4. おとぎ話と鈴の音に

 それは、魔女たちの間で密やかに囁かれる、「最初の魔女のおとぎ話」というらしい。

 ずいぶん前に、ジジから貰った書物を漁っていたところ、発掘したものだ。

 何の気なしに読み返す。

「…………?」

 なにか、違和感を感じて。

 不思議に思い、文字をなぞる。

 何度も、なんども。

 そして。

「……少年が、…………魔女?」

 そう、ここだ。

『少年は世界で最初の魔法使いとなり』

 普通に考えて、「少年」なら「魔法使い」と呼ぶのは妥当だろう。だが。

 なぜ、それをこれのタイトルでは「最初の魔女」としているのか。

 ――もっと。

 探究心なのか、なんなのか。

 「なにか」が引っかかるが、あとちょっとが、引っ張れないような。

 「うー、ん…………?」



 ――チリン、チリリン。

 ふと、最近は聞き慣れなくなった音が聞こえた。

 ――チリリン、チリン。チリン。

「鈴だ。……あれ、近いような……」

 ――チリン、リリン。……ドシャン。

 ……ドシャン?

 音は、玄関のほうからだ。

「……まさか、な」

 「鈴」は、よくひとの子が、居場所を示すために、親から持たされていることが多い。カイも、サナから持たされていた。

 鈴は、人の持ち物というイメージがある。

 リースの「まさか」は、的中することになるのは、まだ知らない。

 内心びくびくとしながら、窓からそうっと覗いた先には。

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