第41話 41

あなた、校門で待ち伏せしたことある?


私は無い。だって私は人見知りだから好きな男の子を待っても声をかけられないから。私にできるのは後を尾行するストーキングだけだもの。私は別にストーカーになりたい訳じゃないし。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


私の言葉か・・・変な女医はもう私の想いの宿った言葉は見つかっているって言うけど・・・仮によ!? 仮に見つかっていたとしても私は致命的なミスを犯していた・・・。


「探したわよ! 薄皮さん!」

「今日こそ逃がさないわよ! 薄皮さん!」

「噂の薄皮さんって、意外と可愛いのね。」


カワイイだなんて!? よく言われます。これでも主人公ですから。アハ―! あれ? なにか私が反応の仕方を間違えた様な・・・はあ!? アンコにツブコに誰かしら? もう一人増えてる・・・。


「道明寺アン!」

「小倉ツブ!」

「そして私が代官山高校の横手ズンよ!」


朝から頭が痛い・・・。アンコ、ツブコ、ズンコ・・・和菓子三姉妹の登場ね。ああ・・・頭が痛いわ・・・。こうして私の高校六日目の朝が校門の待ち伏せから始まった。


「朝から勝負よ! 薄皮さん!」

「こんどは負けないわよ!」

「私と論戦することの無意味さを教えてあげるわ!」


あの・・・誰も戦うと言ってないんですが・・・。ていうか、始業時間まで後10分位しかないんですけど・・・あなたたち遅刻確定よ? それでいいの? 入学したてで皆勤賞が無くなるのよ? 


「眠れ! 眠れ! 薄皮さん!」

「毒れ! 毒れ! 薄皮さん!」

「フフフッ! 薄皮さん! あなたの実力を試させてもらうわよ! 私の実力をみせてあげるわ! 目潰し! 目隠し! 目暗まし! フォグ!」


だから誰も戦うって言ってないでしょ!? こういう展開で文句を言うだけ無駄なのよね。どうする? 眠る? 毒に侵される? それとも目暗ましされる? 私はどうすればいいの? ・・・んん!? また悩む所を間違えているわ。今回も誰かが助けに来てくれるのかしら?


「・・・。」 


まるで他人事みたいだ。私は私の戦いなのに私の戦いではないみたいだ。悩み方を変えよう。これは私の戦いだ。私の悩み事次第できっとこのピンチも乗り切ることができるはず。悩め! 悩め! 悩め! 私! この三対一の不利な状況でも突破して見せる! 薄皮ヨモギなら絶対に勝てるはずだ! そして私の想いの宿った言葉を絶対に言ってみせる!


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


なに!? 何も起こらない!? 私は覚醒の言葉を唱えるが薄皮ヨモギになることができなかった。どういうことなの!? ・・・まさか!? 前回の覚醒から24時間経っていないから饒舌タイムに突入することができないというの!? 私は目隠しどころか五里霧中の世界に入ってしまい目の前が真っ黒で見えなくなってしまった。


「・・・。」


私は私の想いの宿った言葉を声に出して言うことができなかった。


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る