第33話 33

あなた、この世界が好き?


私は嫌い。女子高生になったばかりの10代の私でも分かる。この世界は矛盾だらけだ。私の周囲には両親や教師が主な大人だけど、大人というだけで子供を都合の良いように扱っている。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


それに異世界ファンタジー的な特殊能力を手に入れたからといって浮かれることはない。でも友達ができただけで少しだけ、少しだけこの世界を私は好きになった。


「おい、薄皮。どれがいい?」


何を遊んでいる!? ひょん教!? 私がおまえの事務処理を手伝ってやっているのにカード遊びか!? 私はひょん教の秘書として製作委員会の委員会室である職員室で、本来ならばひょん教が行う教師としての雑務を生徒である私が行っていた。私の高校5日目が始まった。


「・・・。」

「あ、そっか。薄皮は覚醒しないとしゃべれないんだった。聞いた俺がバカだった。」


殺す! バカにするな! 私だって覚醒していなくたって・・・覚醒しなくたって・・・心の中で叫んでるもん・・・。言い返せない自分に腹が立つが悔しいがひょん教の言う通り私は何も話すことができなかった。でも・・・いつか・・・いつか自分の言葉で絶対にしゃべってみせる!


「これにしよう。華がある。渋谷塚高校の名物部。渋谷塚歌劇団部だ!」


そういうことね。私の高校の名前の由来を説明すると渋谷だと実際に高校があると困るので何か改名を悩んだ。アニメ化とドラマ化を悩むと華が必要である。そこで渋谷と歌劇団と部活を一つに足すと渋谷塚という地名が完成したらしい。さらにエンディングでダンスが流行っているので、本作は歌劇団部の演劇と歌と踊りでエンディングを飾ろうという魂胆だ。


「ちょうど俺のクラスに歌劇団部の娘役のトップスターがいる。おい、薄皮。友達になってこい。」


そんな都合よくいる訳ないでしょ? ええ!? と、と、友達!? ハーフさん一人と友達になるだけで悩み過ぎて32話も費やした私に第二友達を作れというの!? 無理!? 無理!? 無理!? 無理よ!? 私は職員室から追い出され教室に行くために廊下を歩きながら悩みだす。


「・・・。」


まったく無理難題ばかり!? 言っておくけどね! 私は毎日学園祭生活がしたい訳じゃないのよ! 最近のドラマやアニメみたいに行き過ぎた設定が多過ぎるのよ! 私の生活は私にとっては現実なんだから! 


「薄皮さん。おはよう。」

「お、お、おはよう。」


ハーフさん~。ハーフさんが私なんかに挨拶をしてくれた。わ~い~。私も挨拶をたどたどしいけど返せたし、私たちが友達なのは夢じゃないのね~。教室の私の席に着いた私の席の前のハーフさんと朝の挨拶をする。それだけで私は幸せになれる。


「ノート係よろしく。」

「・・・あ、あの。」

「ワタシニホンゴワカリマセン。」

「・・・。」

「薄皮さん。私たち友達よね。」

「は、はい。」


ノート書かせていただきます! ハーフさんはこういう人間だ。それでも友達なので私はハーフさんのノートを書くことに命の火を燃やすのだった。それにしても歌劇団部の佐藤さくらって誰よ!?


つづく。

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