4. 輪廻のそのなかで

 リースは、ありのままを話した。

 千日魔女クローディアと、お目付け役と名のるジジ。アルテミスと、リースと、ハウル。

 それらのなかで、クローディアとハウルにまつわる話が、すっぽりと忘れられて、別の話に書き換えられていたことに、リースは衝撃をうけた。

 一通り話し終えると、ジジは苦い顔で唸った。

「……――たぶん、じゃが」

「はい」

「――昨日までのわしなら、おそらく知っているじゃろう」

 何を言いたいのか、先の言葉を目で急かす。

「リースは知らんじゃろうが、『天』のお偉方は、気に入ったものは、自分らの手の内に入れたがる」

「手の内……」

 もしや、と。

 リースの前には、信じたくない事実が待っていた。

「――クローディア様は、『天』にいる」

「……っ!」

 そして。事実の先には、絶望と違和感が残る。

「…………でも。でも、ならハウルさんは……?」

 なぜ、ハウルまで消えてしまったのか。

「……そればかりは、わしにも分からぬ」

「そんな……」 

 何がなんだかもまだよく理解できていない中で、ふと、思う。

――例えば、彼女なら。

「……ディアなら。こんな時は、どうするのでしょうか」

 それは、ついとでてきてしまった言葉だったが。

 ジジはしばし考えると、こう言った。

「……記憶のないわしには分からぬが。……その答えは、リースのなかにありはせんのか?」

「え? …………あ……?」

 ――いい? リース。嘆くだけでは、何も変わらないのよ? その先へ、進まなくちゃいけないの。

 確かに答えは、リースの内に眠っていたのだった。リース自身の、答えが。

 千を生きたひとの手に、背中を押されたような、不思議な心地だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る