9. まぼろしの世界に

 ――つながった……!

 やっと、その魂に辿り着くことができた。

 ジジの「賭け」、それは彼――ハウルの魂に語りかけることだ。

 そこに至るに、「この世界」の、とあるカラクリを見破ることが必要なのだった。

 なんていうことはない。これは。

 ――すべて、現実ではないのだ。

 それは、「お偉方」の造った設定で、リースたちはその手のひらの上で転がされていた、というもの。

 ヒントは、自分の記憶の綻び。

 その中には、覚えていないどころか、そんなことを体験した覚え自体がないことも多く。そんな部分に、「疑問」を当てはめたら。

 なんということもなく、そこから抜け出せた。



 カーバスにサナ、そして市場の者たちも。

 実際には存在していないのだろう。だからあの時、一瞬でリースへの態度が激変したのだ。

 だから、リースがあそこまで落ち込み、独りになるのは、お偉方の「仕組んだこと」であり、きっと想定通りなのだろう。

 なんと、残酷な。

 しかも、ジジがリースを探そうとしても、必ず何かしらの妨害があり、見つけることが叶わなかった。



 悩みに悩んだ末。

 リースではなく、ハウルの魂のほうを探した。

 そして、リースへの「次の罪」の仕掛けが始まっていることを知る。

 それには、「天」の奴らに怒りが湧き起こる。どこまで彼女を、追い込む気か、と。

 「それ」が発動されるよりも先に、ジジは行動した。

 まぼろしの世界での、ハウルの魂――ジルに、夢だと気づかせることにしたのだ。

 


 何度もなんども、言葉を重ねた。ジルの意識に入り込んでは、それに語りかける。

 そして。

 『もう、大切な人がいなくなるのは嫌なんじゃろう!?』

 ジルの中に確かに、ハウルの存在を思い出させることができた。

 一度それができれば、あとは彼も彼で、動くだろう。



 そして、次は。

 一番の問題、クローディアのことだった。

 どこにいるか、そもそも「いる」のかすら、現状では定かではないが。

 ――なに、わしの主、「千日魔女クローディア」が、そう簡単にいなくなる、なんてことはないじゃろうとも。

 そこは信じて疑わない、クローディア至上主義の老人精霊だった。


 役者たちは、動き始めた。

 ――さあ、真相へと歯車を廻そう。

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