第46話 46

あなた、寝起きはいい方?


私はいい方よ。寝ている時も寝返りをうたないぐらい静かに眠っているわ。そして朝のトイレも快調。清々しい朝の目覚めを迎えるのよ! ああ! 幸せ!


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


ここで問題です。オラオラ調の関西弁のロボットと車いすで健やかに眠っている女の子。果たしてどちらが怖いでしょう? 正解はこれから分かります。


「慰謝料を払え! 薄皮さん!」

「痛い! 膝がこすれて血が出る! 薄皮さん!」

「お嫁にいけない! なんとかしてよ! 薄皮さん!」


だからひいたのは私じゃないっの! ・・・んん!? 今、私は覚醒して薄皮ヨモギになっているはずよね? 言い返せるのになぜ言い返さないの? そうか! こいつらと関わらない方がいいと私の悩んできた人生が言っているわ。


「あかんって!? そんなに騒いだら祐名はんが目を覚ましたら、この世の終わりがやって来てしまう!?」

「そんなにお眠りさんは怖いの?」

「怖いなんてもんじゃない!? わては元々は車のAIでっせ!? 祐名はんが寝ぼけてもぎ取ったんでっせ!? 今も暴れないように寝相安定車イスで大人しく眠らしているのに・・・ほんまありえへんは・・・。。」


いったいどんな寝相よ!? ただ私の悩み事の五感が感じているわ。お眠りさんを起こしてはいけないと。きっと恐ろしいことが起こるわ。今、この場にいる中で一番恐ろしいのはアンコでもツブコでもズンコでもない。一番恐ろしいのは、お眠りさんよ!


「ふわ~あ!」

「あかん!? 破壊神の復活や!」


め、目覚めた!? そういえばお眠りさんが起きているところを初めて見るわ。もう高校に入学して何日目の生活か忘れたけど。別に欠伸するぐらい普通じゃないの? 関西弁のロボットが大袈裟なんだわ。


「誰?私の眠りを妨げたのは? 人が気持ちよく眠っているのに。天皇、あなたなの?」

「ちゃいます!? わては祐名はんの寝起きが悪いの知ってるのに起こす訳ないですやん!?」

「それもそうね。」

「ほお~っ。おっと忘れてたかもしれないので自己紹介が遅くなりました。わての名前は明治天皇。近所に明治神宮があるからそんな名前が付いたそうな。」


関西弁のロボットに名前があったのね。それにしてもお眠さんは普通の女の子に見えるんだけど。そんな世界を滅ぼしたり世界を変えることができる力がただ寝ているだけのお眠さんにあるはずがない。ワッハッハー!


「こら! 眠りは私の専売特許だぞ! まだキャラが少ないのにスキル被りとかおかしいだろう!?」

「そうだ! そうだ! 敵役の私たちの立場も考えろ!」

「私なんかおまえを引き立たせるために新キャラなのにロクな扱い方されてないんだぞ!」


私にはアンコ、ツブコ、ズンコの心の声が聞こえた。もっとも声に出して言っているからなんだけど。でも確かに10人ぐらいしかまだいないのに眠りと眠りでスキルが被るのはちょっとかわいそうかな。


「おまえたちか? 私の眠りを妨げたのはー!!!!!!!」


私は勘違いしていた。激怒するお眠さんのスキルを眠りだと思っていた。でも実際は眠りのスキルとはかけ離れたものだった。


つづく。

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