11. 前兆

 なぜ、カイの居場所がわかるのか。リースにとっては、答えは簡単。

 彼の好みが、ハウルと酷似しているから、だ。

 前世が大樹から生まれた精霊だったせいなのか、カイはよく、森や林へと入っていくことが多い。

 今日もたぶん、そのあたりの自然と戯れているのだろう。

 そう考えながら、カイの気配を探ると。

 ――?

 カイの気配を見つけた。その近くに、なぜかジジの気配も感じた。

 カイとジジは、特別仲がいいでも、悪いでもない。……少なくとも、リースの前では。

 不思議に思っていたら、リースの気配を感じてか、ジジがこちらへと近づいてきた。

「……ジジ?」

「……リースよ。わしらはもしかしたら、……いや、お主は『覚悟』をする必要があるやもしれん」

「覚悟、ですか? ……なにに?」

 ジジは、難しい顔をしていた。眉間にシワをよせて。そこまで何かを悩むのは、ジジにしては珍しい。

「……確証がない中で、話すのは無責任じゃ。このようなこと」

 つまりは、話せない、ということか。なら、仕方ない。

「カイくんを探してるんですが。会いましたよね?」

「ああ、あちらだ。……サナ殿か?」

「はい。もうすぐ豊然祭ですし、忙しいのでしょう」

「そうじゃな、いってきたらよい」

「はい。いってきます」

そうして、リースはカイのもとへと向かう。

「……まったく。『お偉方』は何が目的で、こんな酷いことを仕組むというんじゃ」

 そんなジジの声は、耳にとどくことはなかった。

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