第53話 53

あなた記憶力はいい方?


私は・・・もうダメ。アンコ、ツブコ、ズンコの和菓子三姉妹は覚えている。ネーミングも完璧よね。でも一度に5人も増やすなんて作者にしても読者にしても自殺行為よね。まったく。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


サクコ、タイコ、ハチコ、キンコ、クレコの渋谷5人衆。まだなんとか覚えているわ。でもさすがに和菓子だけでキャラクター名を決めるのもそろそろ限界。区が変わったらお米とか苺の品種名とか車の名前とかに変えよう。名字も考えるのが面倒くさいから高校名兼名字にしようかしら。


「私たちは松濤高校の道明寺あん!」

「神山高校の小倉つぶ!」

「代官山高校の横手ずん!」

「そして渋谷塚高校の薄皮さんを入れて、私たちは渋谷四天王よ!」


いつ、決めポーズまで考えた!? いや、違う!? いつ、そうなった!? 私はソロプレイヤーだから私を姫と崇拝する三巨頭の方がしっくりくるのではないだろうか? 違う!? また違う!? そういう問題じゃない!? 私を巻き込まないで!?


「渋谷四天王!?」

「これは渋谷5人衆と渋谷四天王の戦いですね!」

「あとの雑魚は放っておきましょう。」

「絶対に負けられない戦いが渋谷にある!?」

「青春にライバルはつきものです! イエーイ!」


なんで盛り上がれるのよ!? ・・・まさか!? 戦いを終えて友情が芽生えて9人組アイドルユニットとして売り出して儲ける気ね!? ひょん教なら考えそうだわ!? 本当にやりそうだから、ひょん教は怖い・・・。


「ん? んん!? なにー!? 大変だ!? 薄皮!? 製作委員会のお題がサイバーセキュリティに電撃が追加されて、電撃サイバーセキュリティがテーマになっているぞ!?」


ひょん教、どこから情報を手に入れた? まあ、いい。細かいことは気にせず行こう。元々のテーマのサイバーセキュリティはハッカーだのウイルスだのだろうが、それに電撃・・・つまり稲妻やサンダ―が追加されたということか? いかんいかん。悩めば悩むほど私の世界に入っていってしまう。これは私の悪いクセだな。


「勝負よ! 渋谷5人衆!」

「勝つのは私たちよ! 渋谷四天王!」


はあ・・・良くやってられるわね。女子高生にもなって青春ごっこだなんてイマドキやってられないわ。私が興味があるのは電撃サイバーセキュリティだけよ。あなたたちに興味は無いから先に会場入りさせてもらうわよ。


「あ!? 待ちなさいよ! 薄皮さん!」

「・・・。」

「そうそうよ! 無視するなんて何様よ!?」

「・・・。」

「天下の薄皮さんはあなたたちなんかと話す口をお持ちじゃないのよ!」

「なんですって!?」

「今や薄皮さんは至高の存在! 薄皮さんあっての渋谷なのよ!」

「なんだと!? 渋谷は薄皮さんのものだと!?」

「・・・。」

「バイバイ! アッカンベー!」

「クウウウ!? 悔しい!? みてなさいよ! 大会では薄皮さんを倒してやる!」


巻き込まないで。私はこれでも平和を愛する女の子なのよ。


つづく。

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