第20話 20
私は人と話すのが苦手だ。
いつの頃からだろう。他人に自分の意見を言おうとすると・・・悩み込んでしまう。最初は当たり障りなく挨拶やうなずいたり協調性のある受け答えをしていた。しかし、それにも疲れて自分一人の世界にいることが多くなっていった。
「おまえの性能はピカ一だ。それは卒業文集を呼んでも分かる。あれだけの文章を書けるんだ。きっと全国の高校生の中でもトップクラスの実力だ。」
ピカ一、トップクラス、なんて良い響きだ。私に相応しい言葉だ。ひょん教は人を見る目があり、相手の心を読むことができる。おだてるのも上手なのかもしれん。ただ私の卒業文集を呼んで言われてもな・・・。
「おまえなら日本一の女子高生になれるかもしれんぞ!」
日本一の女子高生!? そうか! 周りに私みたいな聡明な人間がいないと思ったら、私と周りの生徒との実力が違い過ぎたということか。日本一か、私の世界征服の野望の手始めに全国の高校を、私にひれ伏させるのも悪くはないな。
「そのためには、薄皮。おまえが普通にしゃべれるようになればいいだけだ。」
いきなり拷問ですか!? 持ち上げて持ち上げて崖から谷に突き落とす気ですか!? 私が人と話すのが苦手なのを知ってるくせに、よく笑顔で平然と私を傷つけることが言えるな!? このマッドティーチャーめ!
「そんなに他人と話すことが怖いか?」
こ、怖い? 怖いだと? この私が? ふざけるな! 私は別に他人と会話することや自分の意見を言うことを怖がったりはしていない! ただ私の意見に冷やかしを入れたり、否定したり、バカにしてくる会話も通じない粗大ごみみたいな連中と話をしたくないだけだ!
「ピクリとも動かないでフリーズしてるぞ? おい? 大丈夫か? んん!? 薄皮!? 薄皮!?」
ダメだ・・・眠くなる・・・これが心理学でいうところの逃避現象か・・・。ひょん教・・・土足で人の心に触れ過ぎだ・・・私のトラウマに気安く入ってくるな!? ・・・悩んで乗り切ってやる・・・悩んで・・・悩んで・・・私は悩んで生き残って・・・きたんだ・・・。
「zzz。」
そのまま私は眠りについたらしい。救急車が呼ばれ学校は騒然としたらしい。今度目覚めた時は病院のベッドの上だった。私はただ眠っていただけ。それなのに私の世界は動いている。なぜ? なぜなの?
「・・・。」
目が覚めて初めて気づく。私は生きているんだと。そして、また悩み始める。どうして私は生きているのか? どうして息をしているのか? なぜ心臓は動いているのかと。人間の人生に答えは無い。きっと私はこの命が尽きるまで、一人で悩み続けるだろう・・・。
「お! 目覚めているな! 薄皮さん! これから催眠療法を行うよ!」
なんだ? この中途半端なテンションの女医さんは? 催眠療法って何? まさか私を改造人間にでもする気なの!? 入院するぐらいだから私はこれでも病人なんですけど。
つづく。
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