7. 交差する瞬間
精霊の少年――カイは、この魔術交場のそばにある集落で、生まれてあまり間もない。けれどそこは精霊。見た目は三歳前後だ。
カイの父は精霊で、母は元魔女。主従関係が恋愛に発展したのは、母の「魔女」としての力が尽きたころらしい。
魔女の力とは、簡単に言えば「魔力の密度」だ。個人差はあるが、多くは千年もすれば、だいたいは集中力の低下が原因となり、引退する。
ちなみに、男性の場合は「魔術師」と呼ばれ、魔女よりは少々、引退は早い。
母、サナの市場での役割は、出す料理の野菜の切り分けだ。とは言っても、まだまだ新参者なため、あまり多くの仕事はこなさない。
一方で。父、カーバスは、持ち前の背の高さから、さまざまな仕事を任されるようになっていた。加えて、社交的な性格から、今では昼には、市場の受付を任されている。
難点は、高すぎる身長だ。彼のために、受付には特注で作られた、一般的には低すぎる椅子が置かれている。
そんな二人の間で、カイは――。
今日も受付にいるだろう、カーバスに、初めて差し入れをしに、カイは受付まで歩く途中、こんな声を聞いた。
「そういや、今日はジジ殿が、新しい魔女殿と来てるらしいな」
「ああ。さっきチラッと見たけど、不思議な髪の色をしてたなあ」
カイは、「ジジ」とはなんだかんだ、まだ会ったことはない。
(父さま、喜んでくれるかな。……う、これ重いけど、あと少し、頑張ろう……!)
落ち葉色の髪を揺らめかせ、新緑の瞳を輝かせながら、父の喜ぶ顔を思い浮かべる。
――そのときは、そしてしばらくは。まだ「忘れていた」のだ。彼は。
「おや? カイ! 一人で来たのか!」
「え? …………!? ……あなた、は……」
天界の者らの考えた、残酷な「断罪」を。
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