第19話 19

私の目標は世界征服。その第一歩を踏み出そうじゃないか。


「なんだ? 薄皮。モジモジして、トイレはあっちだぞ。」


違うわい! このセクハラ教師め! やっぱりひょん教は変態だ! こんな奴と、こんな教師と会話なんかしたくないのに、悩んでも、悩んでも、悩んでも自分の声を出さなければ前に進めないから聞きにきてやったのに!? ・・・聞くは恥、でも聞かぬは末代までの恥というからな・・・。


「あの製作委員会って、何をするんですか?」


久々にしゃべったー! いつ以来のセリフだろうか? 私の悪いクセで悩み過ぎると他人と会話をすることを忘れてしまう。たまに自分の声がどんな声だったかも忘れてしまう程だ。どうだ? すごいだろう。ワッハッハー!


「おまえ!? そんなことも知らないのか? 薄皮はダメだな。」


誰がダメだ!? ダメという人間がダメなんだ! そんなことも分からないでよく教師をやってられるな。ひょん教みたいなダメ教師ばかりだから日本の若者はダメになっていき、社会に役に立たない大人ばかりになってしまうんだ。


「仕方がない。教師である俺様が教えてやろう。」


はいはい、教えてください。もうひょん教の一言一言にムキになるのも疲れた。私は悩むために正確な情報が欲しいだけだ。面白ツッコミ係が欲しければ他を当たってくれ。ああ、悩みたくて体がウズウズする。これも思春期というやつか?


「よく弁論大会というのがあるだろう。あれは一方的にスピーチするだけで審査員が勝手に採点する。だから最初から優勝者の決まっている出来レースとよく言われてしまう。」


そうだな。弁論大会を見学に行っても、素晴らしいスピーチをしている学校よりも有名な学校の方が優勝するということが多い。審査員も前評判が高い所を優勝させておけば自分の責任は無いという腐った逃げ根性なのだろう。そんな大人に私はなりたくないな。


「しかし! 製作委員会は違う! 相手と討論、議論して、自分の主張と相手の主張を戦わせて、相手を完膚なきまでに叩き潰すという恐ろしい委員会なのだ!」


・・・どこが恐ろしいんやら。要するに悩んで、悩んで、悩んで相手を骨が残らないぐらい粉砕すればいいのだろう? そんなことは私には造作もないことだ。ワッハッハー! ・・・んん? でも、そんな製作委員会なら、どうして私が選ばれたんだ? 私は人と会話するのが病的に苦手なのに・・・。


「薄皮。おまえ今、どうして私が選ばれたんだろうと思っただろう?」


なにーーーーーーー!? ひょん教、おまえは人の心が読めるというのか!? まさか!? 人の心を読むことができるという読心術をマスターしているというのか!? ・・・どうやら作戦を悩み直す必要がありそうだ。私はひょん教のことを能天気なヤツだとしか知らない。きっと私に勝ったのも絶対にたまたまのまぐれ。そのために奥の手を繰り出してくるひょん教に驚かされてばかりだった。


つづく。

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