code6 各人の思惑
衝撃の知らせから、みんなの表情は固まっていた。自分たちが普通の人間では無く、モルモットということを確認したのであった。しかし、厳密に言うと、この状況ににやけているもの、能天気に鼻歌を歌っているものがいるから、不思議なものだ。
「神宮寺君、君はこの状況をどう思う?」
「やばいなと思うだけだぞ。」
「でも、君からはやばいって感じは伝わってこないんだけどね。余裕というか、この状況を読んでいたような…。」
「俺を買い被りすぎだぞ、武田。俺は未来を読めるわけでも無いんだ。」
「まあ、そういうことにしとくよ。僕も、副委員としての役割を果たさなきゃね。」
そう言って武田は立ち上がり、教卓の上へと向かった。皆の視線は武田に向かった。そして、武田はフーッと息を吸い込み喋り始めた。
「僕は誰も脱落者を出さずに、このゲームをクリアしたい。だから、協力してゲームに取り掛かろう。
0ポイントにならずに、目標ポイントをクリアするように調整すれば良い!」
つまり、ゲームを八百長して、みんなに均等にポイントが行くようにして、みんなでクリアする。それが最善策のような感じもするが、この異質なメンバーでそれをやるのは至難の技だ。
「武田君、でも目標ポイントは最初から提示されているわけじゃ無い。そうなると、共倒れの可能性がある!」
委員長の白石がそう言うと、他のメンバーも頷いた。
「だが、ここの研究者達が、いきなり多くの人を脱落させるとは到底思えない。できるなら長くデータを取りたいはずだ。」
「おい、委員長!お前は甘っちょろいな、つくづくそう思う。ここのクラスは天才揃いだ。実力が無ければ蹴落とされる当然のことだ。他のやつもそう思わないか?おい、そこのパソコンオタクお前もそう思うだろ!」
強面の銀城はそう話し、左目が前髪隠れた、いかにも引きこもりそうな顔の榊に話を振った。
榊はいかにも嫌そうな顔をして、銀城をにらんだ。
「どうでも良い…。」
「お前が、いつもパソコンでグロいゲームをにやけながらやってるから、てっきり人を蹴落とすのが好きなのかと思ったがな。」
「なんでそれを…。」
「聞こえねーな、はっきり喋ろよ。お前みたいなやつが同室だとムカつくんだよ!」
「落ち着いて、銀城君。」
「あ?うるせぇな委員長。まあ、お前にも言っておくが、俺はお前みたいな偽善者が大っ嫌いだ!」
話はそこで終わり、休み時間は幕を閉じた。クラスは今の話し合いでますます雰囲気が悪くなった。武田は落ち込んだ顔をして席へ帰ってきた。
「僕じゃ無理みたいだね。まとめるの…。」
「まあしょうがないだろ。誰も死にたく無いんだ、
だからこうなって当たり前だ。」
そう言って俺は一応武田を励ました。そして、次の時間になり研究員が入ってきた。
「えー、これからお前たちに課題を発表する。この課題は明日に開始される。今は説明だ。よく聞いておけ。
これからお前らにやってもらうのはN Gゲームだ。これは個人戦となるが、グループは後から発表するが、
8グループで5人ずつとなる。
一応ルールを説明しておくが、お前らに渡した携帯に各人のNGワードが表示される。
やらないとは思うが、この画面を他のメンバーに見せる、誰が何だと口で発するのは禁ずる。
NGワードは2回まで言っても良いが、二回以上言ったら携帯のアラームが鳴って強制退場だ。
また、一回目NGワードを言っても、それは本人に通達されない。
報酬は、最後まで残ったものを一位とすると、
一位 プラス80ポイント
二位 プラス60ポイント
三位 プラス40ポイント
四位 プラス20ポイント
五位 0ポイント
今回は本格的な課題が初めてであるので、マイナスはないものとする。質問はあるか?」
素早く、武田が手を挙げた。
「これは、NGワードを相手に合わせるよう誘導するように会話を展開させるって言うことですよね?」
「そう言うことだ。NGワードはランダムであるので、規則性はないので、そこは考えても無駄だ。」
「では、グループを発表する。」
これが、1番の肝だ。メンバーが悪ければ高ポイントは狙いづらい。人生をかけているのだから、周りは緊張していた。
「では、1グループ、桜ノ宮、神宮寺、白石、銀城、柴崎」
柴崎は女子で大人しく、いつも教室で本を読んでいる。読書家だ。コミニュケーションが苦手にも思えるが…。しかし、同じ班に白石、しかも桜ノ宮もいる。
最悪だ…。
「嘘でしょ!桜ノ宮と一緒なの!勝てっこないじゃん。」
白石がそういうと、周りの女子は頑張ってとエールを送っていた。これが女子のヒエラルキーというやつか…。俺はそれを目の当たりにした。
「最終グループ、榊、吉谷、隈部、君津、螺王とする。後からの時間は自由だ。明日にそなえておけ。」
そう言って研究員はその場を去っていった。俺も勝てるように考えなきゃな…。俺はそのまま伸びをした。
「神宮寺くんは、すごいメンツだね。」
「本当そうだな…。勝てる気がしない。」
「君なら買っちゃうかもよ。」
「また、それか?まあ、頑張るがな」
そして俺は行動に移った。クラスからは何人かが、部屋に戻り何人かはクラスにまだ残っていた。携帯が持たされたことで、クラスのメンバーとメールができるようになった。これは、かなりでかい。
そして、俺は図書館へと足を運んだ。
図書館はかなりの蔵書量でかつ開放的だ。ここより他に快適な所はない。本の匂いが好きというのもあるのだが。
俺は席に腰をかけながらある人物と待ち合わせをした。目の前に現れたのは白石であった。
「メールで呼び出しておいて何の用?」
「お前に協力してもらいたい。」
「私に?何であんたが…。」
「この班で優勢なのは確実に桜ノ宮だ。でも、このゲームは協力した方が絶対的に有利だ。分かるだろう?」
「私だって、桜ノ宮を倒したいけど、そんな方法あるわけ?」
「俺が指で机を鳴らす。最初に鳴らした数が五十音順の縦の行の数。次に間を開けて打つ。その音が横の行の数それをさりげなくやる。そうすれば、何の言葉か分かるはずだ。
後、お前の所に銀城が来るだろう。あいつはお前を操って自分だけが勝つつもりだ。さっきの言動でも分かるだろ。
でも、断るんじゃなくて協力するフリをして嘘の情報を伝えろ。」
「分かったわ。絶対、桜ノ宮倒すわよ。」
「ああ。」
俺はそう言って、軽く笑みを浮かべた。
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