第16話 16
私は知っている。中高生というだけで犯罪を起こしても無罪になることを。なぜか? 人に聞く前に自分で悩みなさいよ。私なら悩んで、悩んで、悩み抜いて自分で答えを見つけるわよ! まあ、いいわ。今回は特別に教えてあげるわ。
「クソ!? 誰だ!? サツにチクった奴は!?」
「でも私のお父さん、警察署長。」
「私のお父さん教育委員会長。」
「私のお母さんPTA会長。警察なんか怖くないぜ! もみ消してやったぜ! ワッハッハー!」
誤解してない? いじめって、貧乏な子がお金持ちの子に嫉妬や僻みで荒れ狂って行うと。正しくは親に甘やかされて殴られたことも無い他人の痛みを分からないお金持ちの子がする方が多いことを。昔は、貧乏な子が暴れて黒幕は真面目で優秀な生徒会長でしたパターンが多かったらしいけど、現代は普通の子が普通に他人を傷つける時代。誰でも加害者になり、誰でも被害者になりえる。誰がこんな世界にしたのかしら? ほんとスマホ様様だわ。
「いいですか、先生諸君。まだ右も左も分かっていない若者の未来が関わっています。何事も無かったことにして下さい。もしも生徒に聞かれたら、知らないで押し通してください! いいですね!」
どうせ臨時の職員会議が開かれているだろう。責任を取りたくない大人の事情。正確に言うと不祥事が表沙汰になり学校の名誉が傷つくこと、加害者に教育委員会長とPTA会長の御令嬢が含まれていることがバレたら、定年退職後の校長の教育委員会への天下りの道が無くなることが主な理由だろう。ああ・・・悩むことも忘れて呆れてしまうは。不謹慎な表現だけど、被害者の女の子のことは誰も悩まないのね。大人って・・・。
「・・・。」
好奇心? 違うわ。確認しに見に行っただけ。もちろん被害者の女の子は教室にはいなかった。学校に登校していなかったのだ。当然でしょ。殴られ、お金を取られ、裸の画像を撮られ傷ついている。きっと人間不信になって、自宅で布団に包まってカーテンを閉め切って光の入らない世界で震えながら怯えている。もう不登校で高校中退は確実だ。それなのに加害者は笑って堂々と学校にいる。これからも誰か他人を傷つけるだろう。なぜか? それは今回許されたということは、カツアゲ、暴力、わいせつ行為をしても自分たちは特別だから許されると粗大ごみ3人組に歪んだ大人が教えたからだ。そして被害者と違い、粗大ごみ3人組は、たった三年過ぎれば高校卒業の資格を得る。それに引き換え被害者の女の子の心の傷は死ぬまで消えないだろう。
「ぽちっとな。」
私はそこら辺にいる普通の何の力も持っていない女子高生だ。目から破壊光線が出せる訳でもなく、核兵器を持っている訳でもない。それでもボタン一つで高校初日の悩み事を解決することができる。私の匿名性を守りながらボタンを押すだけという行為に勇気なんてものは要らなかった。
つづく。
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