第37話 37
あなたの好きな言葉はなに?
私は分からない。私の想いの宿った言葉が分からない。私の一番大切な言葉が分からない。だって私の好きな言葉なんて今までの人生で考えたことがないんだもの。
ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。
これは口ベタな私が饒舌になる覚醒の言葉だし、私は悩んでもどの言葉が好きなのか分からなかった。まさに暗中模索よ。
「アンコッコ!」
「ツブアンコッコ!」
こいつらを野放しにしておく訳にはいかない! こんな気持ち悪い鳴き声ダンスを許してはいられない! やるしかない! 例え私の想いの宿った言葉が分からなくても! 私は製作委員会の委員長として逃げる訳にはいかない!
ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。
待っててね。演劇さん、その友達と歌劇団部の部員さんたち、そして全校生徒。私がアン・ツブコンビを倒して、みんなを毒地獄から救ってみせる! 私はダメな薄皮(ススキカワ)じゃない! 私は薄皮ヨモギなのだから!
「黙れ。アンコにツブコ。私にケンカを売ったことを後悔させてやる。」
気持ちいいー! ああ~私の言葉でしゃべれるだけでこんなにも気持ちいいなんて! 快感だわ! まるで鎖に繋がれていた天使が束縛から解き放たれて大空に飛び立った気分よ! キャッハッハー!
「誰がアンコよ!? 私はアンよ!」
「そうよ! ツブコって誰よ!? ツブコって!」
ほざくがいい。吠えるがいい。アンツブよりも私のヨモギという名前の方がマシだわ。さすがに薄皮(ススキカワ)という名前とは比べたくないけど。ここからが勝負よ。私は私探しをしなくっちゃ。絶対に見つけてみせる! 私の言葉を!
「アンコ! ツブコ! 死ね! 殺されろ! この世から消えろ! 異世界に飛んで行け! 核爆弾発射! 火! 水! 雷! 風! 土! 岩! 時間よ! 止まれ! ・・・!?」
なぜ!? なぜなの!? どの言葉も何もスキルが発動しない!? どれも違うというの!? いったい何なの!? 私の想いの宿った言葉は!? 私の奇妙な言動はツブアンコンビにヒントを与えてしまった。
「あれれれ? もしかして薄皮さんは自分の論争する言葉を知らないんじゃないの?」
「薄皮さんが焦っているわ。どうやら図星突かれて焦っているのね。眠らしてから注射器で毒を体内に撃ち込んであげるわ。ヒッヒッヒー!」
バレた!? 私が私の想いの宿った言葉を知らないことが!? 私の議論や論戦に戦う力が無いことがツブアンコンビに気づかれてしまった・・・。私は無力だ。悩むこともできず、何もできないで毒漬けにされてしまうのね・・・ああ・・・私はピクルスのようになるのね・・・。
「あなたたち! 許さないわよ! 神聖な歌劇団部の体育館を汚した罪は万死に値する!」
私が諦めようとした時だった。毒漬けされ生死の境を彷徨っているはずの演劇さんの女優魂に火がついた。
つづく。
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