　ぎゅっ！

　「ふうう・・・肺が疲れたぁーーー!!ほっぺたがジンジンするぅーーー!!」

　セグロカモメのトフミは、海岸に並べた真昼の太陽に輝くトフミの吐息が入った、カラフルな風船の『花畑』をうっとりと見とれていた。

　・・・ゴム・・・風船・・・