第45話 45

あなた、余裕ってある?


私はある。朝の時は私は陸に上がった魚だったので余裕が無く、正直追い込まれた絶体絶命だったけど、今の私は余裕シャキシャキ。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


なぜなら今の私は薄皮ヨモギに覚醒することができる。私は私の声で私の言葉でしゃべることができる。もう私はダメな私じゃない!


「薄皮さん! 帰って来ました!」

「薄皮さん! 待っていましたよ!」

「薄皮さん! 私、今回の新登場キャラよ!? ちょっと邪険に扱いすぎじゃない!? この怒りをぶつけてやる!」


アンコ、ツブコ、ズンコ・・・あなたたち何時間校門で待ってたのよ? ねえ、このパターンはもう止めない? だって毎回アンコから新キャラまで全員登場させるんでしょう? 誰がどんな能力でどんな名前なのか、そのうち記憶力でカバーできなくなるわよ?


「眠れ! 薄皮さん!」

「毒されろ! 薄皮さん!」

「盲目になれ! 薄皮さん!」


フフフッ。お馴染みのパターンね。そろそろ懲りないのかしら? フフフッ。ダメ。思わず笑いが込み上げてくる。ちなみにズンコのブラインドネス攻撃は、私、薄皮(ススキカワ)の暗さより明るいために効き目は無かった。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


蹴散らしてくれるわ! 雑魚ども! 私は私を覚醒する言葉を唱えた。私は薄皮ヨモギの人格にチェンジし饒舌タイムに突入する。私は私の想いの宿った言葉を言いたくてずっとムズムズしていたのだった。よし! 言うぞ! 言ってやる!


「危ない!? どけどけ!? どいてや!?」


キャア!? その時だった。無人の自動車が校門前にやって来てプチプチプチとアンコ、ツブコ、ズンコをひいた。和菓子三姉妹は無人で静穏な車の接近に全く気付かなかったので防御する間もなく暴走車にひかれた。


「AIロボットも機械やから故障することもあるわな。わては悪くないで。 注意を呼び掛けたからな。悪いんわ、無人自動車にひかれる方や。道の真ん中に立っていたら危険なんは最初から分かっているはずや。おお! 薄皮さんや! おおきに!」

「・・・。」


恐るべし関西弁ロボ・・・。ロボットでも関西人は関西人なのね・・・。私が感心していると学校から関西弁のロボットと車いすに乗ったお眠さんがやって来た。そして車に下敷きになった和菓子三姉妹が這い上がって来た。


「ちょっと!? 私たちを引いておいて、何和気藹々と挨拶してるよ!? 薄皮さん!?」

「ひき逃げはれっきとした犯罪よ!? 道路交通法違反よ!? 薄皮さん!?」

「登校も下校もひくなんて酷いじゃない!? 薄皮さん!?」


え? なぜ私? あなたたちをひいたのは私じゃなくて目の前の関西弁のロボットでしょ!? 私は悪くない! その時だった。車いすで眠っているお眠さんの指がピクピク動き出したのは・・・。


「あかん!? そんなに騒いだら祐名はんが目覚めてしまう!?」


初対面の私にはみんなが恐れる関西弁ロボが、なぜ寝ている女の子に怯えているのかが理解できなかった。


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る