第62話 62

あなた・・・。


呼んだだけよ。本編が盛り上がってくると恒例の冒頭の質問が思いつかない。それどころか本編を早く書くために流しているのがよく分かる。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


そうよ! 薄皮ヨモギの暗中模索は、これぐらい緩い作品だったはず・・・。冴えない私が眩しすぎる。悔しいけど・・・私、カッコイイ!


「ウイコ!」

「薄皮さん!」


この手を離さない! 私はウイコの手を離さない! 絶対に助けるんだ! 私の悩み事が混沌を生み出すのなら、私の悩み事が解決されれば、この地獄の門も閉じるはず! 今、私は何に悩んでいる!? いや、何も悩んでいないはずだ! 私の悩み事の答えはでている! 今は私はウイコを助けたい!


「解決(ソルーション)!!!」


私の悩み事は解決された。私の悩み事の解決と共に地獄の門は静かに閉じていく。地獄へと誘う強烈な風の吸引も止み、最後は地獄の門も、どこかへ姿を消して消えてしまった。あの恐ろしい地獄の門を呼び出したのは・・・私の悩み事だったのだろうか・・・。残された私とウイコが漠然といる。


「薄皮さん。」

「ウイコ。」

「薄皮さん。どうして助けてくれたの?」

「私たち同じ製作委員会の友達でしょ。それでいいじゃない。」


少し照れ臭いけど、私はウイコに優しく微笑んだ。なんだか不思議だった。あれだけ激しい戦いを繰り広げたウイコに私は微笑んでいる。ウイコは敵であり、憎しみや恨みしかなくてもおかしくない相手なのに・・・相手だったのに・・・。


「・・・う・・・う・・・薄皮さん! うえええ~ん!」

「・・・!?」


ちょっと!? 泣かないで!? 抱きつかないで!? ・・・!? こ、声が出ない!? どうして!? 今、一番良い所なのに!? 私、がんばったのに!?


「それでは製作委員会の渋谷区代表は渋谷塚高校の薄皮ヨモギさんに決まりました。」

「・・・。」


なんだか分からないけど、私、勝っちゃった。地味で大人しくて声も出ないメガネな私。もちろん今までの人生で輝かしいスポットライトなんて当たったことは無い! ここは自信を持って言えるわ! ・・・なんだか複雑な気分でげっそり・・・。


「薄皮さん。あなたなら認めてあげるわ。」

「薄皮さん。さすが我がライバル。」

「薄皮さん。渋谷区の代表として本戦もがんばってね。」

「薄皮さん。私たちも応援しています。」

「・・・。」


ついに渋谷5人衆も一まとめにされて、薄皮ヨモギ親衛隊にされたのね。当然よね。美味しい所はウイコに持っていかれたんだから、もしマネージャーがいたら怒られまくっているところよね。・・・あ!? それなら和菓子三姉妹も一緒に親衛隊にまとめてくれればいいのに・・・。


「全て、俺様の計画通りだ! 俺様偉い! 俺様すごい! ワッハッハー!」

「・・・。」


はあ・・・すっかりひょん教のことを忘れていた。おい、心の声が表に出ているぞ。


「・・・。」


まあ、いいっか。何はともあれ私の目標の世界征服に一歩近づいたのだから。私は気づいてはいなかったが、私の気分は晴れやかだった。


つづく。

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