第64話 64
あなた、クセはある?
私はある。て、いうか、私はクセのあるヒロインでしょ? 私からクセを取ったら何も残らないじゃない。私のテーマは悩み多きクセのあるヒロインなんだから。
ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。
NJK(何か取り柄のある女子高生。)
「解決(ソルーション)!!!」
恐らく私はメガネをかけ、髪の毛も自分で切ったようなザックリな感じで、姿勢も悪く背中が丸まっている華奢な女子高生のはずよね。もしも、これで自信満々のスレンダー女子高生で胸も大きくスタイル抜群だったら、クセのあるヒロインでなくなっちゃうだもの。
「東京都大会だ!」
ま、当たり前だな。製作委員会渋谷区大会を勝ち抜いたのだから、次は東京都代表を決めなければいけない。分かりやすいイメージは高校野球の甲子園か? 何はともあれ、ここは職員室で、騒いでいるのはひょん教。気が付けば高校の屋上から「祝 製作委員会渋谷区代表 薄皮ヨモギ」 という恥ずかしい垂れ幕がかかっている。辞めてくれ。
「これで俺が正規公務員になる日が一歩近づいたのだ! ワッハッハー!」
ひょん教は自分が顧問する製作委員会が渋谷区代表になり、渋谷塚高校の名前を世間に知らしめたということで校長先生に褒められ大喜びだ。ご満悦のひょん教から私にご褒美があり、私がもらったのはペロペロキャンディーだけだった。見た時は唖然としたが、それはそれで美味しかったので良しとする。
「聞いているのか!? 薄皮!? なんとか言えるものなら言ってみろ!? 言えまい! 薄皮! おまえが何も言えないことは俺が一番分かっているぞ! ワッハッハー!」
こいつは確信犯だ。私が自分の言葉で話すことを苦手と知っていて、私が口答えしない、反論しないと知っていて強気で言って来る。そこで私は少し悩んだ。そして今日は特に予定も無いし、別に今、私の想いの宿った言葉を唱えて、自分の言葉で話せるようになって、この調子に乗っている教師を懲らしめることにした。
ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。
これといって私の外見に変化はない。ただ私が私の言葉で普通の人間のように話ができるようになっただけである。それだけで十分だ。私の悩み選ばれた言葉の重みは一言で世界を終わらせる。世界の果てを見せてやろうじゃないか。この世の悩み事が混沌を生み出すというのなら、カオスを司る私は世界すら支配できるということ。私は私の理想の世界を創造する。
「解決(ソルーション)!!!」
目の前の私利私欲の塊の邪な教師の精神をきれいに解き放ちたまえ! ああ! 少しづつひょん教の黒い心の混沌がほぐれていく。まずは製作委員会で私を利用して学校の名前を売り込んで自分の評価を高めて正規公務員になろうという欲望が引きはがされていく。これで私の学園生活にも平和が訪れる・・・。
「よし! 次は製作委員会で世界制覇だ! 地球一周するぞ! ワッハッハー!」
・・・新しい邪心が生まれやがった・・・恐るべし、ひょん教・・・とほほ。
つづく。
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