第42話 42
あなた、もどかしいと感じたことある?
私はある。変な女医に教えてもらった。私は私の想いの宿った言葉を見つけている。後は言うだけだ。きっと私の言葉は私の想いを伝えてくれる。
ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。
内気な私に勇気を与えてくれる不思議な言葉。私は変な女医の催眠療法を受けて、私は私であるが人格を元気で明るい薄皮ヨモギに変わる。しかし一日に何度も使えるものではなかった・・・。
「あら? 薄皮さん。いつもの嫌味タイムはどうしたの?」
「まさか? 薄皮さん。毒が吐けなくなったのかしら?」
「チャンス! つまり薄皮さんを倒す絶好の機会ね!」
しまった!? 気づかれた!? 私が薄皮ヨモギになれないことがバレてしまった。アンコ、ツブコ、ズンコの和菓子三姉妹の魔の手が襲いかかってくる。どうする? ここにはハーフさんも演劇さんもいない? 私はどうすればいいの?
「永久に眠れ! 薄皮さん!」
「毒漬けにしてあげる! 薄皮さん!」
「前が見えないって結構怖いのよ! 薄皮さん!」
悩め! 悩め! 悩め! 私! きっといい方法があるはずだ。何か策があるはずだ。このピンチを切り抜ける方法があるはずだ。あ~でもない!? こ~でもない!? 悩め! 悩め! 悩め! 私! 悩みの先に答えがあるはずだ! 悩め!!!!!!!
「悩め!!!!!!!」
あ、心の声が思わず外に出た。これは薄皮ヨモギの声でなく、私、薄皮(ススキカワ)の声? これが私の声・・・。私の声も薄皮ヨモギの声も私の声なのだが、当たり障りのない形式なものではなく、心の叫びのようなのを声に出したのは人生で初めてかもしれない。
「うっ!? 毒が!? 毒が!? ツブ何するのよ!?」
「ま、前が見えない!? 怖いよ!? 怖いよ!? ズン止めてよ!?」
「ふわあ・・・眠くなってきちゃった・・・アンのバカ・・・zzz。」
こ、これはどういうこと? 仲間割れ!? アンコとツブコとズンコが互いに互いを攻撃したのかな? 私が急に大声を出したからビックリして手元が狂ったのかしら? 悩んでも悩んでも私には正解の答えは見つけられなかった。
「・・・。」
あと1分ある! まだ授業に間に合う! ベルも鳴ってない! 先生もまだ来ていないはず! 私は私の声が出せたことを喜ぶより、この場を切り抜け授業に間に合うことを優先する。
「待て! 逃がさないわよ! 薄皮さん!」
「薄皮さん! あなたも遅刻の道連れよ!」
「zzz。」
離せ! 離せ! 地獄の魑魅魍魎ども! 私は私にしがみついてくるアンコとツブコとお眠のズンコを振り払おうと必死に抵抗するがなかなか校門を超えることができなかった。その時、一台の車が猛スピードで校門にやって来た。
「どけ! どけ! あかん!? 引いてしもた!?」
ラッキー! 軽くなった! ・・・違う違う!? 和菓子三姉妹が車の下敷きになっている。悲惨・・・・。車は校門前で急ブレーキをかけて止まった。私はアンコ、ツブコ、ズンコがプチプチプチと車に引かれる音を聞いた。ひき逃げ犯は関西弁の男性のようだった。
つづく。
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