第69話 69

あなた、ニックネームはある?


私はなかった。しまった!? あくまでも薄皮さんと呼ばれ続けたために親しみやすいニックネームなんて考えていなかった。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。

NJK(何か取り柄のある女子高生。)

「解決(ソルーション)!!!」


ヨモさん。ヨモヨモ。薄皮教授。こんな所かな? できれば人気が出るようなカワイイニックネームがいいな。まあ、主題に悩み事なんてマニアックなテーマを選んだ時点で大衆に共感されて受け入れてもらえる作品にはならないか。あはっ。



「無い!? 無い!? 私の剣が無い!?」


製作委員会東京都大会の戦いの火ぶたが切られた。テーマは光り輝く東京。これからの東京はどうなっていくのかという真面目なことを話し合う訳も無く、ライトセイバーでチャンバラごっこして最後まで生き残り一番長く東京都を光で照らしていた者の勝利らしい。なんじゃそりゃ!? と思う間もなく、事件が起こった。


「どうしたの?」

「私の剣が無いの!?」

「おかしいわね? 23区だから出場者は23人。当然、光る剣も23本あったわよね?」

「そうよ。23本あったわ。」

「どうして人数分無いのかしら?」


私は運がいい。私は蛍光灯を手に入れることができて。もし蛍光灯を手に入れていなければ、素手で光る剣を持った他の生徒と戦わなければいけないからだ。他の参加者は不思議だと騒いでいるだけだが、悩み事のスペシャリストの私は、この事件の状況分析は終わっている。そして、人数分あった剣が人数分無いのか。その答えは・・・。


「ギャアアア!」


その時、一人の生徒が悲鳴をあげた。光る剣が彼女の体を貫いている。もちろん光る剣が照らしている犯人の顔は・・・傲慢さんだ。やっぱり彼女も製作委員会東京都大会に出場していたんだ。


「私は欲しいものは手に入れる。雑魚は引っ込んでいなさい! 雑魚は!」


勝ちたい。あの人に勝ちたいと思える。なぜなの? こんな気持ちが心の中から湧き上がってくるなんて? 今まで自分の悩み事の世界で生きてきた頃には、こんな気持ちにはならなかったのに・・・。私も大人になったってこと? 私も大人の階段を登っているのかしら?


「江戸川区 退場」


会場にアナウンスが流れる。会場の暗い闇に光る文字で江戸川区の敗退が表示されて消えていく。先に言っておくけど、私が渋谷区代表ということ以外は抜けなければ東から退場していくことになるだろう。区民の皆さん、悪気はないからね。


「なに目立ってくれてるのよ!?」


ダメ! 不用意に突撃しては! なに!? この嫌な感覚は!? あの傲慢さんの余裕の微笑みは!? 傲慢さんの剣は江戸川区の女子高生に刺さっているから、次の区の女子高生の剣を防ぐ手段は無いはず!? でも・・・ダメ! 傲慢さんに近づいては! 


「ギャアアア!?」


に、二刀流!? 二刀流だと!? 私の嫌な予感は的中した。傲慢さんは一人で二本の光る剣を隠し持っていた。


つづく。

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