マフィアの秘密事情
詩風 稀恋
第1話 花が乱れし紅の夜
とある家に少女が生まれた。
その子は先天性白皮症、通称アルビノとして生まれてきた。透き通った白い肌にサラサラの白髪、真っ赤な瞳がその事を強く確信させた。
2万人に1人という極めて稀な子供は好奇の目で見られることも少なくなかった‥‥。
「毎日毎日同じ事の繰り返し、どうしてこんなに退屈なのかな‥‥?」
部屋の中で1人呟いたのは赤野静音。
彼女の両親は完璧主義者で、そのためにアルビノで何事にも無関心な彼女を子供として扱うことは無かった。
彼女の澄んだ赤い瞳は、今にも泣き出しそうなほど、悲しい何かを映していた。
部屋からでると、鬼のような形相をした母の顔。
「遅い!何時だと思ってんの!?さっさと仕事しなさいよ!」
「‥‥すみません、」そう言うと舌打ちをして、足音を立てながら去って行った。
静音は、諦めたように行動する。
御飯を作って、洗濯物をする、掃除を終えたら速やかに部屋に戻る。
カチャッ‥‥
数分もしないうちに、外から鍵がかけられた。
「はぁ‥‥」
この生活は静音が小さい頃から変わらなかった。静音も最初は反抗したが、無駄だと言うことを悟り、諦めるようになってしまっていた。
特に何かあるわけでもない無機質な部屋に、時計の音が響く。
「世界って、どうなってるんだろう‥‥楽しいのかな、苦しいのかな‥‥」
そんな事を言っても、答えてくれる人は此処には居なかった。
ふいに怒鳴り声が聞こえた。
何事かと思って耳を澄ませば、両親が喧嘩をしていた。
いつもの事だと思っても、普段とは何処か緊張感が違かった。
「だから、言ったじゃない!!もっとちゃんと管理してってッ!」
叫んだ母の声には、怒りだけでなく焦燥感も混じっていた。
「うるさいッお前が俺の言う通りにしないからだ!!」
いつも冷酷な父でさえ、感情がコントロール出来ていなかった。
(何だ‥‥仕事の事か‥‥)
そう思った時、母の口から思わぬ言葉が飛び出した。
「どうするのよ!このままじゃ、私達マフィアに消されるわよッ!」
この言葉を聞くた静音は、獲物を見つけた蛇のように怪しげな笑みを見せた。
(おもしろい事見~つけたっ。)
夜、晩御飯を作る時に、静音はふらりと歩き出した。
右手に『銀の花』を隠して‥‥。
「お父様、お母様、お話があります」
そう告げると、案の上母は怒り出した。
「何言ってるの!この役立たず!夜ご飯の用意を忘れたの!!」
「落ち着け母さん、話とは何だ俺もお前なんかの話を聞けるほど良い人間じゃないんだ」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる父に、静音は笑顔で答えた。
「お父様、お母様、あなた方これからマフィアに消されるかもしれないのに随分脳天気ですね」
突然そんな事を口にした静音に、2人は動揺を隠せなかった。追い撃ちをかけるようにさらに続ける。
「僕は、貴方方のおかげで毎日退屈でした、でもこれで終わりです。」
静音は2人に向かって駆け出した。
まずは、足を狙って行動を抑え、腕を掴まれそうになったので、それを体制を低くすることで避ける。
掴もうとした腕は宙を掻き、空いた脇腹にナイフを刺す。
「まず、1人~」
楽しそうに言ったその言葉に後悔の念など無かった。
たじろいだ母の後ろに回り込み、頸動脈にナイフを突きつける。
「静音、止めてッごめんなさい!謝るから!悪かったわ!」
その言葉を聞いた静音は、母の耳元で囁いた。
「僕はね、綺麗事が1番嫌いなんだ。」
言葉の意味を悟った母が、顔を引き攣らせる。
「今まで、お疲れ様でした♪」
部屋一面に赤い花が咲き乱れた。
「何だあれは」
その時、窓の外でこの光景を見ていた者が1人、驚いたように呟いた。
そして口角を上げると、何事もなかったかのようにその人物は消えて行った。
彼女が救われるまで、もう少し。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます