第18話 18
私の悩み事が世界を変える。
私の悩みは私にとっては大きなもので、他人の悩みは私にとっては他人事。できるだけ関わらないで悩み事を増やさずに何事も無く平和に暮らしたい。それが私のたった一つの望である。
「おい、薄皮。例の事件を、おまえはどう思う?」
愚問だな、ひょん教。世間の事件などに興味はない。私が興味があるのは私の崇高な悩み事だけだ。まして高校初日の悩み事を解決しただけで、私にとっての事件も私の悩み事だけだ。
「ん? なんだ薄皮? 事件のことを知らないのか? 新聞ぐらいは読んだほうがいいぞ。もう高校生なんだから。」
バカにするなー! 事件を解決した私は事件の真相を知っているから新聞を読む必要はないのだ。テレビやネットのニュースもだ。新聞を読んだ方がいいのは、おまえだ、ひょん教。
「なんでも例の動画はネットカフェから投稿されたらしく、利用者名簿の名前も住所も偽物だったらしい。」
当たり前だ。本名を書くバカがどこにいる? こっちは帽子とサングラスにマフラーを付けて店内カメラ対策もバッチリ! ちゃんと偽名で薄皮ヨモギと書いてやったぜ! 少しはひょん教も役に立つな。ワッハッハー!
「しかも犯人の偽名が面白いことに、おまえの名前と一緒だったという。」
そういえば私の家に警察から電話がかかってきたな。薄皮ヨモギさんのお宅ですか? と聞いてくるから、いいえ、薄(ススキ)です。そう言うと電話は切れた。大の大人が悩んでも薄皮ヨモギなんて名前の人間がほんとに存在するとは思わないのが普通だからな。
「まさか!? 動画をネットに登校したのはおまえか!? ・・・いや、さすがの薄皮でも、あそこまでやるまい・・・。」
甘いな。自分の生徒が何かをするはずがないと思うのは教師の悪い所だ。なぜ教師より生徒の方が優れていると悩まない。私はひょん教に負けた時から、ひょん教のことを普通の教師とは思っていない。もう私が油断することはない。悩んで、悩んで、悩んでひょん教の思考を解明し、私はひょん教の全ての行動に解決策を用意することが可能だからだ。
「ところで薄皮、製作委員会のメンバーは揃ったか?」
人の名前を安物みたいに何回も言いやがって。いつか改名し直してやる! 製作委員会? おお!? そういえばそんなものがあったな。そもそも製作委員会って何をやるんだ? メンバーって、高校二日目の私に期待し過ぎだろ?
「あ!? それと言い忘れていたが、練習試合が決まったからな。」
はあああああああ!? 部活じゃないんだぞ!? 委員会だろ!? 製作委員会とはいったい何をするんだ!? 私は何と戦うんだ!? あああああああ!? また悩み事ができてしまった!? あああああああ!? また今夜も眠れない!? 神よ! なぜ私に悩み事を与える!? 何か悪いことをしたというのですか!? せめてもう少し情報をくれないと、さすがの悩みニストの私でも悩みようがないわ。
つづく。
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