第2話 夜に誘われし白き花
「ボス、先日の暗殺依頼の件で報告があります」
キル四天王、統平白夜は昨日の夜の出来事について報告をするためにキル本拠地、最上階に居た。
銀の指輪が2つ付いたネックレスが、太陽の光を反射してキラキラと光っていた。
「お~、白夜か入っていいぞ~」
「失礼します」
約12畳ほどの部屋にアンティーク風の机や椅子、時計が並び、カチコチと時を刻んでいる。
真正面の長机に肘を付き、ダーツの矢を投げながら答える男性は、
キルのボス、夕月尭である。
「何か分かったか~?」
またも、ダーツの矢を投げながら答える。
「‥‥ターゲットの娘、かなりの才能があります、自然に養われたものとは思えません。」
「ほう、それで?」
「提案ですがうちに入れてはどうかと、必ずしも実力を発揮します。」
タンッ
ダーツ盤に矢が刺さる音が、大きく響いた。
不意に尭がニヤッと笑った、ダーツの矢は見事真ん中に的中していた。
「よし白夜、そいつを連れて来い、テストしてやる」
「了解」
部屋から出た白夜は、真っ先に寮へと向かった。
キルは、地下一階に情報室、一階に面談室、二階が寮になっていて、
キルに入った際にはそこに住むことも出来る。
白夜も、キルに入った当時に寮に住むことにした。
元々着ていたTシャツの上に、赤の袖無しパーカーを羽織る。
フードを被り、黒のスニーカーを履いて町に出た。
町に出ると、フードを被った白夜を人々は物珍しそうに見た。
(あ"~、視線が痛ェ‥‥マスクにしときゃよかったか‥)
そう考えながらも足を進める。
数分もしないうちに目的の建物が見えてきた。
門を潜ると鉄の臭いが鼻をさした。
(死体処理はまだか‥‥まあ、当たり前っちゃあ当たり前だよな)
ドアノブに手をかけたその瞬間、白夜の喉に冷たい物が押し当てられた。
「‥‥誰‥何の用‥‥」
口から紡がれたソプラノ声は、両親を殺したとは思えないほど、透き通っていて、淀みなかった。
「先ずは質問に答えるな、俺は統平白夜。お前の両親の取引先っつったら、分かるよな?」
「‥‥キル、この町の夜を異世界へと変えるマフィア‥‥」
「恐がるどころか、表情すら変えねぇのな。」
「マフィアが家に何の用‥‥?」
「無視かよ。単刀直入に言う、キルに入んねぇか?」
そう言うと彼女は大きな瞳を見開き、ポカンとした表情のまま固まってしまった。
腕の力が緩まった隙に抜け出す。
ハッとした表情を見せたが、やがて諦めたようにため息をついた。
「あの夜、たまたま俺が任務をする前にお前がターゲットを殺してるの見たんだ、」
「‥‥それで‥?」
ようやく口にした言葉は、警戒音を出していた。
「正直驚いた、お前には才能がある。普通では手に入れられない才能だ。」
「‥‥」
「改めて聞く、どうだ入ってみねぇか?誰もお前を否定したり何ざぁしねぇ。」
瞳が揺らぐ、迷っているようだった。
「‥‥僕は、両親を殺した。初めての筈なのに、体が一人でに動き出したんだ。もし、これを才能と呼ぶなら、僕はその才能を殺したりはしない。」
内心、ホッとしていた。
これでコイツが入んねぇなんて言ったら、
俺はどうなるか分かったもんじゃねぇしな。
「よし取り合えず拠点に向かうぞ、ついでに言っておくが試験がある。心構えはしておけよ。」
「分かった‥‥」
相変わらず無表情で、何を考えているか分からない。
そのまま、何も話すことは無いまま、拠点への道のりを歩いた。
拠点に着き、フードを取り、最上階にある執務室へ向かう。
コンコンッ
「ボス、連れてきました。」
「入れ」
「失礼します。」
心なしか、何時もより空気がピリッとしていた。
「先ずは、名前を伺おうか」
「‥赤野静音‥‥です」
彼女の声も、若干震えていた。
「よし、じゃあ赤野、今からテストの内容を説明をする。ルールは簡単、白夜と模擬戦を行い、成績から合格、不合格。そして、階級を決める。」
「分かりました。」
そして、訓練場へと移動する。
模擬戦に使われるのはゴムのナイフとペンキの入った特別使用の銃。
殺傷能力が0とは言え、何度やっても慣れなかった。
ましてや、自分が推薦した人間だ。これでボスの期待を裏切ったら、クビまでは行かなくても確実に降格する。
「よし、じゃあ始めるぞ~」
ボスのその一言で、白夜は全神経を研ぎ澄まし相手を睨みつける。
一方で静音は、特に何かするわけでもなくただ呆然と立ち尽くしていた。
不思議に思いながらも攻撃を仕掛ける。
この距離なら銃は簡単に目標地に弾丸を埋め込むだろう、だがその分回避される確率も高い。ここは慎重に接近戦に持ち込むべきだ。
ナイフを片手に前傾姿勢で走って行っても、静音は動かなかった。
瞬間、彼女が白夜が向かってきた方向に向かってスライディングしていく。
通り際に足首にナイフを掠らせる。
直ぐに方向転換をし、距離を取り
銃で撃ってくるのを、跳躍することで回避した。
同時に銃のトリガーを引く、見事に肩に命中している。
「‥‥遅い、‥‥」
彼女が全速力で走り、あっという間に白夜の後ろに回り込む。
(速いっ!?)
急いで防御体制をとったが間に合わず、ゴムナイフが突きつけられた。
「終了!」
「‥‥ありがとうございました。」
目の前で起きた出来事に頭がついて行かず、遅れて反応する。
「っ速いな、何かやってたのか?」
「‥‥何も」
「ナンパ中失礼する、結果を発表するな。」
ボスの何時もののりを軽くあしらい、結果を待った。
隣の静音の顔からも少しだけ、緊張の色が分かった。
「結果は、合格!階級は先ずは構成員だ、一通りの仕事は白夜にでも教えてもらえ。」
「了解しました、これからよろしくお願いします‥‥」
「ん、じゃあな」
それだけ言うと、ボスは訓練場から退いた。
こうして、赤野静音は見事キルに入ったのだった。
これから出会う×××には気づく予知もなかった。
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