9. 心の内で
クローディアは、高位の魔女だ。加えてジジも、ともに永い年月を生きている。
高位の者は、同族からは何かと疎まれやすい。多くの仕事を成し遂げる中では、信頼もされるが、敵も多いのだ。加えて、クローディアは強情で、気難しい面があり、いろいろと誤解もされやすい。
そんな、魔女嫌いの魔女が、始めて弟子をとった。しかも噂では、ずいぶんと良い師弟関係が成り立っているらしい、という話が回っている。
だから、今回の依頼は、「リース」という、千日魔女が始めて弟子と認めた人物を見ること、ひいては、クローディアの反応を気にするお偉方の依頼だと、ジジは思っていた。
だが、なぜか主の横顔が険しい。リースを置いてきたというのに。そして、この表情には、見覚えがある。
遠い昔、とある魔女に辛く当たられ、それでも魔女を見捨てられなくて、いつの間にか、自分が見捨てられてしまったあの雪の夜。クローディアが、ジジと出会った頃の。
絶望の泥の中、綺麗な水を求めるように。暗闇の中で、明かりを灯そうとした、紅い瞳が。何かに怯えているようだった。
(……ディア様?)
心の中で、問いてみる。応えた音は、ひどく心細く響いて、いつもの彼女らしくなかった。
『……私が、一度も弟子をとらなかった理由は、ただ魔女が嫌いだから。でも、それだけじゃなくて』
――その者を、不幸にするかもしれないから。
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