3. 旅路にて

それは、リース達が灰の村をでて、その近くの町である「ルーブルー」へ行く途中のこと。


「マント、ですか」

「ええ、そう。その白い髪は、どこに行っても悪目立ちするわ。だって老人じゃないもの。だから、マント」

 「スカイ・フロア」では、人にとっては、魔力をもつ者は、警戒される。魔女に至っては、排除されるべき生き物だという者すらいる。

 一方、魔女らからすれば、人は「扱いづらい生き物」、「儚い命」などというような、面倒くささを感じている程度で、さして興味は持たれていない。それが、人にとってはしゃくらしい。

 けれど、魔女と人との見た目の違いはなく、人は魔女を見抜けない。

「……ディア、若白髪ということではダメでしょうか」

「ただの若白髪にするには、あんたの毛は艶々しすぎだもの。却下よ」

 なんか複雑、などとぼやきながらも、師匠の言い分に頷いたリースだった。



 それは、マントを調達した、昼下がりのこと。

「……今、なんて?」


「だから。あんたの魔女修行期間は、十年間、って言ったのよ」

 

 リースに流れる「魔女の知識」では、なりたての魔女が、ちゃんと魔女を名乗れるように「魔女修行」をすることがある。それは理解できる。しかし。

 魔女の修行期間は、どれだけ短くしても、百年単位なのだ。

 だが、目の前の師匠が告げた期間は、「十年間」。二度聞いても、聞き間違いかと疑ってしまう。

「本気、ですか……?」

「あら。あんた私の通り名を忘れたの?」

 クローディアの通り名、「千日魔女」。なんでも、人間同士の、千日以上続いた争いを、たった一日で止めた、ということからつけた名なのだそう。

 けれど。

「それと、短すぎる修行期間と、どう関係が?」

 もっともな質問をすると、千日魔女は不敵な笑みを浮かべた。


「私の能力を――時の流れを緩める能力を使えば、可能よ」

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