第14話 14

悩むことは戦いだ。悩むことは生きることだ。なぜ人は悩む? それを知るために悩む。私は自分を無くさないために今日も悩み続ける。それでも悩んで、悩んで、悩み続けても高校一年生の私にはどうにもならないことがたくさんある。私は無力だと悩んでしまう。


「薄皮ヨモギ製作委員会の発足だ! 顧問は俺だ。」


はめられた。ひょん教の罠が二重にも三重にも張り巡らされていた。恐るべし、ひょん教の正規公務員への執念。私は見事に製作委員会の委員長にさせられてしまった。でも教師が生徒を騙していいのか? きっと良くないはずだ。いや、絶対に良くない。この状態は、アイドルになれるよと街でスカウトされて、男漬けにされて、気が付いたらキャバクラや風俗で働かされていて、スカウトの男がずっと付きまとい24時間監視され、家族とも友達とも疎遠にされ、助けを求めて逃げることができない状態に追い込まれた裸のお姉さんと同じではないだろうか?


「ちなみにメンバーは、まだ一人もいないので、適当にスカウトしてくれ。」


まだ誰もいないのかよ・・・メンバーも私を委員長にしたみたいに勧誘してくればいいだろう? ほんとに人任せだな。これだから悩まない奴は嫌いなんだ。ていうか、本当に私は製作委員会の委員長にされてしまったのか? そもそも製作委員会って何をするんだ? 内容は何も聞いてないぞ。よし、適当に委員会活動を済ませてしまえばいいんだ。


「まあ、これもおまえのリハビリとでも思って気楽にやってくれ。」


こいつ!? 私の秘密を知っているというのか!? ごく一部の人間しか知らないはず!? ひょん教はどこで知りやがったんだ!? 秘密を知られたからには生かしてはおれん。絶対に殺してやる!


「薄皮、何か質問はあるか? しゃべりたかったらしゃべっていいんだぞ?」


・・・なんだろう? この感覚は? しゃべっていいと言われると心が軽くなったような、心から温かいものが湧き出してくるような、今までに経験したことの無い不思議な感覚だ。この感覚はなんだ!? 私の知らない悩みがあるというのか!? ええ~い! 高校だの! ひょん教だの! 私を悩ませるのはやめろ!!! 頭が痛くなる!? 悩みのラビリンスから抜け出せなくなるじゃないか!?


「さようなら。」


私はひょん教に挨拶をして職員室を後にした。おお!? しゃべった!? 的なひょん教の表情が面白かった。ああ・・・疲れた・・・もう12時か、睡眠不足はお肌に悪いな。私の予定では、ほんとはお家に帰っていて温かい布団で眠っているはずなのに・・・。ああ・・・眠たい・・・悩み回路が朦朧としてくる・・・。今日は色々あったな・・・高校初日ぐらいは何事も無く平和に過ごせると思ったのに・・・。私は薄皮ヨモギになり、製作委員会の委員長にさせられてしまった。入学式の片付けを入学生がやるって設定はどうよ? 矛盾だらけじゃない? ほんと信じられない! ああ・・・早く眠りたいのに・・・今日中にしないといけないことを思い出してしまった。ああ・・・私の悩み事はなくならないな・・・。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る