10. 夜の闇
師匠が不在になり、特にやることのないリースは、町の近隣に佇む小さな林を、散策していた。
そこに住む精霊らは、なりたての魔女相手に、始めはビクビクとしていたが、クローディアの弟子であることに安堵して、一人、二人と、いつの間にかリースのとなりや前後には、ずいぶんな数の精霊がついた。
「クローディアさんも、さすがに長生きしてるだけのことはありますね! とても素敵な方をお弟子にされた」
「あのひと、性格は歪んでるとこありますけど、ぼくらにとっては最高の魔女ですしね」
本人が聞いたら、反応に困るような言い方だが、とにかく精霊らからしたら、とても善良な魔女らしい。もっとも、元々の魔女と精霊の関係が悪いからでもあるが。
ともかく、精霊らはリースのことも、安全な魔女と見なす精霊が多いことには、素直に喜びを感じる。
――けれど、どうしても魔女を恐れる精霊もいる。彼らは彼らで、そっとリースのあとを追っていた。
そうこうしているうちに、時は流れ、あっという間に夜になる。
――リースは、忘れていた。クローディアから、「夜の闇には気をつけろ」と言われていたことを。
満月が、彼女を誘った。
夜の闇に、呑まれてしまったことに気づいたのは、周りに誰もいなくなってからだった。
闇の群が、怒る。
「よくも、あのこをとったな」
「わたしたちの、こを」
「弟子など、いらないのに」
(……弟子?)
とった、あの子、弟子。
何がなんだかわからないが、もしかしなくとも闇は、リースがクローディアの弟子になったこと。つまりはリースがクローディアを独占していることに、怒りを覚えている、ということか。と、考えていたら。
――ふいに。本当にふいに、強い眠気に襲われた。
外は夜だ。
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