第40話 40

あなた、女医さんは好き?


私は好き・・・だと思っていた。私に催眠療法を施し少しの間だけ饒舌な薄皮ヨモギに人格を変えることができるようにしてくれたから。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


これが私を覚醒し饒舌タイムに突入する言葉。だから変な女医だけはこの作品で唯一まともな人間だと思っていたのに・・・ラノベで普通の人間が出てくるはずが無かった・・・。


「薄皮さん。どうもです。え? なぜ私が逃げ回っていたかって? それは秘密です。というと悩み症候群の薄皮さんは悩んじゃうよね。ワッハッハー!」


私は変な女医に捕まって診察室にまで引っ張って来られた。なぜこの変な女医は楽しそうなんだ? 私が悩むのがそんなに嬉しいのか? ていうか私の病名は自律神経失調症でも自閉症でもなく悩み症候群だったのか!? 女子高生になり立ての私は変でも医者という肩書に言われたことはそのまま受け入れてしまう世界狭すぎちゃんであった。さらにこの変な女医は私の弱点まで見抜いていた。


「ほうほう。製作委員会ね~人生いろいろあるよね。私も国連の名誉教授だから戦地で医療活動をしたり大変だったよ。」


なに!? 国際迷惑連合の名誉教授!? いったいこの変な女医さんは何者なんだろう? 私の知らない得体の知れない何かがあると気づいた、薄皮ヨモギ高校一年生の春であった。


「薄皮さん。今、このきれいな女医さんは何者なんだと悩んだでしょう?」


ギク!? なぜだ!? 私の心が読めるというのか!? ただし誰もきれいとは言ってないけどね。なんか大人ってズルい。子供と生きた年数が違うから生きた時間の差の分だけ子供の私より世の中を知っているんだわ。


「おかしいな? これでも人気有名人なんだけどな。私は巷で有名なマッドデンタリストの美代先生だよ。ワッハッハー!」


知らない・・・。ラノベのこの物語で誰かを頼って相談しようとした私がバカだった。子供の私からすれば両親も教師も医者も大人は子供の私の気持ちを理解してくれない。もう大人なんて信じない。私は頭を下げて部屋から出て行こうとした。


「もう見つかっているんじゃないかな? 薄皮さんの想いの宿った言葉。」


え? 私は歩く足を思わず止めた。なぜだろう? 自然に涙が溢れてくる。この先生はバカをやっているだけで女医らしく私の気持ちを分かってくれていると気づいたからだ。


「先生!? 早く行かないと先着30名のチャーシュー1枚サービスに送れますよ!」

「この子は私の助手の・・・うわあ!? 薄皮さん!? またね!?」

「・・・。」


私が振り返って変な女医さんの胸に飛び込んで泣こうとした感動のシーンの前の時だった。扉を蹴り上げて開けて部屋に侵入し変な発言をしながら看護婦らしき女性が入って来て、私の存在は関係なく変な女医さんを誘拐していった。私はただ茫然と立ち尽くすしかなかった。


「・・・。」


私の言葉か・・・。ああ・・・これで今夜も眠れない・・・まさに暗中模索ね。


つづく。

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