夢
夢を見る。
それはいつも決まって、同じ男が出てくるのだ。
男は、扉を開けた私に向かって、口の端を上げて
蝋燭の光だけに切り取られた空間。
男は、とても楽しそうに笑う。そして、絶望的な事を言う。
――毒を飲んだんだ そろそろ効いてくるかな
足元に転がる
――ああ 血が止まらないねえ
血に
――僕を 殺してくれるかい?
優しい瞳で、男は死を望む。繰り返される、果てしない行為。
願望といえば、そうかもしれない。
何もしない日々は、無為だけが溜まって。つらいよりも
記憶といえば、そうかもしれない。
亡くした記憶は、戻ることがなくて。何一つ確かなものが判らない。
男は笑っている。
口の端を上げて。声を立てて。大きく口を開けて。酷く明るく。
それは、
――僕を 殺してくれ
ただ独り、残される。
そんな 夢を見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます